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第232号:CMMI -SVCの話:サービス要求とサービス要件は何が違うのか

2023年07月25日

  • CMMI-SVCの話:サービス要求とサービス要件は何が違うのか

    突然ですがCMMI-SVCクイズです。

    あなたはITサービスのサービスデスクとして、自社が提供しているシステムの一次問合せ受付窓口を担当しているとします。ユーザからの以下の3つの申し出を「サービス要求」「サービス要件」「インシデント」に分類してみてください。

     A.マニュアルのこの部分の解釈が分からないので教えてほしい
     B.来週の研修は当初2日間で計画していたが1日に短縮してもらえないか
     C.システムの画面に変な表示が出てますがこれは正しい表示ですか

    答えはこの記事の最後を参照。
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    先日、CMMI-SVC概要コースを実施しました。CMMIをソフト開発だけでなくサービスの管理や改善に使ってみたい、ITILとの違いを知りたいといった声にお応えするため、今回CMMI-SVCの概要をお伝えするセミナーを初開催しました。参加いただいた皆様、ありがとうございました。

    さて、冒頭のクイズは当コース内の演習の一つとして用意しているものなのですが、サービス要求とサービス要件の違いはわかりますでしょうか?

    CMMI-SVCの対象プラクティス領域の一つであるサービス提供管理(SDM)に以下のプラクティスがあります。

    ・SDM 2.2 サービス合意に従って、サービス要求を受け取り処理する。

    ここにサービス要求という用語が登場します。

    日本語だと、要求も要件も同じように扱われることがありますので、同じもののように感じてしまうかもしれません。もしくは、開発のCMMI(CMMI-DEV)に慣れた方や要求工学に詳しい方は、要求と要件は異なるものとして扱うべきと考えて、サービス要求は要件になる前のニーズのようなものと考えられるかもしれません。

    CMMI V2.0モデルの用語集には、実はこの用語解説はありません。V1.3の用語集を見ると、以下のような説明があります。

    ・サービス要望(service request):一つ以上のサービス提供の具体的事例を要望するという、顧客または最終利用者からの意思伝達。これらの要望は、サービス合意を背景として行われる。

    ・サービス要件(service requirements):サービス提供およびサービスシステム開発に影響を与える要件の完全な集合

    元の英語は要求(要望)はrequest、要件はrequirementなので、異なるものだとわかります。サービス要求(service request)は、V1.3の頃は要求ではなく要望という訳が割り当てられていますが、意味は同じです。

    また、サービスマネジメントのスタンダードであるITILでは、サービス要求は以下のように説明されています。

    ・通常のサービス提供の一部として合意されたサービス活動を開始する、ユーザまたは権限を与えられたユーザ代理人からの要求。

    これらを踏まえると、サービス要求とは、サービス合意の元に何かを行ってほしいという依頼事項、と解釈するとよさそうです。

    例えばサービスデスクとして、ユーザーからの問合対応などを行うのが業務上の合意事項だとすれば、「○○について教えて欲しい」とか「パスワードを忘れたので再発行してほしい」といった、サービスデスクの範疇内で処理できるものはサービス要求になりますので、SDM 2.2にて処理します。

    サービス要件は、サービス合意の範囲を超えて、サービスの提供や開発に影響を与えるものが該当しますので、例えば開発した研修サービスの想定日数が2日間のところ、1日に短縮するような依頼は、提供や開発に影響を与える可能性がありますのでサービス要件の扱いとなり、CMMI上は要件の開発と管理(RDM)に受け渡され、サービス要件の開発、変更、移行処理が行われていきます。

    ちなみにインシデントとは、サービス提供に悪影響を及ぼす実際の事象または起り得る事象、とCMMIモデルでは説明されています。

    例えばサービスデスクが「想定していない変な表示が出ている」といった問合せを受け、サービスデスクが処理できそうにない場合、CMMIではインシデントの解決と予防(IRP)に受け渡され、対処されます。

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    CMMI-SVC概要コースは、上記のような解説を含め、サービスのCMMIの主要プラクティスの基礎や活用方法について、ITILと比較しながら学べるような内容になっています。第1回オープンコースが終わったばかりで次回開催時期は未定ですが、ご興味がある方は個別開催も可能ですので、弊社までお問い合わせください。

    また、概要よりももっと踏み込んで、自社のCMMI-SVCを実践的な改善に使っていきたいという方は、ISACA公式のコースであるBSEコース(BSE:サービス・エクセレンス構築)の次回開催が10月13日に決まりましたので、こちらも是非ご検討ください。
    https://www.daiwa-computer.co.jp/jp/consulting/seminar/bse

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    冒頭のクイズの答え:
     A.マニュアルのこの部分の解釈が分からないので教えてほしい
      →サービス要求
     B.来週の研修は当初2日間で計画していたが1日に短縮してもらえないか
      →サービス要件
     C.システムの画面に変な表示が出てますがこれは正しい表示ですか
      →インシデント