CMMIには、いろいろなところで「分析」という言葉が出てきますが、皆様はどんなふうに分析していますか?
データに基づいて分析されているでしょうか? CMMIには「測定と分析」というプロセス領域もありますので、いろいろ測定されていることでしょう。これらのデータは活用されていますか? Write Onlyのデータベースになってたりしないですよね。
「測定と分析」はレベル2のプロセス領域なので、実装している組織も多いと思いますが、これをちゃんとやっていないと、定量的な管理ができません。レベル4で苦労します。
荒っぽい言い方ですが、レベル3は、少々データがダーティであろうが、組織標準を作って、それを使ってれば達成できちゃうってこともあるかもしれません。
でもレベル4では定量的な管理が求められますので、逸脱するのが難しいくらい心の広いプロセス記述だったり、ゴミ箱のような測定リポジトリになっていたりすると、自分たちが改善だと思っていたものがそうではなかったことを露骨に数字が教えてくれます。
まずは、正しいデータを集めて、データに基づいて分析をしましょう。みなさんの組織ではどうでしょうか? データに基づいて分析しているプロジェクトやグループの比率を計ってみてもいいと思います。
では、データを使っているのなら、どんなグラフを描いていますか? グラフは目的に合っています? 円グラフやヒストグラム等を作って、一次元の解析だけを行っているのでしょうか? 散布図などを使って二次元の解析も行っているでしょうか?
一次元の解析だけという方は、ぜひ二次元の解析もやってください。分析力を上げていきましょう。「散布図なら知っている」という人も多いでしょう。でも知っているのと実際に使うのは別問題です。また分散分析や回帰分析はどうでしょう?
「うちはレベル3なのでそこまでやる必要なんてない」とか言わないでくださいよ。CMMIは、レベル5まで行って意味があるのですよ。いきなりすべてを実装するのは難しいので、少しずつ改善していけるように、どこから手をつけたら効率的に改善できるのかを示して段階的になっているのです。途中で挫けないでください。標準を作るのも定量的に管理し改善するためです。
というわけで、データを正しく収集し、有効に使って、分析力を上げていきましょう。きっといいことがありますよ。
第64号:分析力
2009年07月24日
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分析力
ブックレビュー
【書名】パーソナルソフトウェアプロセス入門
http://tinyurl.com/nwdm3c
【著者】Watts S. Humphrey
【出版社】共立出版
【発行】2001年05月25日
【ISBN】4320120132
【本の内容】
第1章 ソフトウェア技術者の仕事
第2章 時間管理
第3章 時間の追跡
第4章 期間計画と製品計画
第5章 製品計画
第6章 製品規模
第7章 時間の自己管理
第8章 コミットメントの管理
第9章 スケジュールの管理
第10章 プロジェクト計画
第11章 ソフトウェア開発プロセス
第12章 欠陥
第13章 欠陥の発見
第14章 コードレビューチェックリスト
第15章 欠陥の予測
第16章 欠陥除去の経済学
第17章 設計欠陥
第18章 製品品質
第19章 プロセス品質
第20章 品質に対する個人的コミットメント
【レビュー】
当社の一部の部署でパーソナルソフトウェアプロセス(PSP)を導入することにしました。そのときに使った教材のひとつがこれです。PSPガイドブックよりも薄いところがいいです。
SW-CMMレベル5よりもPSPのほうが出荷後に報告される欠陥密度が低いという話もありましたので、CMMIを利用して組織標準のプロセスを作り、品質保証でチェックしていくのもいいですが、その前に、プロセスを使う人々を鍛え上げる必要を感じました。
本書はPSPの入門書であり、PSPの基本を学べます。なので、PSPのすべてが載っているわけではありません。でも、規範のあるソフトウェアプロセスの重要性を理解するのには役立ちます。
よいパフォーマンスを出すためには、やはりひとりひとりが自律したエンジニアであることが必要だと思います。