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第198号:さようならCMMI V1.3, プロセス改善スキルを地域コミュニティの中で磨く

2020年09月25日

  • さようならCMMI V1.3

    CMMI V1.3が今月2020年9月30日でサンセットを迎えます。

    2010年のリリースから10年間、大変お世話になりました。
    今まで本当にありがとう。

    10月1日以降、公式セミナーやアプレイザルはCMMI V2.0のみになります。
    これからCMMIに取り組む方は、CMMI V2.0の導入をご検討ください。

    プロセス改善スキルを地域コミュニティの中で磨く

    このメルマガ読者には、組織のプロセス改善の推進に関わるSEPGの方も多いかと思いますが、皆さんはどのように自らのプロセス改善スキルを磨いていらっしゃいますか?

    勉強熱心なSEPGは、日々書籍やネットで情報を集めたり、セミナーや研究会に参加したりして、新たな知識を得ていることでしょう。

    しかし、情報や知識は、入手しただけではうまく使えません。実際に体験し、何度も実践を繰り返すことでようやくスキルとして定着していきます。自身の所属する組織の活動の中で実践できれば一番よいと思いますが、もっと活用の機会がほしいと思っている方もいらっしゃるかと思います。

    そこで、SEPG的な実践スキルを磨く体験の場として、地域の自治会や町内会、マンションの理事会などの地域コミュニティに参加するのはいかがでしょうか。

    私は、3年ほど前から自分が住んでいるマンションの理事会運営に携わっているのですが、自分が得てきたCMMIの知識やプロセス改善の技法を試す場にもなり、なかなか良い訓練になっています。

    いくつか例をご紹介します。

    会議の推進・合意形成スキル向上:ファシリテーション技法の活用

    プロセス改善活動では、推進する改善策について組織内外の関係者と様々な会議
    体にて議論を交わし、合意形成をしながら進めていく必要があります。

    ただ、うまく進めないと会議がグダグダになりがちです。議論が紛糾して意見が
    まとまらない、話題がそれる、特定の人しか話さない、時間内に終わらない、結
    論が不明確、結論が出ても納得いく合意形成がなされない、といった問題に陥っ
    た経験のある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

    理事会なども同様で、私のマンションでは、各理事役員が参加する毎月定例の理
    事会のほか、大規模修繕などの個別施策を扱う分科会(委員会)、年次開催の全住
    民向けの総会、不定期開催の臨時総会などの様々な会議体があります。

    地域のコミュニティは、目標を共有する人たちの集まりである企業活動と異なり、
    住民たちの価値観や考え方、年齢や人種などはバラバラで、同じ地域に住んでい
    ること以外の共通点が少なく、利害関係も薄いです。そのため、うまく進めない
    と、上述の問題に陥ることが多々あります。

    会議をうまく運営していくためには、会議ファシリテーション技法を取り入れると効果的です。

    理事会の役員就任の1年目、運がいいのか悪いのか、理事長に就任した私は、ファシリテーション技法を使って各会議をスムーズにするように心がけました。
    ・事前準備:
     会議の目的とアジェンダ、タイムスケジュール、テーマごとの完了基準、参加者の役割等の明確化、説明資料の準備等
    ・会議の実行:
     各テーマごとに意見の引き出し、具体化、共感、発散→収束、結論まとめ、時間のコントロール等
    ・合意形成:
     挙手による多数決のほか、CMMIアプレイザルでお馴染みのサムボーティング
     テクニックの活用等

    仕事とは違う場で、初めて会う人達ばかりの中での会議の実践を重ねることで、実務でのプロセス改善の会議でも活かせるファシリテーションスキルを磨くことができました。

    決定分析スキル向上:大規模修繕の工事業者選定で実践

    CMMIで重要な選定を行うプラクティス領域といえば『決定分析と解決(DAR)』がありますが、皆さんは使いこなせていますでしょうか。

    DARは組織によってはあまり使用頻度が高くない場合がありますが、実践しないとなかなか使いこなすのが難しい領域でもありますので、機会を見つけて実践し、スキルを磨いていく必要があります。

    理事会運営の中では、大きな金額が動く様々な決定がありますので、客観性や透明性を保つ意味でもDARを行う機会が多々ありました。

    特に、約12年サイクルで行われる大規模修繕工事に関しては、発注方式や実施時期、工事業者等の選定の機会がありましたので、何度かDARを実践してみました。

    例えば、工事業者の選定では、
    ・候補となった5つの業者を選択肢として、
    ・見積価格、工事方法、実施時期、体制、過去実績、プレゼン好感度、リスク、住民評価などの評価基準を用い、
    ・重み付けマトリクス表を作成して、修繕委員会の中で議論しながら選定を行いました。

    テーマにあった評価基準の出し方やマトリクス表の作成方法、関係者との議論の進め方などをいろいろと実践して体験することで、決定分析を行う際の"脳筋"のようなものが鍛えられた感があります。

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    以上です。仕事や家庭の都合でこういった地域コミュニティ活動に時間を割くのはなかなか難しい場合もあるかとは思いますが、ご紹介したように、実務のプロセス改善スキル向上に活かせる面は多々ありますので、一度体験してみるのもおすすめです。