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第58号:開発よりも調達なあなたにはCMMI-ACQ

2009年01月23日

  • 開発よりも調達なあなたにはCMMI-ACQ

    調達のためのCMMI(CMMI-ACQ)v1.2がリリースされて一年たちましたが、CMMI-ACQを利用しているという話は聞いたことがありません。でも組織によっては、開発のためのCMMI(CMMI-DEV)よりはCMMI-ACQ のほうが役立つんじゃないかと思うこともたまにあります。

    開発と保守を自分のところでやっているというよりも、主に協力会社がやっているところは、CMMI-DEV よりも CMMI-ACQの導入を検討してみてはいかがでしょうか?

    そこで今回は、CMMI-ACQ のことを知らない人も多いと思いますので、簡単に紹介したいと思います。このメルマガの読者なら CMMI-DEV のことはよく知っていると思いますので、CMMI-DEV と比較すると CMMI-ACQ は理解しやすいと思います。

    CMMI-DEV は成果物とサービスの開発と保守に焦点を当てていますが、CMMI-ACQは成果物とサービスの調達に焦点を当てています。どちらもプロセス領域は22個です。CMMI-ACQ のカテゴリとプロセス領域の関係は下記のとおりです。

    カテゴリ     │プロセス領域
    ─────────┼────────────────
    プロセス管理   │OID、OPD、OPF、OPP、OT
    プロジェクト管理 │IPM、PMC、PP、QPM、REQM、RSKM
    調達       │AM、ARD、ATM、AVAL、AVER、SSAD
    支援       │CAR、CM、DAR、MA、PPQA


    CMMI-ACQには、エンジニアリングのカテゴリがありません。代わりに調達のカテゴリがあります。

    プロセス管理と支援に属するプロセス領域は同じです。

    プロジェクト管理は少し違いがあります。CMMI-DEV には供給者合意管理(SAM)がありましたが、CMMI-ACQ には SAM がありません。その代わりといっては何ですが、要件管理(REQM)がプロジェクト管理に入っています。CMMI-DEV では、REQM はエンジニアリングでした。

    なので、プロセス管理、プロジェクト管理および支援に属する16のプロセス領域はお馴染みのものです。ただし、統合プロジェクト管理(IPM)、組織プロセス定義(OPD)、プロジェクトの監視と制御(PMC)、プロジェクト計画策定(PP)は固有プラクティスが追加されました。

    IPM にSP1.6が追加されました。そのため、既存のSP1.6はSP1.7になりました。
    SP1.6 Establish and maintain integrated teams.

    OPD にSP1.7が追加されました。
    SP1.7 Establish and maintain organizational rules and guidelines for
    the structure, formation, and operation of integrated teams.

    PMC にSP1.8が追加されました。
    SP1.8 Monitor transition to operation and support.

    PP にSP1.1が追加されました。そのためそれ以降のSG1のプラクティスの番号が変わりました。それとSP2.7が追加されました。既存のSP2.7はSP2.8になりました。
    SP1.1 Establish and maintain the acquisition strategy.
    SP2.7 Plan transition to operation and support.


    また、IPM や OPD となっているので勘のいい人は気づいたかもしれませんが、CMMI-ACQにはIPPDはありません。

    それでは調達カテゴリをみていきましょう。

    Agreement Management(AM)
     ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    AM は SAM とよく似ています。SAM を圧縮したような感じです。固有ゴールおよび固有プラクティスは下記のとおりです。

    SG 1 Satisfy Supplier Agreements
     SP 1.1 Execute the Supplier Agreement
     SP 1.2 Monitor Selected Supplier Processes
     SP 1.3 Accept the Acquired Product
     SP 1.4 Manage Supplier Invoices


    Acquisition Requirements Development(ARD)
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    ARD は、CMMI-DEV の 要件開発(RD)とよく似ています。調達要件の開発です。
    CMMI-DEV の RD は成熟度レベル3でしたが、ARD は成熟度レベル2です。


    Acquisition Validation(AVAL)
     ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    AVAL は、CMMI-DEV の妥当性確認(VAL)とよく似ています。簡単に言うと、VALの頭に「A」を付けただけです。調達した物の妥当性確認です。


    Acquisition Verification(AVER)
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    AVER は、CMMI-DEV の検証(VER)とよく似ています。簡単に言うと、これもVERの頭に「A」を付けただけです。調達者の作業成果物の検証です。


    Acquisition Technical Management(ATM)
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    ATM は、CMMI-DEV にはあまり似ているものはありません。固有ゴールおよび固有プラクティスは下記のとおりです。

    SG 1 Evaluate Technical Solutions
     SP 1.1 Select Technical Solutions for Analysis
     SP 1.2 Analyze Selected Technical Solutions
     SP 1.3 Conduct TechnicalReviews
    SG 2 Perform Interface Management
     SP 2.1 Select Interfaces to Manage
     SP 2.2 Manage Selected Interfaces


    Solicitation and Supplier Agreement Development(SSAD)
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    SSAD は、CMMI-DEV の SAM と少し似ています。固有ゴールおよび固有プラクティスは下記のとおりです。

    SG 1 Prepare for Solicitation and Supplier Agreement Development
     SP 1.1 Identify Potential Suppliers
     SP 1.2 Establish a Solicitation Package
     SP 1.3 Review the Solicitation Package
     SP 1.4 Distribute and Maintain the Solicitation Package
    SG 2 Select Suppliers
     SP 2.1 Evaluate Proposed Solutions
     SP 2.2 Establish Negotiation Plans
     SP 2.3 Select Suppliers
    SG 3 Establish Supplier Agreements
     SP 3.1 Establish an Understanding of the Agreement
     SP 3.2 Establish the Supplier Agreement


    いかがでしたでしょうか? 調達カテゴリのプロセス領域もCMMI-DEVに似ているものが多いでしょ。このようにCMMI-ACQ 独特のものは非常に少ないのです。

    CMMI-DEV を知っている人なら、CMMI-DEV との差を知ることで、CMMI-ACQは理解しやすくなると思います。CMMI-ACQ は、DMMI-DEV よりも薄いですが、それでも400ページを超えています。CMMI-DEV にないプロセス領域から読み始めていくとよいでしょう。

    だいたい月刊ブックレビュー

    【書名】ソフトウェアプロセス成熟度の改善
    http://tinyurl.com/ayfutr

    【著者】Watts S. Humphrey
    【出版社】日科技連出版社
    【発行】1991年9月23日
    【ISBN】4-8171-6033-0

    【本の内容】
    第I部 ソフトウェアプロセス成熟度
    第II部 反復可能プロセス
    第III部 定義されたプロセス
    第IV部 管理されたプロセス
    第V部 最適化プロセス

    【レビュー】
    少し古い本ですが、この本はいい本です。

    あの Watts S. Humphrey の著作です。CMMIを導入しようとしている人は読まなあかんでしょ。CMMIの意図するところがよくわかります。

    私もSW-CMMを会社に導入した頃によく読みました。TR-24やTR-25には書かれていないことを補ってくれました。

    入門コースを受けて、分かった気になった人も、いまいちピンとこなかった人にもお奨めします。モデルよりも詳しく具体的に例がいろいろと示されていますので、役に立つと思います。