今回もモデルの中身のバージョン間の違いについてご紹介していきます。
第34号:CMMI v1.2での変更点 モデル編-2
2007年01月25日
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CMMI v1.2での変更点 モデル編-2
組織プロセス重視(Organizational Process Focus)
V1.1と1.2で最も大きく変わったかもしれないのが、この組織プロセス重視プロセス領域です。といっても既存のプラクティスが変わったわけではありません。
固有ゴールが一つ増え、それにつれて固有プラクティスも追加になりました。
では、固有ゴールの違いを見てみましょう。
<V1.1>
SG1 :組織のプロセスに対する強み、弱み、および改善の機会が、定期的かつ必要に応じて特定されている。
SG2 :改善策が計画され実施され、組織プロセス資産が展開され、そしてプロセス関連の経験が組織プロセス資産に組み込まれている。
<V1.2>
SG1 :組織のプロセスに対する強み、弱み、および改善の機会が、定期的かつ必要に応じて特定されている。
SG2 :組織プロセスおよびプロセス資産の改善を取上げるプロセス処置が計画され実施されている。
SG3 :組織プロセス資産が組織横断的に展開され、そしてプロセス関連の経験が組織プロセス資産に組み込まれている。
まずSG1は変わっていません。SG2はV1.1の前半部分だけが残っている感じです。
残りの後半部分は、新しく追加されたSG3に移動した形になっています。つまりV1.2では、標準プロセスの記述や標準といったプロセス資産を作った後にそれらが「どう展開されているか」ということをちゃんと監視することを重視しているということです。
次に、固有プラクティスの違いを見てみましょう。
<V1.1>
SP1.1 :組織に対するプロセスのニーズおよび目標の記述を確立し維持する。
SP1.2 :組織の強みおよび弱みに対する理解を維持するため、定期的かつ必要に応じて組織のプロセスを評定する。
SP1.3 :組織のプロセスおよびプロセス資産に対する改善策を特定する。
SP2.1 :組織のプロセスおよびプロセス資産に対する改善策を取り上げるため、プロセス処置計画を確立し維持する。
SP2.2 :組織横断的にプロセス処置計画を履行する。
SP2.3 :組織プロセス資産を組織横断的に展開する。
SP2.4 :プロセスの計画策定および実施から導出されたプロセス関連の作業成果物、尺度、および改善情報を組織プロセス資産に組み込む。
<V1.2>
SP1.1 :組織に対するプロセスのニーズおよび目標の記述を確立し維持する。
SP1.2 :組織の強みおよび弱みに対する理解を維持するため、定期的かつ必要に応じて組織のプロセスを評定する。
SP1.3 :組織のプロセスおよびプロセス資産に対する改善策を特定する。
SP2.1 :組織のプロセスおよびプロセス資産に対する改善策を取り上げるため、プロセス処置計画を確立し維持する。
SP2.2 :プロセス処置計画を履行する。
SP3.1 :組織プロセス資産を組織横断的に展開する。
SP3.2 :組織の標準プロセスの集合を、プロジェクトの立上げ時に展開する。そして各プロジェクトの全期間を通じてその変更を適切に展開する。
SP3.3 :組織の標準プロセスの集合の実装およびプロセス資産の利用を、全てのプロジェクトについて監視する。
SP3.4 :プロセスの計画策定および実施から導出されたプロセス関連の作業成果物、尺度、および改善情報を組織プロセス資産に組み込む。
文字の多さに圧倒されてしまいそうですが、ちょっと待って下さい。良く見るとSP1.1から2.1は全く変わっていません(英語ではちょっと変更されていますが)。
SP2.2も「組織横断的に」が無くなっただけです。さらにSP2.3はSP3.1に、SP2.4はSP3.4に各々なりましたが中身は同じです。ということは、残ったSP3.2とSP3.3がポイントだということです。
SP3.2の「プロジェクトの立上げ:Project Startup」は、V1.2で新たに用語集に加えられた用語です。「相互に関連する資源の集合が、顧客または最終利用者のための一つ以上の成果物の開発または納入に向けられた時」とあります。例えば計画策定や要件の受領といった部分が上手くいくかどうかは、そのプロジェクトの成否に大きな影響を及ぼします。そこでこのプラクティスでは立ち上がろうとしているプロジェクトを特定し、それらがちゃんと標準プロセスを利用できるようにしていくことにフォーカスをあてています。また標準プロセスに変更があった場合も同様に、それを適用するべきプロジェクトを特定し利用していくことも含みます。
SP3.3は稼動しているプロジェクトが、組織で提供している標準プロセスやプロセス資産を利用しているかどうかを監視していきます。ここではやっているかいないかを見るだけではなく、その中での問題を把握することも期待されています。
この2つのSPの実装方法としては、改善を進める人がもっとプロジェクトに積極的に関わって状況を監視することや、品質保証活動の中でこれらの要素を吸収することが考えられます。稼動しているプロジェクトとグループ化したプロセスとのマトリクスを作って管理する、というのも考えられます。
プロセス改善を主導している人達はこれらを意識して、現場に対して「やさしさ」と「厳しさ」の両面でサポートしていくことが重要になるでしょう。
注:V1.2の内容は全て、公式翻訳とは異なる可能性があります。