もう10年以上前のことであるが、ISO の審査員がいくつかの指摘事項と次のメッセージを残していった。
「原因追及が真の原因まで追及されずに、手直しレベル、修正レベルの処置で終了している物もありました。何故、何故、何故を5回繰り返し、真の原因を追求し是正処置に結び付けていく仕組みを考える必要が有ると考えます」
真の原因! なんて魅力的な言葉! 品質管理責任者もISO 事務局も大いに納得した。やはり不適合の再発を防止するためには、表面的でなく真の原因を特定し除去する必要があると。
それからは、不適合に対する是正処置の計画を立てるときには、誰もが、なぜ、なぜ、なぜと5回繰り返した。ISO 審査の指摘事項、内部監査の指摘事項、納品後の障害など、とにかくなぜを5回。
しかし、なぜを繰り返すと、ほとんどの不適合がたどり着いたのは、「スキルが足りなかった」とか「知らなかった」とか「チェックリストになかった」とか「手順がなかった」とかになった。それに対する是正処置は、トレーニングするとか、チェックリストに追加するとか、手順を作るとかで、あまり効果がなかった。
なぜを繰り返すことは非常にシンプルであるが、真の原因にたどり着くのは簡単ではない。上述のように「なぜなぜ分析」はすぐに形骸化した。なぜを5回繰り返せばバラ色の世界が待っているわけではない。
真の原因にたどり着けない。効果的な是正処置ができていない。こういった組織は少なくない。そんな方々へお勧めの1冊を紹介する。
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【書名】なぜなぜ分析10則―真の論理力を鍛える
http://tinyurl.com/7w3n2b6
【著者】小倉 仁志
【出版社】日科技連出版社
【発行】2009年03月29日
【ISBN-10】4817193026
【ISBN-13】978-4817193025
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「なぜなぜ分析」のねらいどころは真の原因を導き出すことではなく、再発防止策を導き出すことである。この本には、下記のように「なぜなぜ分析」をするときの10のルールがまとめられている。
1.「事象」や「なぜ」は、ワンカット表現にする
2.出だしの「なぜ1」は、発生部位・形態に着目し、発生原則(条件)をもとに表現する
3.逆に読み返しても、順序良く論理がつながるように「なぜ」を展開する
4.並列に挙げた「なぜ」がすべて発生しなかったら、前の「なぜ」は発生しないかをチェックする
5.分析のねらいを踏まえた「なぜ」を展開する
6.誰もが同じイメージできる「なぜ」を表現する
7.形容詞を使う場合は、比較の対象を明確にする
8.個人的な話(臨床心理面)には「なぜ」で踏み込まない
9.再発防止策を見いだせるところまで「なぜ」を繰り返す
10.現場・現物で、「なぜ」を検証する
漠然と「なぜ?」と考えていてはいけないのだ。さらに上記の10則だけでなく、「なぜなぜ分析」を行う前に確認すべき5つのポイントもこの本に載っている。こちらもお勧めなので、「なぜなぜ分析」をやったことない人も、形骸化を感じている人も是非トライしてほしい。
第94号:なぜなぜ分析
2012年01月25日
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なぜなぜ分析