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第78号:プロセス改善ストーリー:ある新米SEPGの1日(改善計画を作る)

2010年09月24日

  • プロセス改善ストーリー:ある新米SEPGの1日(改善計画を作る)

    プロセス改善ストーリーの第4回です。今回もいつものように、改善活動で悩むポイントなどを、初心者向け解説本でよく見かける会話形式の文章で解説していきます。

    <前回までのあらすじ>
    舞台は中堅ソフトウェアベンダの株式会社フジコソフト。新たに改善グループに配属されSEPGとして活動していくことになった野比は、同グループの骨川、源、そしてリードアプレイザの資格を持つ外部のコンサルタントである土良とともにCMMIをベースにしたプロセス改善活動を進めていくことになった。
     ※過去のお話の詳細と登場人物紹介はバックナンバーを参照下さい↓
    http://www.daiwa-computer.co.jp/jp/consulting/mailmagazine/index.html

    さて、本日はプロセス改善計画について検討しているようです。

    プロセス改善計画とプロセス対応計画

    土「ここまで改善活動を進めてきましたが、プロセス改善計画をちゃんと作成していませんでしたので、そろそろ作成しましょう」

    野「あのう、土良さん、すみません、プロセス改善計画とは何でしょうか?これまでの活動で、課題一覧にギャップ分析の弱みに対する改善策を特定して、そのアクションプランとして、担当者やスケジュールを決めてきましたが、それとは違うものですか?」

    土「たしかにそのアクションプランも必要ですが、それだけだとプロセス改善計画としては不足です。プロセス改善計画とは、改善の目標や、活動全体のスコープやスケジュール、誰がどんな役割をしていくのかの責任や体制など、改善活動全体を計画したものです。それがないと、活動を通して何を達成したいか、現在どこまで進んでいるべきなのかといったことが分かりませんので、活動を見える化するためにも必要です」

    野「なるほど。これはCMMIの何かのプラクティスに該当するのでしょうか?」

    土「ええ、プロセス改善計画は、組織プロセス重視(OPF)のGP2.2『組織プロセス重視プロセスの計画』に該当します。課題一覧で整理されているアクションプランは別のプラクティスで、OPF SP2.1の『プロセス対応計画』に該当します。
      
    OPFは成熟度レベル3に含まれるプロセス領域です。御社はレベル2を目標に活動を進められていますが、その場合でもSEPGが管理していく基盤としてプロセス改善計画は作成しましょう」

    プロセス改善計画には何を書くか

    野「土良さん、プロセス改善計画にはどんなことを記述すべきでしょうか?また何かいい秘密道具・・・じゃなくてサンプルはないですか?」

    土「そうですねえ、野比さん。では・・」

    と言って土良は、自分のノートPC内のあるファイルをプロジェクタに映した。

    土「プロセス改善計画のサンプルです。例えばこんな感じです」

    そこには、プロセスニーズと目標、WBS、スケジュール、進捗管理計画、体制、責任・権限、構成管理計画、データ管理計画、トレーニング計画、リスク管理計画といった項目が書かれていた。

    野「なるほど。こういった項目を書くのですね。なんとなく、プロジェクトの計画と記述する要素は似てますね」

    土「改善活動も、目標とスコープを決めて実施していくならば、1つのプロジェクトと言えますからね。誰がいつ何をどのように行って何を達成するか、という切り口で計画していく点では一緒ですよ」

    改善の目標設定の注意点

    野「骨川さん、改善計画の『プロセスニーズと目標』には、私たちの場合は何を書くべきでしょうか?」

    骨「そりゃあ野比くん、決まってるじゃないか。目標は『CMMIレベル2の取得』だよ」

    源「え? CMMIのレベルを目標にしていいのかしら?それは良くないと聞いたことがあります」

    土「そうですね、改善の目標として『CMMIのレベル達成』というのを設定しがちなのですが、CMMIに取り組むのはあくまで手段であって、レベル達成は真の目的ではないはずです。達成したいことはもっと別のことですよね。
    このCMMI活動を始めるきっかけとなったことは何ですか?何を、より良くしたいのですか?」

    骨「活動のきっかけと、良くしたいことですか・・・。そもそもこの改善活動を始めるきっかけとなったのは、昨年の業績不振です。受注が減ったのは不景気のせいもありますが、社内で問題プロジェクトが勃発して、手戻りが増えてコストはかさみ、さらに火消しに要員を投入しているから、新規案件も受注できない状態が続きました。品質もコストも問題ですが、何より、自分達がどのように仕事をすべきかのプロセスがはっきりしてないのが問題、という声が多かったですね」

    野「ということは、組織のプロセスを定義することが目標・・?」

    骨「いや、ちょっと違うな。ただ、プロセスが出来れば良いってわけでもないし・・。CMMIはその参考として使いたいわけなんだよ」

    源「では、こういうことかしら?『CMMIのレベル達成をする過程で、社内のプロセスをより良いものにして、失敗プロジェクトを減らすこと』」

    骨「うん、そして、『顧客の信頼を得て、受注を増やすこと』。それだ! それが目標だよ」

    土「なんとか目標が見えたようですね。では、目標はプロセス改善計画にきちんと明記しておきましょう。そうすることで、いつでもそこに立ち返ることができます。
    それから大事なことですが、改善計画は目標を含めて、この活動のスポンサーから承認を得て下さい。トップのコミットメントを獲得して活動を支援してもらうことが活動の推進力になります」

    骨「わかりました」

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    <野比のノビノビ日記 ~今日のまとめ~>
    今日の改善計画の話はためになったなー。なぜこのプロセス改善をやってるのかがよく分かったし。でも、改善計画って本当は、活動を始める前に作らないといけないんじゃないかな。タイムマシンで昔に戻れればなあ・・。

    さて、今日の話をまとめよう。
    ・プロセス改善計画は、SEPGが改善活動全体の管理基盤として使用するために作成する計画。プロセス対応計画、改善策ごとの管理基盤として作成するアクションプラン。
    ・プロセス改善計画には、改善活動の目標やスコープ、全体のスケジュールなどを計画する。計画は、スポンサーからのコミットメントを獲得すること。
    ・CMMIのレベル達成は目標達成のための手段であり、真の改善の目標は、活動を通してより良くしたいと思っていること。