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第59号:CMMI Ver1.3の変更点

2009年02月25日

  • CMMI Ver1.3の変更点

    SEIでは、CMMIの次のバージョンであるVer1.3の準備が進められています。
    詳細はまだ未定ですが、リリース時期は2010年頃が見込まれているとのこと。

    2009年2月の現時点では、Ver1.3の変更要求の収集や、意見交換が行われている段階だそうで、そのうちの1つのセッションが、2月10日にWebinar(ウェビナー)上で行われました。私も参加してみましたので、今回はその内容をお伝えいたします。

    Webinarとは、Webサイト上で登録会員制のオンラインセミナーを実現するサービスのことで、昨年くらいからSEIでも定期的にセッションが提供されています。
    http://www.sei.cmu.edu/collaborating/spins/webinars.html

    PCのブラウザ上でリアルタイムにプレゼンの画面が表示され、スピーカで音声を聞く事ができます。参加者は時折出題されるアンケート項目に選択肢をクリックしてレスポンスを返す形で参加できます。選択した内容の集計結果が、即座にグラフで画面に表示されたりします。
    今回初めてこの形式のセッションに参加したのですが、なかなか便利で面白い仕組みですね。

    難点は、SEI開催のWebinarは、時差のせいで日本では真夜中での開催となる場合があることですね。今回は23:30から夜中の2:30で行われたので、眠い目をこすりながらの参加となりました。

    さて、今回のセッションは、CMMIモデルのマネージャ兼チーフアーキテクトのMike Konrad氏と、SCAMPIアプレイザルチームマネージャのRusty Young氏のプレゼンで行われました。

    タイトルは、「CMMI Version1.3 Product Suite: What may change」です。

    内容としては、Ver1.3でフォーカスする各トピックについて、メリットやデメリットを司会の2人が語り、時折、参加者に質問をなげかけるといった感じです。

    Ver1.3ではどんな変更が提案されているか、セッション内で紹介されていた主だった内容をトピック単位に以下にまとめます。

    1.高成熟度レベルのプラクティスの明確化

    ・CMMI利用者間で高成熟度レベルのプラクティスの共通理解を得るため、記述をより明確化する。
    【提案されている事項】
    ・用語の明確化、必要とされる/期待される/参照の要素の調整、注釈や説明を追加して典型的な方法を示す等
     
    ・CAR(原因分析と解決)プロセス領域は、あらゆる成熟度レベルで価値があるので、低い成熟度レベル用のCARを追加する。
    【提案されている事項】
    ・IPM(統合プロジェクト管理)の固有プラクティスに追加する等

    2.共通プラクティスの単純化

    ・共通プラクティスを単純化することにより、アプレイザルで収集する作業成果物を削減したり、プラクティスの解釈の誤りによる実装時の影響範囲を減らす。
    【提案されている事項】
    ・共通ゴール2の共通プラクティスをGP2.1、GP2.2、GP2.8の3つのみにする。
    理由:共通ゴール2は「管理されたプロセス」であり、GP2.2プロセスの計画とGP2.8プロセスの監視と制御で、プロセスのPDCAをまわすことが可能。GP2.2には、GP2.3~2.10に関する参照の記述をすでに含んでいる。GP2.10上位レベルの管理層のレビューはGP2.8に含められる。
    ・GP3.2の表現をシンプルにする。
    集める対象は、作業成果物、尺度、測定結果、および改善情報の4種類あるが、「情報」のみにする。
    ・能力レベル4、5の共通プラクティスを削除する。

    3.アプレイザルの効率化

    ・CMMIモデルの改善、およびSCAMPI手法を洗練することにより、アプレイザルの効率を向上させる。
    【提案されている事項】
    ・共通プラクティスの単純化、およびプラクティス記述の曖昧さの解決
    ・逆PIID(Practice Implemented Indicators Description)の使用
    ※各プラクティスにドキュメントをマッピングするのではなく、ドキュメントに関連するプラクティスをマッピングする。

