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第63号:データ測定の重要性:しかし日本人は定量化するのが苦手?

2009年06月25日

  • データ測定の重要性:しかし日本人は定量化するのが苦手?

    CMMIモデルの中にはいくつかの重要なコンセプトがあると思います。例えば「実
    施する前に計画を立てる」とか「顧客のニーズに焦点を当てる」といったもので
    す。その中でもかなり重要視していると私が感じることは「測定データを使った
    管理」です。

    成熟度レベル毎の測定データの使われ方

    ○成熟度レベル2
    データを測定することは、成熟度レベル2から始まっています。その名も「測定と分析」というプロセス領域があることからも明らかです。このレベルでは、「何が知りたいから何を測定する」ということをはっきりさせて、その測定結果をどう分析し、どうやって報告するのかということを決めることが期待されています。これにより、プロジェクトや組織は基本的なデータの測定や分析をする能力を身に付けることができます。

    ○成熟度レベル3
    このレベルでは測定されたデータを組織で管理するための「測定リポジトリ」を期待されています。このためには、プロジェクトをまたいでも意味があるような尺度が必要となります。またデータの粒をそろえるためにプロセスも組織内で標準化することが重要となります。その結果プロジェクトは、見積もりなどにこのデータを利用することができます。

    ○成熟度レベル4
    このレベルでは、収集した履歴データを統計的に分析することにより、品質やプロセスのパフォーマンスの理解をより深めることが期待されています。例えば「当社の標準プロセスを実施すると、90枚の資料を1日レビューすると99%の確率で11~23個のバグが発見される」といった感じです。「平均15個」というイメージではないことに注意して下さい。平均が表しているのはあくまで平均であり、実際に次の結果がその値になる確率が高いとは言い切れません。
    ここからプロジェクトはより精度の高い予測が出来るし、意思決定もしやすくなります。

    ○成熟度レベル5
    このレベルになると、データを使ってプロセスを「最適化」していくことが重視されます。「レビュー時に新しいチェックリストを使うと19~32個のバグが発見できるようになった」という感じです。これにより組織やプロジェクトは、より確実にプロセス改善を進めていくことができます。

    とここまで書いて昔同じような事を書いた気がするなと思って調べたら2004年7月に出した第4号で、もっとざっくりとした話を書いていました。興味のある方は下記URLのバックナンバーからご参照下さい。
    http://www.daiwa-computer.co.jp/jp/consulting/mailmagazine/index.html

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    このように、CMMIでは成熟度レベルが低いうちから高くなるまでのキーとして測定データが一貫して利用することを期待しています。しかしこういった活動を自然にやっているケースというのは非常にまれなのではないかと感じます。進捗報告が「ちょっと遅れ気味」といった定性的な形で行なわれたり、実際データを測定していても、何に使われているわけでもなく、ただ存在しているだけであったりとか。

    その理由としてふと思い当たったのが、昔読んだ本に書いてあった話です。曰く、

    「日本人が生み出したスポーツで得点を取り合うものは無い」

    覚えている限りで書くとこんな感じでした。

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    例えば柔道や剣道の勝敗は、基本的に「一本」を取ったかどうかで決まります。
    この「一本」が分からない人にはかなり分からない考え方です。「キレイに決まった」ということなんでしょうが、どうなったらキレイなのかがよく分かりません。

    さらに時間切れで引き分けとなった場合は、判定で勝敗を決めます。例えば野球の日本シリーズを3勝3敗どうしで迎えた最終戦が9回まで決着がつかなかった時に審判と塁審がダイアモンドに集合して、自分の基準で紅白の旗を出して「白の方が多いから、阪神が優勝!!」とかで決まったらどう感じるでしょうか?
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    突っ込みどころが色々あるのは分かりますが、この考えに一理あるとすると私達は、そもそも何かを数字で表してはっきりさせるというのは昔から苦手なのかもしれません。だからこそ、CMMIモデルを利用することで、あえて意識してデータを利用することが必要なのでしょう。DNAに負けないようにがんばれ!!