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第148号:人を動かすアプローチ:改善活動に関係者をうまく巻き込んでいくには

2016年07月25日

  • 人を動かすアプローチ:改善活動に関係者をうまく巻き込んでいくには

    皆さんはお住まいの地域の町内会や自治会、マンションの管理組合などに所属されたことはありますか?

    私は住んでいるマンションの自治会に昨年から参加することになりまして、近隣地域のお祭りやスポーツイベントの参加準備、近所の公園掃除などの段取りなどに関わるようになったのですが、なかなか大変なことが多いです。

    自治会は会社組織と違い、参加者同士で目的や価値観が共有されにくく、基本は無償の活動であるという側面があります。
    それゆえ、やるべきイベントの数が多い割に手伝ってくれる人が少なかったり、責任感のある人が何年も役員を続けざるをえなかったりしています。

    先月から新年度になり、年度初めの定例会の開催案内文書を作成して、新たに自治会員に選ばれたメンバに参加を呼びかけました。
    しかし、なんの返事もなく欠席する人が半数以上おり、今年度も苦労しそうな予感がしています。

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    皆さんの組織におけるプロセス改善の活動においても、似たような状況が発生することがよくあるのではないでしょうか。

    例えば、改善活動への参加を呼びかけても協力してもらえなかったり、活動状況を確認する会議に招集しても別の仕事が優先されて集まりが悪かったり、SEPGが良かれと思って改定した標準プロセスも、開発の現場の人たちに理解が得られず使ってもらえなかったり、といったようなことです。

    改善活動に関わる人たちに協力的に動いてもらうようにするにはどうしたらよいでしょうか?

    最近読んだ本の中でヒントになりそうなことが書かれていたのでご紹介します。

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    「問題解決ファシリテーター」という本によると、人を動かすための働きかけ方には、「権力」「交換」「共鳴」の3種類のアプローチがあるそうです。

    ・権力 :権威、圧力
    ・交換 :対価、見返り
    ・共鳴 :論理(理由付け→理解、IQ)、感情(動機づけ→共感、EQ)

    「権力」は、権威や圧力によるアプローチ。
    上司が部下に命令して動いてもらうのが該当します。
    プロセス改善活動を前に進めるには、やはりある程度の強制力はあった方が良いので、トップや上司から働きかけてもらうのが効果を発揮するかと思います。

    「交換」は、対価や見返りによるアプローチ。金銭や褒章といった利害を取引することで期待される行動を促します。
    例えば、改善活動に貢献した部門や個人に対して、大勢の前で表彰を行なったり、特別ボーナスを与えたりといったことです。

    権力と交換はビジネスの世界ではよく用いられる方法ではあるものの、行動が自主的なものになりにくく、達成感が得られにくいという問題もあるようです。

    そこで、「共鳴」が重要になります。「共鳴」には、大きく「論理」と「感情」によるアプローチがあります。

    「論理」は、活動の目的や行動内容、なぜそれを行わなければいけないかを論理的に説明し、関係者の理解と納得感を得ていきます。IQ(知能指数)的なアプローチとも言えます。

    改善活動においては、例えばなぜその改善を行わないといけないのか、なぜその標準プロセスを使わないといけないのかといった理由や目的、そしてそれを使うとどのような効果があるかを説明し、利用者にメリットをしっかり理解してもらうことが重要かと思います。

    「感情」は、相手が論理的に納得しても、すんなり動いてもらえるとは限らないので、お互いに相手の立場に立って考え、自分のため、相手のため、組織のために行うんだという動機付けを行い、心の共感を得ていきます。EQ(心の知能指数)的なアプローチとも言えます。

    改善活動においては、例えば新しい標準プロセスを使ってもらう際には、使用するにあたって困っていることをSEPGが解決してあげるとか、出来そうな部分から適用してもらうといった妥協点を探るとか、互いに「これならできそうだ」と思えるところを見つけるのがポイントになるかと思います。

    共鳴によるアプローチをとることで、動いて欲しい相手の理解と納得が獲得できれば、権力や対価だけに頼ることなく、自発的な行動を起こしてもらう確率を高めることが期待できそうです。

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    さて、冒頭の自治会の件をこれらのアプローチの観点で見てみると、参加の強制力が少ない、対価や見返りが少ない、参加への目的説明が不十分、感情へも訴えかけられてないと、どうやら権力も交換も共鳴もできてなさそうです。

    私がこの自治会に参加しているのは、プロセス改善の知識を活かしてこの問題点を変えることができると面白そうだということと、この経験は仕事に活かせそうだなという見返りへの期待が動機になってます。
    幸か不幸か、改善のしがいがたくさんある組織ですので、責任を押し付けられ過ぎない程度に今年度も頑張っていきたいと思います。

    皆さんも、権力、交換、共鳴によるアプローチを駆使し、協力を促したい人たちにはたらきかけて、自組織の改善活動をより活性化させていきましょう。

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    参考文献
    【書名】問題解決ファシリテーター
    【著者】掘 公俊
    【出版社】東洋経済新報社
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