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第38号:SEPG2007体験レポート in Austin

2007年05月25日

  • SEPG2007体験レポート in Austin

    皆様こんにちは、大久保です。メルマガの執筆は1年半ぶりです。

    2007年3月26日~29日、アメリカテキサス州オースティンにてSEPGカンファレンス2007が開催されました。

    SEPGは、CMMI開発元のSEIが主催するプロセス改善に関する世界最大級のカンファレンスです。今年は1600人くらいの人が参加したようで、日本からも多くの企業が参加されていました。現地でお会いした皆様、お世話になりました。

    残念ながら私はフル参加でなく後半2日間だけの参加でしたが、セッションの内容や私なりに感じたことなどを、いくつかご紹介してみたいと思います。

    会場について

    オースティンはアメリカ南部に位置する都市で、気温も日本より高く、現地はなかなか暑かったです。
    朝食や昼食は、カンファレンス会場内でとることができます。メキシコが近いので、メキシコ料理がよく目に付きました。過去のSEPGでは、あまり食事がおいしくない時もあったようですが、今回はそれなりにおいしく頂きました。
    余談ですが、メキシコ料理で有名なタコス。英語表記を見て初めて知ったのですが、タコスって複数形でTacosなので、1個だけだとsがつかずにTacoと呼ぶようです。(※編集者注:メキシコなのでスペイン語です)
     

    セッションの種類

    セッションは、難度と内容により以下のように分類されています。
     初級:Getting Started(改善初期に取り組む事項)
     中級:Specific(特定のプロセス領域に絞った内容)、Frame Work、Agile、Appraisals、Small Settings(小組織における手法・事例)等々
     上級:High Maturity、Cutting Edge Research
     
    今回の特徴として、複数のモデルを融合して改善を実施するテーマ( CMMI +ISO、CMMI+シックスシグマ、CMMI+TSP、CMMI+Agile等々)が多く見受けられました。また、CMMI-DEV ver1.2や、CMMI-SVC/ACQ のテーマのセッションも多く見受けられました。

    プレゼン形式のセッション以外には、チュートリアル、ポスターセッション、Exhibit showcase(展示や本の販売など)などがあります。

    SEIの本の販売所では、20%割引でSEIの本が買えたり、本の著者がブースを訪れて、購入者にはサインしてくれるというイベントもやっていました。
    あの有名なWatts Humphreyさんも来ていたので、思わず見学に行ってしまいました。(本は買わなかったのですが・・)


    ここからは個別のセッションの説明です。

    Process and Procedure Definition: A primer <Getting Started>  
    Michael Bander, SEI

    CMMIに取り組んでいる組織のSEPGの方の多くは、プロセスの定義方法で悩まれた経験をお持ちではないでしょうか? このセッションでは、プロセスや手順を定義するための基礎を説明していました。いくつか内容をご紹介します。
     
    ○プロセス(Process)と手順(Procedure)は異なるものである
    ・プロセスは「何」が行われるべきかを定義する(what)
    ・手順はタスクが「どのように」行われるかを定義する(how)
     
    ○プロセスは以下で構成される
    ・仕事が割り当てられる人々の役割や責任
    ・適切なツールや設備
    ・タスクをどのように行うか定義した手順や手法
    ※この説明でいくと、手順はプロセスに含まれることになります。
     
    ○以下の質問のいずれかに該当するならば、プロセスを定義すべきである
    ・そのプロセスはビジネスゴールにとって重要である
    ・どのようにその仕事を行うか、ある一人の人しか知らない
    ・多くの人がそのプロセスを実施するが、ある一つの方法だけが好まれている
     
    ○プロセスや手順に含まれる要素の例
    一意の識別子、名前、目的、オーナー、開始・終了基準、インプット、アウトプット、役割と活動、手法やツール、測定、レビューア、トレーニング、参照要素
     
    ○定義書の書き方の手法の例
    ・フローチャート
    ・クロスファンクショナルダイアグラム
    ・Integrated Definition for Functional Modeling(ITDF)
    ・Entry-Task-Verification/Validation-eXit(ETVX)
     
    ETVXは聞いたことがない人が多いかもしれません。こんな風に箱を並べて表現します。
      ┌─────────────────────┐
      │         Process         │
      ├───┬──────────────┬──┤
      │   │              │  │
      │Entry │      Task      │Exit│
      │   │              │  │
      │   ├──────────────┤  │
      │   │ Verification/Validation  │  │
      └───┴──────────────┴──┘
    視覚的に理解しやすそうですね。これならパワーポイント1枚でプロセスを表現できて便利そうに感じました。

    Effective PPQA on Small Projects in System Engineering Environment  <Small Setting>  
    Jeanne Balsam / Jean Swank, Georgia Tech Research Inst.

