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第39号:「~を計画する」とは?

2007年06月25日

  • 「~を計画する」とは?

    リードアプレイザのPat O'Tooleさんという方のメールマガジン「Do's and Don'ts of Process Improvement」に面白いテーマがあったので、皆さんにもご紹介します。

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    私は今、家族で夏休みの旅行を計画しています。妻はワシントンDCに行きたいと言っているし、私はグランドキャニオンに行きたいし、子供達はロンドンを希望しているしで、議論がヒートアップしています。

    ただ、旅行を「する」ことを計画することと、旅行を計画することとは違います。
    日程について何とか調整してみんなが忙しい夏のスケジュールを押さえたとしても、もっと具体的なことが決まらないと、飛行機やホテルやレンタカーを予約することも出来ません。またそこに着いてから行く具体的な場所や、絶対行くべきレストランも決められません。ちなみに私の妻はこういうことについてはプロ級です。彼女は、旅行を「する」ことを計画することと、旅行を計画することの違いを良く分かっています。

    評定(アプレイザル)を実施する時、私はピアレビューを「実施する」ことを計画するのと、ピアレビューを計画することとは同じだと思っていました。ですからピアレビューがWBSやスケジュールに表されていれば、その組織がピアレビューを計画していると判断すべきだと思っていました(これは検証のSG2のGP2.2のことです)。

    しかし旅行の話と同じく、ピアレビューを「実施する」ことの計画は、ピアレビューを計画することとは全く異なります。後者にはモデレータやレビューチームの選択、部屋の予約、レビューシートの印刷、レビュー対象の事前配布、そしてチームが充分な準備時間を取れるようにすること等が含まれます。皆さんは事前ミーティング、誰がレビューでの課題を取上げることを確実にするのか、そしてどうであれば更にレビューを実施するかを決定する基準等を考慮に入れる必要があります。

    この点をもう少し考えて、私は旅行の計画とピアレビューの計画はマクロとミクロ両方のレベルで実施されると理解しました。マクロレベルとは「旅行に行く計画をする」とか「ピアレビューを実施する」ということ、一方ミクロレベルは妻が愛してやまない(または誰もあえてやらないからやらざるを得ない)詳細な計画のことです。マクロレベルは大切ですが、ミクロレベルは不可欠です。

    評定(アプレイザル)の観点からいくと、ピアレビューの予定がスケジュール上にあることを「ピアレビューが計画された」ことのDirect Artifact(訳注1)とするべきではないでしょう。Direct Artifactは、指紋、残された毛髪、DNAといった法廷での証拠、何かが真実であることを証明するもののようなものです。
    Indirect Artifact(訳注2)はもっと状況証拠的なもの、仮説を立証する証拠ですが、確信を要求します。スケジュールされたピアレビューはこのカテゴリに入ります。ピアレビュー計画について言うと、Direct Artifactは「レビュー参加を要請する文書」になります。それは誰が招待されているか、彼らに与えられた役割、いつどこでミーティングが実施されるのか、ミーティングアジェンダ、どれだけのドキュメントがレビューされるのか等々が述べられています。これがピアレビューの計画です。

    決定分析と解決(DAR)も同じようなことです。私は多くの人達に、どのように組織が「DARを計画」できるかを尋ねられました。結局みなさんはプロジェクトのどのタイミングで大きな決断を下す必要があるのかが分かっていないのかもしれません。ピアレビューとは違い、全てのDARをマクロレベルで計画できないかもしれません。しかし、定められたDARについてはミクロレベルで計画することが出来るし、するべきでしょう。ちょうどピアレビューと同様に、DARの招待状が「DAR計画」を実際に具体化するもになるでしょう。

    そこで、良きコンサルタントである私は、旅行の行き先を決めるためのDARセッションをスケジュールしました。私達は決定するための基準を確立し合意し、各選択肢をその基準で評価し、最終的にベストな選択肢を選ぶでしょう。そして私の妻はワシントンDCに行く計画を立て始めるでしょう。。。

    訳注1 Direct Artifacts:
    評定時に使用するエビデンスの一種で、プラクティスを実施した結果出来上 がる直接的な作業成果物のこと。これが存在しないか不十分だとそのプラクティスが充分に実施されるとは見なされない。

    訳注2 Indirect Artifacts:
    評定時に使用するエビデンスの一種で、プラクティスを実施した結果副産物的に出来る作業成果物のこと。これとDirect Artifactの両方が揃うことによって、プラクティスが完全に実施されていると見なされる。

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    ちょっと長くなりましたが、よく出来たストーリなので全体を意訳でご紹介しました。全てのリードアプレイザが彼と同じ意見かどうかは分かりませんが、参考にはなると思います。

    彼は様々な事例をがどう考えるかというアンケートをリードアプレイザ全員からとり、集計して結果をフィードバックするという活動もしています。そこからも面白そうなものはご紹介していこうと思います。