みなさんはエンジニアリングの改善活動に取り組むにあたってどのような情報源を利用されているでしょうか?書籍、セミナー、インターネット等様々な選択肢がありますが、その中から今回はエンジニアリングの改善活動に携わる方なら一度はご覧になった事がある(はず)、SEIのホームページ(http://sei.cmu.edu/)をご紹介したいと思います。
SEI(Software Engineering Institute)とは、CMM,CMMIを開発した組織です。米国国防総省とカーネギー・メロン大学の協同で設立されました。さすが本家ということもありCMM,CMMI等に関する情報は豊富です。
全体の内容としては、概ね以下のようになっています。
1)SEIの説明
2)モデル(CMMI,P-CMM等)の説明
3)SEIが提供しているサービス(セミナー等)やイベントの説明
4)SEIが発行しているレポート刊行物の掲載・検索
ただその情報量のため、どこから読み進めていけば良いのか戸惑う方も多いのではないでしょうか。英語を母国語としない我々にとっては読むだけでも一苦労だと思います。
そこで今回はその中の一つのページとして、SEIR(http://seir.sei.cmu.edu/)をご紹介したいと思います。
SEIRとは、「Software Engineering Information Repository」のことで、SEIの他のページが改善のためのモデル・方法論の説明といった理論的な部分が多いのに比べ、SEIRはエンジニアリングの改善活動の教訓、成果、経験、データなどより実践的な情報が収められた図書館のようになっています。これらの情報はエンジニアリングの改善活動を実施・実装している組織から提供された情報で構成されています。ここがSEIRの特徴です。
掲載されている資料も、プレゼンテーション資料などグラフや図解された資料がたくさんあるので、他のSEIのページよりも理解しやすいでしょう。
モデルでは「何」をすれば良いかは規定されていますが、「どのように」すれば良いかについては具体的に規定されていません。「やるべきことはわかったけれど、どうやってそれを実現すればいいのだろう?」皆さんが一番悩まれる点ではないでしょうか?
SEIRに掲載されている情報の中に同じような経験をした組織の情報が含まれているかもしれません。その中に実装のヒントが隠されているかもしれませんね。
もちろん欲しい情報が見つからない時はみなさんで試行錯誤して実装するしかないですが・・・
またここではSEIRに登録しているメンバに質問することも出来ます。世界中にいる同じ様にエンジニアリングの改善活動に携わっている人々の貴重なアドバイスを得ることができるかもしれません。
また逆にみなさん自身の経験・知識を提供できる場合もあるでしょう。
SEIRの利用には会員登録が必要ですが、費用は一切かかりません。また登録前にSEIRのデモを見ることも出来ますのでどんな情報・資料が得られるのかイメージできると思います。
掲載されている資料はすべて英語ですが、みなさんの役に立つ資料がきっとどこかに埋もれていることでしょう。一度のぞいてみてはいかがでしょうか?
第2号:SEIホームページの歩き方,なぜレベル達成を目標としてはいけないのか
2004年05月25日
-
01SEIホームページの歩き方
02なぜレベル達成を目標としてはいけないのか
SEPG2004で「プロセス改善でやってよいことといけないこと」というチュートリアルがありました。そのチュートリアルの本筋に関わる/関わらないは別にして私の思ったことを書きます。
このチュートリアルでは、32個のやってよいことといけないことがあげられていて、そのうちの1つに、上級管理層はレベル達成を目標としてはいけないというのがありました。これは、このチュートリアルに限ったことではなく、いろい
ろな場所で聞きます。―――――――――――――――――――――――――――――――
本当に達成しようとしていることは、何ですか?
- ビジネス上の責務は何か?
- 顧客はどのように製品を評価しているのか?
- 潜在的な顧客は、なぜ競争相手の製品を買い続けるのか?
どちらがよいでしょう?
- レベル2を達成したが、ビジネス上の目的を達成していない。
- ビジネス上の目的を達成したが、レベル2を達成していない。
さて、本当の目標は何なのでしょうか?
―――――――――――――――――――――――――――――――そのチュートリアルでは以上のように説明されていました。
多くの上級管理層にとっては、これは考えるまでもないことだと思います。
どっちが大事か、そんなことはわかっていると思うでしょう。
上級管理層でなくってもわかります。
しかし、一方でいつまでにレベル3を達成したいとかいう話もよく聞きます。
というよりもCMMに関心のある上級管理層からは、2年間でレベル3を目指すとか、いつまでにレベルいくつだとかそういう話しか聞いたことがありません。CMMには関心はあるがレベルはこだわらないという上級管理層はいるのでしょうか?
ビジネス上の目的が本当の目的だとを分かった上で、レベルに興味があるのです。
CMMがレベルという概念を含み、発注先選定の基準になりうるのであれば、レベルは上級管理層にとっては無視できないと思います。CMMに取り組むからには、レベルという概念は非常に魅力的です。上級管理層としては、レベルも達成し、ビジネス上の目的も達成したいのです。
「経営者はレベルを目標として扱ってはいけないそうですよ」と言って、納得してくれる上級管理層はいるのでしょうか。
「レベルを目標とすると、ソフトウェアプロジェクトとSPIプロジェクトが衝突しますよ」と言っても、「現場と摩擦を起こさないようにうまくやれ」と言われちゃいます。説得力がないです。
上級管理層がレベルに関心を持つことは仕方がないように思うのです。このことに対して、それはいけないというのは、ひどい話です。レベルを目的とせずに、CMMの取り組みにお金を出す上級管理層がいるのでしょうか。このことを避けて通らずに、もっと向かい合うべきだと思うのです。上級管理層はレベルに関心を持つのは仕方がないこととしてCMMをうまく活用することはできないのでしょうか。