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第93号:プロセス改善ストーリー:ある新米SEPGの1日(改善事例を学ぶ)

2011年12月25日

  • プロセス改善ストーリー:ある新米SEPGの1日(改善事例を学ぶ)

    久々のプロセス改善ストーリー、今回は第7回です。CMMIを使ったプロセス改善活動で悩むポイントなどを、初心者向け解説本でよく見かける会話形式の文章で解説していきます。

    <登場人物>  ()は会話文中の省略形
    野比(野):改善グループのメンバ。まだまだ新米SEPG。
    源 (源):改善グループのメンバ。グループの紅一点。勉強熱心。
    土良(土):CMMIコンサルタント。

    今回の改善グループの会議では、プロセス改善の手法や事例を学ぶ方法について話し合っているようです。

    プロセス改善の手法や事例を学ぶには

    土「野比さん、最近はCMMIやプロセス改善業務には慣れましたか?」

    野「それが土良さん、まだまだ分からないことだらけで悩んでます。グループの活動を通して、少しはCMMIの言わんとしていることは分かってきたつもりですが、用語の意味が分からなかったり、プラクティスの良い実装方法がイメージ出来なかったりして、勉強不足だなあと感じてます。
      
    でも自力で調べようと思っても、何から手をつけて良いか分からないんです。源さんはそんな悩みない?」
      
    源「私は分からないことがあれば、まずはネット上から情報を探すかな。今はネット上で概要レベルの情報はかなり収集できるし、何より無料だし。例えば"ピアレビュー"とググってみると・・・ほら、493万件もヒットした。
      
    そこから深堀りする時は、書籍や文献を読んだり、ちょっとお金がかかるけど、専門のセミナーを受けに行ったりする感じかな」

    野「源さんはエライなあ。僕なんてあんまり本を読まないよ」

    土「それは感心しませんね。プロセス改善の"プロ"として活動する以上は、常に研鑽に励む姿勢が必要ですよ。プロセス改善推進者には、現場を指導出来るだけのソフトウェアエンジニアリングやプロセス改善に関する幅広い知識が求められますからね」
      
    野「す、すみません、プロ意識がちょっと足りなかったかもしれません・・」

    土「他の機会としては、プロセス改善に関する研究成果や事例を発表するカンファレンスや、ワーキンググループなどのコミュニティに参加するのも良いと思います。他社のプロセス改善の成功事例を聞いたり、業界の動向を把握できたりしますし、同業の人たちと意見交換できたりするので、悩みを解消するヒントが得られるのではないでしょうか」

    野「なるほどカンファレンスですか。早速参加を検討してみます!」

    カンファレンスに参加する

    野比は2011年10月に静岡県浜松市で開催された日本SPIコンソーシアム主催のソフトウェアプロセス改善カンファレンス(SPI Japan)に参加した。

    次の改善会議でSPI Japanのことが話題にあがった。

    土「野比さん、先日のSPI Japanはどうでしたか?」

    野「はい、すごくいい勉強になりました! CMMIについて参考になる話もあったのですが、多くのセッションで、”如何にして現場と強調して改善活動を進め、効果を体感するか”ということをテーマにしているのが印象に残りました。やはり現場主導で改善を進めるのが重要なのだと再認識しました。
      
    また、意見交換会では、他社の方々と交流を持つことができて、悩みを共有出来たのも良かったです。
      
    個人的には、システムクリエイツの清水氏のプロセス改善に関する基調講演にあった、
      
    ・品質のための改善は作業が増える傾向にある。合理的なプロセスのためには生産性を考慮しないといけない。
    ・プロセスを"定義"するという呼び方は、プロセスの固定につながりやすい。変化する顧客の要求を実現するための合理的なプロセスをプロジェクト自身が"設計する"という考え方が必要。
    ・"サーカスの象の鎖"のように、プロセスは変えられないと思って自らを縛っていないか。もっとうまく行くように、プロセスを柔軟に考える。
      
    といったお話に共感しました」
      
    土「いい刺激になったみたいですね。今後の活動に活かしていきましょう」

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    <あとがき>
    野比が語っているSPI Japan2011に私も先日参加してきました。感想は野比に代弁してもらったとおりでして、おかげ様で今回もたくさんの刺激とヒントを得ることが出来ました。スタッフの方々や貴重な事例やアイディアを発表頂いた方々に感謝の意を表します。ありがとうございました。


    さて、清水氏の講演の中で紹介されていた"サーカスの象の鎖"の話が興味深かったので補足します。心理学関連のブログでよく引用されていますが、出所はスペイン語圏で有名になった以下の本のようです。
    「寓話セラピー 目からウロコの51話」
    http://www.merkmal.biz/sample-guwa.html

    サーカスの象は、小さい頃から鎖でつながれていて、初めは鎖からなんとか逃れようとするが、まだ小さいので鎖は切れず、そのうち諦めてしまう。

    そして象は大きくなって鎖を簡単に切れるパワーを身につけたはずだが、決して逃げようとしない。なぜなら、小さい頃に経験した「鎖は切れない」という固定観念が植えつけられているから、だそうです。

    プロセス改善をする時も、「過去にうまくいかなかった」とか「どうせうまくいかないはず」という思い込みが邪魔をすると、前に進まなくなります。そんな時は、自らを縛っている鎖がないか柔軟に考えて、それに縛られることなく、とにかく一歩踏み出してみる、という考え方が重要なのかもしれませんね。


    SPI Japan2011の講演のスライドは、以下で公開されているようですので、興味のある方はご覧になってみて下さい。
    http://www.jaspic.org/modules/event/index.php?content_id=20