    Very Small Project(5人以下)へのPPQA実装例が説明されてました。

    QAの基盤作りとして以下を行う
    ・技術領域の知識があり、マネジメント経験のある人をQA担当にする
    ・プロジェクトの「Star Player」を活用する
    ・プロセスの改善を組織に受け入れさせる

    そしてQAの担当者は、
    ・プロジェクトと成果物のリスクを分析・低減する
    ・技術やマネジメント領域、新しいプロセスのメンタリングを行う
    など、PPQAがプロジェクトを友好的に補佐する役割を担う事を強調されていました。個人的には、PPQAがプロジェクト側の役に立つという意味で賛同したいやり方でしたが、正式評定はこれからの組織だそうなので、CMMIのPPQAを満たせているかどうかはまだ疑問があるところです。

    Dell Case - Intergrating Six Sigma and CMMI <High Maturity>  
    Renato Chaves Vasques, ISD Brazil  
    Andressa Covatti, Dell Inc.

    バランススコアカード、CMMI、シックスシグマを統合するというテーマのセッション。DMAICの手法にのっとり、Idle time(プロジェクトメンバの待ち時間)やRework(レビューやテスト後の後戻り作業時間)を定量的に測定・監視し、根本原因を導き出して改善をはかるという事例を説明していました。
    CMMIのLv4・5をシックスシグマで実装する分かりやすい事例だと思いました。

    An Overview of the CMMI for Service <Services>  
    Craig Hollenbach, Northrop Grumman Corp.

    CMMI-SVCの概要説明のセッションです。サービス業を事業としている企業が多く参加していました。CMMI-DEVとの違いをいろいろまとめてみます。
    ・「サービス」は実体がなく、貯蔵がきかず、要件やリソースが変化しやすい
    ・レベル1は現状、レベル2は基礎的なサービス管理、レベル3は組織で制度化され、デリバリーや先進的な管理を含んだ状態、レベル4は統計的なサービス品質の管理、レベル5は改善し続ける
    ・Process管理、Project管理、Service支援、Service Establishment and Deliveryという4つのプロセス区分にカテゴライズされた
    ・CMMI-SVCの構成は、22PA+オプションの3PA(基盤の16PA、共有の1PA(SAM)、SVC専用の5PA、SVCオプションの3PA 77%はCMMI-DEVの再利用
    ・REQMがEngineeringからProject管理に分類が変わり、1Goalと2Practiceが追加
    ・CMMI-SVCのリリース予定時期は、2007年12月

    17th Century Project Management <Getting Started>  
    Dan Sydor, EDS

    17世紀のプロジェクト管理を学んで何か役立つのか?とも感じるタイトルですが、当時のプロジェクトの悪い点を教訓として、21世紀のプロジェクト管理に生かそうという内容で、切り口がユニークで意外と面白かったです。
     
    17世紀のスウェーデン。30年にわたる北ヨーロッパにおける戦争中に、満を持して巨大な軍艦「Vasa」が建造されたが、処女航海で沈んでしまった。当時としては、最高の船大工がアサインされたはずだったのだが、なぜか?原因は、不運以上にプロジェクト管理がまずかった・・・。
     
    まずかった点をあげると、
    ・スポンサーの王様がきまぐれに要件変更を出し続けたそのレビューや承認が適切に行われていなかった
    ・過度のスケジュールプレッシャー
    ・変更管理がされてない
    ・貧弱なコミュニケーション、および文書化が不十分ゆえに知識共有がはかられていない
    ・不適切なテスト
    ・品質保証が実施されずプロジェクトを止める人がいなかった
    などでした。
     
    現代でも失敗プロジェクトにおいて良く聞く話ではないでしょうか?

    いかがでしたでしょうか?
    現地の雰囲気を少しでも感じて頂けたならば幸いです。

    SEPGでは、CMMI以外にもプロセス改善に関するテーマを幅広く扱っていますので、改善活動に携わる皆さんの活動のヒントがきっと見つかる事と思います。
    来年のSEPGは、フロリダ州のタンパで開催だそうです。20周年だそうなので、例年よりもハデに行われるかもしれませんね。
    興味がある方は参加を検討されてみてはいかがでしょうか?