CMMI Development V2.0が2018年3月28日にリリースするとの告知がCMMI研究所よりありました。
いよいよ来週には新しいCMMIモデルを見ることができます。楽しみに待ちましょう。
また、CMMI V2.0に関するFAQサイトが一般向けに公開されています。
V2.0の一般情報、V1.3との違い、必要なトレーニング、アプレイザルの準備、用語の変更点などがシンプルにまとめて紹介されていますので、気になる方は下記を参照してみてください。
https://cmmiinstitute.zendesk.com/hc/en-us/categories/115002163747-CMMI-V2-0
第168号:「プロジェクトの5割は失敗する」から改善のアイデアを考える
2018年03月23日
-
CMMI Development V2.0のリリース日が2018年3月28日に決定
「プロジェクトの5割は失敗する」から改善のアイデアを考える
日経コンピュータの2018年3月1日号に掲載されていたITプロジェクト実態調査の記事は皆さんご覧になりましたか?
記事によると、調査対象の約1700件のシステム開発プロジェクトのうち、成功するのは52.8%とのことで、約半数のプロジェクトは失敗するという、なかなかインパクトのある結果となっていました。
今回の調査では、スケジュール、コスト、満足度の3つの評価軸を用い、3条件のすべてを満たすものを成功と定義しており、個々の軸ではそれぞれ7割程度は達成しているものの、3条件すべてを達成できてたのは5割程度にとどまったようです。
これだけ各企業にプロジェクトマネジメントやプロセス改善が広まり、開発がしやすい環境が整ってきているのにも関わらず、いまだに5割も失敗するのは、その分、プロジェクトの短期化や低コスト化、技術の進歩による開発の高度化などが進み、ますますプロジェクトを成功させるのは難しくなってきているのかなと、あらためて感じました。
とはいえ失敗が多いということは、その改善の機会も多く存在している、とも言えます。
当メルマガの読者の方々は、ふだん何らかの改善活動に関与する機会をお持ちの方も多いかと思いますので、身の回りの活動を活性化させるきっかけとして、この記事を活用されてはいかがでしょうか。私もいくつかアイデアを考えてみましたので、ご紹介します。プロセス改善開始の動機づけに
「ウチの組織は特に問題なんて起きてないんだからプロセス改善なんていらないよ」という声をたまに聞きます。
プロセス改善は組織内で起こっている問題や課題をきっかけに開始されることが多いと思いますので、たしかに何も問題がないと、開始する動機に乏しいです。
組織の改善活動全体をリードしていく立場の人からすると、こういう活動を始める意識の低い人にどのように火を付けたら良いか、悩ましく感じてることが多いようです。
そんな人にこの記事を紹介し、「世の中のプロジェクトの5割は失敗する。今はうまくいってても、いつ失敗しないとも限らない。QCDや満足度すべて大丈夫か。
大丈夫なら、より成熟した組織を目指して成功率を向上させる改善を行っていきませんか?」といった感じでハッパをかけます。
これは「恐怖アピール」という相手の恐怖感情や危機意識に訴えかける説得技法の一つですが、その材料にこの調査結果は使えると思います。リスク管理の重要性を伝えるきっかけとして
記事中の「成否を左右するプロジェクトの取り組みランキング」によると、最も成功に寄与する取り組みは「プロジェクトが予定通りに進捗しない場合の対策などを事前に用意」、すなわちリスクの事前対策だそうです。
実際、調査対象プロジェクトの中でも、リスク事前対策を行っているのは5割程度にとどまっているとのこと。
CMMIにも『リスク管理(RSKM)』のプロセス領域がありますので、導入している組織では何らかのリスク管理を行っているはずですが、うまく実施できてないケースも散見されます。例えば、アプレイザルなどでリスク管理の実施状況をお聞きすると、リスクの特定が適切に出来ていなかったり、リスクの事前対策が立てられていなかったりすることが、リスク管理を重要視していないプロジェクトでよく見られます。
やはりここでも、「リスク管理をしっかり行わないと失敗の可能性が高まる」と関係者にリスク管理の重要性を説いて、意識付けしていくのにこの調査結果が役立つのではないかと思います。プロセス品質保証の実施対象選定基準の参考に
「CMMIの『プロセスと成果物の品質保証(PPQA)』をもとに、組織内にプロセス品質保証の仕組みを導入してチェック活動を始めたが、プロジェクト数が多く、担当者も不足しているので、より効果の高いプロジェクトに対象を絞りたい。対象案件選定の基準として使えるものはないか」という質問をいただくことがあります。
例えば、プロジェクトの規模や難易度、体制、リスク度合いなどが選定基準のよくある例として考えられると思いますが、プロセス品質保証を「プロジェクトの成功に貢献するためのチェック活動」と捉えるなら、この調査結果でスケジュール、コスト、満足度が未達成となった原因に着目すると、成功に貢献する可能性の高い基準が見えてきそうです。
調査結果によると、各評価軸の未達成の原因1~3位は以下となっていました。
・スケジュール遅延:仕様変更が相次いだ、見積りの甘さ、想定外の問題発生
・コスト超過 :追加の開発作業発生、追加の設計作業発生、見積りの甘さ
・不満足 :要件定義が不十分、企画が不十分、テストや移行が不十分
全体的には、上流工程で問題があった場合に、仕様変更や想定外の問題が発生し、遅延やコスト超過、不満足を引き起こす傾向があるようです。
なのでプロジェクトを失敗させないためには、
・企画や要件定義が曖昧であり、見積りに不確かな要素があり、仕様変更や追加開発、想定外の問題が発生しそうなリスクがある
・企画や要件定義を適切に行えるメンバの関与が不足している
などに当てはまるプロジェクトはプロセス品質保証を実施し、成功の確率を高められるようにしてはいかがでしょうか。