    4.関連要素群(開発/調達/サービスのためのCMMI)をまたぐ強化

    ・CMMI-DEV、ACQ、SVCを1つに統合する。その際には、対象領域内のコンテンツの自然さ、関連要素群の間の共通性を考慮し、バランスをとる。
    【提案されている事項】
    ・16個のコアプロセス領域は、注釈と例だけで違いを表現するか、別のゴールとプラクティスで違いを表現する
    ・統合成果物チーム(Integrated Product Team)、自己管理チーム(Self-Directed Team)などのチームの考え方の導入

    5.その他の対応

    ・他の手法やモデルのガイダンスの追加
    【提案されている事項】
    ・アジャイルや、シックスシグマなどのガイドの追加
    ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

    CMMIの特徴であった共通プラクティスを減らすというのは、随分大胆な案だなぁと思います。実装時の負担が軽くなり、アプレイザルの際に収集するデータも減るので、歓迎する方もいるでしょう。一方、今まで馴染んできたプラクティスが一気になくなることに不安を感じた方もいることでしょう。
    「他の7GP(GP2.3~2.7、2.9、2.10)を削除することは損失か?」というセッション中の質問に対する参加者の回答は次のようなものでした。

    大きな損失だ!  24%
    マイナーな損失だ 37%
    むしろ利益    39%

    意見が結構割れました。それでも削除する事について利益またはマイナーな損失と考えている人が全体の7割以上いますので、もしかしたらこの案は採用されるかもしれません。

    ここにあげている内容はあくまで提案事項なので、まだ採用されると決まったものではありません。Ver1.3の変更要求は、3月2日でいったん締め切られるようですので、次期バージョンでここをどうにかして欲しいといったご意見のある方は変更要求を出してみてはいかがでしょうか?

    変更要求の提出窓口
    http://www.sei.cmu.edu/cmmi/models/change-requests.html

    だいたい月刊ブックレビュー

    【書名】ソフトウェア・テストの技法 第2版
    http://tinyurl.com/bhf2s3

    【著者】J.マイヤーズ、M.トーマス、T.バジェット、C.サンドラー
    【出版社】近代科学社
    【発行】2006年07月31日
    【ISBN】4764903296

    【本の内容】
    第1章 自己診断テスト
    第2章 プログラム・テストの心理学と経済学
    第3章 プログラムの検査、ウォークスルー、検討
    第4章 テスト・ケースの設計
    第5章 モジュール(単体)・テスト
    第6章 上級テスト
    第7章 デバッグ
    第8章 エクストリーム・テスト
    第9章 インターネット・アプリケーションのテスト

    【レビュー】
    先日、ソフトウェアテストシンポジウムに行ってきた。

    最後のパネルで、マイヤーズの三角形の話が出てきて、なんだか懐かしく思った

    パネルは、マイヤーズの三角形とは何なのかという説明なしにしばらく進んだ。

    会場にいた人たちはテストの専門家なので、知っているという前提なのであろう

    このメルマガの読者のなかにも知っている人も多いと思うが、念のために紹介しておく。マイヤーズの三角形とは、プログラムのテストの問題だ。

    今は第2版が出ているが、私の手元にあるのは初版なのでそこから引用する。

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    問題は、つぎに述べるプログラムのテストである。

    このプログラムは、カードから3つの整数を読む。この3つの値は、それぞれ三角形の3辺の長さをあらわすものとする。プログラムは、三角形が不等辺三角形・二等辺三角形・正三角形のうちのどれであるかをきめるメッセージを印字する。

    このプログラムをテストするのに十分と思われる一連のテスト・ケース(すなわち、十分なデータのセット)を紙に書き出してみよ。
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    さて、できたかな? 答えが気になった人は、本書を読むか知っている人に聞くとよい。

    言うまでもないが、本書は三角形だけの本ではない。テスト技法に関する古典的名著であるので、是非ともおさえておいて頂きたい。