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第57号:裁判員制度と正式評定:「客観的に評価するためには?」

2008年12月25日

  • 裁判員制度と正式評定:「客観的に評価するためには?」

    2009年5月21日から導入されるということで最近、裁判員制度がメディアで取上げられることが多くなってきました。自分もその立場になるかもしれないということで興味を持っている方も多いと思います。しかし裁判の存在は知っていてもその中で何が行なわれているのかを詳しく知らないので不安だと思うところもありますよね。私もそう思ったので色々と見ていると、CMMIの正式評定と似ている所が多いなと思いました。

    もちろん正式評定と犯罪を裁く裁判員制度とは本質的に同じものではありませんが「客観的に評価する」という点で似ている部分がありますので、この二つを見比べてみましょう。

    ※正式評定は、成熟度レベル判定に使用する「クラスA」についての説明です。

    評価するメンバ

    裁判員制度では、裁判員が全てを決めるわけではもちろんなく、専門知識を持った裁判官と裁判員とでチームを組みます。正式評定でも同様に主任評定者(リードアプレイザ)と評定者(アプレイザ)とでチームを組みます。このチームは最低でも4名いなければなりません。また多くの場合評定者には評定される組織の人が参加します。裁判員のように抽選で選ぶわけではありませんので、皆さんの
    組織で正式評定を実施する場合には、皆さん自身が選ばれる可能性があります。

    評定者になるためには、SEI認定のCMMI入門コースを修了していることが必須要件となっています。またそれだけではなく、評定でどのような活動をするのか、どんなルールなのかといったことを学ぶために、評定手法のトレーニングを受ける必要もあります。

    評価の根拠となる情報

    裁判においても正式評定においても、評価の根拠となるのは「証拠」です。証拠には大別して「物理的な証拠」と「証言」の二つがあることもどちらにも共通です。裁判では物理的な証拠が無くて本人の証言(自白)のみがあるだけでは有罪にできないらしいのですが、正式評定にも同じような考え方があります。

    例えばプロジェクトリーダが「レビューに関するデータを分析して、その結果から~という対応をした」と証言したとしても、その活動の証拠となる分析結果や対応の記録などが一切存在しなければ、そのプラクティスが十分実施されているという判断はできません。逆に記録があっても誰に聞いても「そんなの知らない」といった場合も同様に判断されます。

    「CMMIを使った改善をすると作成するドキュメントが増えるのでいやだ」という意見を聞くことがあります。そういう面も確かにあるのかもしれませんが、客観的に見てあるプラクティスが実装されているかどうかを判断するためには、やはり何らかの証拠が必要となります。完全に無駄なものを作る必要は無いと思いますが、品質管理を確実にするために必要な面もあるのだと理解して頂きたいところです。

    意思決定の方法

    裁判では、証拠を全て調べたら、事実を認定し、被告人が有罪か無罪か、有罪だとしたらどんな刑にするべきかを裁判官と一緒に議論し(評議)、決定する(評決)ことになります。評議を尽くしても意見の全員一致が得られなかった場合、評決は多数決により行われるそうです。

    正式評定はちょっと異なります。証拠を調べてから評議し評決するのは同じなのですが、全員一致が得られなかった場合でも多数決にはなりません。ではどうするのかというと、全員が合意できる落としどころを探して議論を続けます。その努力もむなしく定められた時間内に合意できなければ、「評価出来なかった」という結果になります。

    主任評定者が評価を決定するのだと思っている方も多いかもしれませんが、主任評定者と評定者の意見は同じ重みを持ちます。裁判員制度でも有罪か無罪か、有罪の場合の刑に関する裁判員の意見は、裁判官と同じ重みを持つそうです。

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    このメールマガジンを読んでいる皆様は、裁判員にも評定者にもなる可能性があります。どちらの場合でも証拠から事実を探り出すということをしなければなりません。逆に言えば皆様が正式評定で「プラクティスを実施している」と認めてもらおうと思えば、その証拠となる何かが必要であるということを理解して改善活動を進めていくことが重要だということが分かっていただけたのではないかと思います。

    だいたい月刊ブックレビュー

    【書名】Excelでここまでできる統計解析 -パレート図から重回帰分析まで-
    http://tinyurl.com/5wrb8s

    【著者】今里健一郎・森田 浩
    【出版社】日本規格協会
    【発行】2007年9月12日
    【ISBN】978-4-542-60106-2

    【本の内容】
    第1章 データのまとめ方と分布
    第2章 計量値の検定と推定
    第3章 計数値の検定と推定
    第4章 分散分析
    第5章 相関と回帰
    第6章 重回帰分析

    【レビュー】
    Excelで統計解析をやることはおすすめできませんが、やっている人も多いと思います。Excelでできるという手軽さがうけているのでしょう。

    本書には、Excelでパレート図をきれいに描く手法などが具体的に詳細に記述されています。

    統計解析の基本的な考え方を知るには、Excelの使い方が具体的に記してあるので、わかりやすいと思います。

    CMMIを利用して改善を進めていくと統計的管理は避けて通れません。しかし一般的に統計ツールは高価です。使いこなすのも大変です。初心者には敷居が高くて、なかなか手が出せません。

    本書を利用すれば、おそらく読者のPCにはExcelがインストールされていると思いますので、新たに投資することなく統計解析の気分が味わえます。