プロセス改善の活動の一つに、組織の標準プロセスの確立や保守というものがあります。
読者の皆さんの組織でも、全社または部署内等、様々なレベルで標準プロセスの確立や保守の活動、すなわち、標準プロセスの作成や、利用、見直しといった活動が行われているかと思いますが、私はここから「石の猫」の話をよく連想します。
「石の猫」は、ビジネス本などでもよく引用される寓話なのでご存知の方もいらっしゃるかと思います。以下のような話です。
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とある教会で、ある神父が猫を飼っていました。
神父が祭壇の前でお祈りするときに猫がイタズラをしてくるため、お祈り中は猫をヒモで祭壇の脚につなげるようにしていました。
この神父が亡くなり、2代目の神父はその猫を世話して、同じようにお祈り中は祭壇の脚にヒモでつないでいました。
3代目の神父も猫を飼い始め、2代目神父にならって、お祈り中に猫を祭壇の脚につないでいました。
4代目の神父は面倒くさがり屋で、生きた猫ではなく、石の猫を作って祭壇の脚の横に置くようにしました。
5代目の神父は、床に置かれている石の猫を邪魔だと思い、祭壇の上に置きました。
6代目以降の神父たちは、常に石の猫に向かってお祈りするようになり、いつの間にかこの教会では石の猫が祭壇上の神聖な存在になりました。
しかし、誰もその経緯を知りません。
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この話から読み取れることの一つは、「昔からのやり方や習慣という理由だけで、必要のないことを続けていないか」ということです。
仕事をしていく上で、単に昔からやっているからとか、やるのが当たり前だからとかの理由で行っていることが、実はそのルールが作成された当初の目的からズレていたり、現状に合っていないムダな作業になっていることがあります。
改善活動の視点で見ると、例えば数年前にCMMIレベル○を目指して改善チームが作られ、そのチームメンバが作成した標準プロセスが組織内に展開されているが、そのチームは既に解散し、場合によってはそのメンバも全員退職してしまい、新しく改善チームを担当することになったメンバには、標準プロセスに込められた狙いや背景がわからなくなっている、といった場合があてはまります。
標準の使用者が、ちゃんと意味や必要性を理解して実施しているならば、それは標準プロセスとしての存在意義があります。
しかし、「よく分からないけど標準に書いてあるから」とか、「面倒だけど昔からやることになっているから」といった理由で実施している場合は、ムダな作業を含む非効率な標準になっているかもしれません。
また、標準プロセスが数年間メンテナンスされていない場合も、現状に合わない内容になっている可能性があります。
日本は3月が決算月の企業が約7割あるそうなので、ちょうど年度末を迎えるこの時期に、来年度の目標や改善活動の計画を練っている読者もいることでしょう。
しばらく標準プロセスをメンテしていないとか、改善チームの体制が変わったという組織の方は、自社の標準プロセスに「石の猫」がいないか見直す計画を立てることを検討してみてはいかがでしょうか。
第132号:組織の標準プロセスに「石の猫」はいないか
2015年03月25日
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組織の標準プロセスに「石の猫」はいないか