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第71号:プロセス改善ストーリー:ある新米SEPGの1日(改善策策定編その2)

2010年02月25日

  • プロセス改善ストーリー:ある新米SEPGの1日(改善策策定編その2)

    12月のメルマガでお送りしたプロセス改善ストーリーの第2回です。前回に引き続き、プロセス改善策を検討する会議の様子を、会話形式で進めていきます。
    課題から改善策を導き出す流れの雰囲気を感じ取っていただければと思います。

    <前回のあらすじ>
    CMMIを使ったプロセス改善を進めることになった株式会社フジコソフト。突然、SEPGに任命された野比は、プロセス改善グループ配属初日からギャップ分析後のプロセス改善策検討の会議に参加することになった。野比にとっては右も左も分からない1日が終わった。

    <お話の登場人物>  ()は会話文中の省略形
    野比(野):プロセス改善グループのメンバ。先日グループに配属されたばかり。
    源 (源):プロセス改善グループのメンバ。野比の同期の女性。
    骨川(骨):プロセス改善グループのリーダー。
    土良(土):リードアプレイザ資格を持つ外部のコンサルタント。

    PPQAをどう実装するか

    改善策の検討会議の2回目が始まった。会議は、改善グループのメンバが出した改善案を外部のコンサルタントである土良がレビューする形で進んでいった。
    今日のテーマは『プロセスと成果物の品質保証(PPQA)』である。

    PPQAの改善案作成を担当した源が質問した。

    源「PPQAなんですが、具体的にどのように実施していくべきかまだ悩んでいます。ギャップ分析では、当社にはCMMIのPPQAにあたる活動がないという評価になりましたが、プロジェクト自身が行っているテストやレビューなどの検証の活動があります。ここにPPQAを組み込むことを考えているのですが、それは可能でしょうか? "客観的に評価する"ということがそれで確保されるのかが気になっています。PPQAと検証の活動の違いを含めて教えて頂けますか?」
      
    土「PPQAは、計画されたプロセスが実装されることを確実なものにする活動です。それに対して、検証は明記された要件が満たされることを確実なものにする活動です。PPQAと検証は評価する対象は同じかもしれませんが、評価の観点が異なります。
      
    PPQAは、源さんが気にされているように、評価の客観性が重要とされています。客観性が確保された評価方法は、レビュアの主観に頼らない基準を設けて、その基準と照らしてレビューすることが必要です。テストやレビューに組み込んでも構いませんが、計画されたプロセスを基準に照らして評価するという観点を忘れないようにしてください」
      
    源「ということは、レビューチェックリストでプロセスをチェックする項目を入れたりするとよさそうですね。プロセスで決められた活動が実施されているかのチェック項目や、作業成果物の守るべきルール、たとえば設計書の記述ルールやソースコードのコーディング規約に沿っているかをチェックする項目などが該当しそうですね」
     
    骨「それをプロジェクト自身がチェックするだけだとチェックが甘くならないかな。土良さん、PPQAではプロジェクト外の第3者が評価に入らなくてもよいのですか? 他社ではどのように実施しているものなのでしょうか?」
      
    土「CMMIモデルには客観性は基準の使用以外に『独立性』によって達成されるとあります。チェック対象となるプロセスや作業成果物とは立場的、または精神的に独立である人がチェックするという考え方です。必ずしも第3者が入る必要はありませんが、PPQAを行う専門の部署を設けたり、そのプロジェクトに属していない別のメンバがPPQAを行う組織が多いですね」

    骨「当社はプロジェクトの外部からレビューする専門の組織というのはまだありませんが、新たなレビューの専門部署を設けるのも難しそうです。我々改善グループがその役割を兼ねるのが良い気がするなあ」
      
    野「本気ですか、骨川さん。常時数十プロジェクトが動いているのに、我々3人が全プロジェクトを見るのはさすがにしんどくないですか?」
      
    源「役割を分けてみるのはどうかしら。まずはプロジェクトがチェックリストを使って自分たちのプロセスをチェックして、その結果を私たち改善グループが第3者の立場でレビューする、ということではいかがですか?」
      
    骨「おお、それなら出来そうな感じがするな」
      
    土「そうですね。まずは出来るところからやっていくという考え方でいいでしょう」

    改善活動も計画的に

    骨「ところで野比くん、今回は会議の前に各自が改善案を考えてくるのが宿題になっていたはずだけど、やってきたように見えなかったけどどうしたの?」

    野「じ、実は、改善グループに入る前にやっていた案件にトラブルがありまして、その障害対応に追われてたせいで、宿題を忘れてました・・」
      
    骨「障害対応は仕方ないと思うけど、宿題を忘れるのは感心しないな。そういう事態があったならリーダーの私にも事前に言っておいてもらわないと。廊下に立ってろ、って言いたいくらいだよ」
      
    野「は、はい、すみません」
      
    土「まあまあ、骨川さん。ただ、こういった改善活動は社内の活動であるがゆえに、優先順位が下がりがちになる傾向があります。通常のプロジェクトと同じように、計画を立てて各自が役割を守り進捗を管理していかないと、どんどん遅れていってしまいますからね。気をつけましょう。さて、今回はここまでにしましょう」

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    <野比のノビノビ日記 ~今日のまとめ~>
    はあ、今日は何も準備していかなかったから怒られちゃったな。次回からはちゃんとしないとな。それにくらべて、源さんはあんなにテキパキ答えられてすごいなあ。同期なのにあこがれちゃうよ。
     
    土良さんはどうしてあんなに何でも知ってるんだろう? 食パンにモデルの内容を写し取って食べたら覚えられる、って雑談で言ってたけどホントかな?
     
    さて、今日わかったのはこんな感じかな。
    ・PPQAは計画されたプロセスを基準に照らして客観的に評価する活動のこと。
    客観性を確保するためにチェックリストを用意して、第3者視点でチェックしていくのが大事。検証は要件が満たされているかを確認する活動で、PPQAとは観点が異なる。
     
    ・改善活動も、通常のプロジェクトのように計画を立てて各自が役割をしっかり理解した上で進めていこう。