2011年3月のメルマガにて、SCAMPI AアプレイザルV1.3の手法の変更点として、プロジェクトのサンプリングルールの紹介がありました。
http://www.daiwa-computer.co.jp/jp/consulting/mailmagazine/mail_20110325.html
アプレイザルの準備に携わられる方にとっては、プロジェクトの選出方法以外に、各プロジェクトでどのくらいのプロセス領域を見ないといけないかといったことも気になる事でしょう。というわけで、今回は、そんな人達向けにV1.3のデータカバレッジルールをご紹介します。
V1.3では、組織内に存在するベーシックユニット(Basic Unit)、およびサポート機能(Support Function)からデータを集めます。V1.2にあったフォーカスプロジェクト、ノンフォーカスプロジェクトという考え方はなくなりました。
データは、V1.2の時は、DA、IA、AFの3種類ありましたが、V1.3ではDA、IAの区別がなくなり、単にアーティファクト(Artifact)とアファメーション(Affirmation)の2種類になりました。
※DA(Direct Artifact):プラクティス実施の直接的成果物。ドキュメント等。IA(Indirect Artifact):プラクティス実施の間接的成果物。AF(Affirmation):アファメーション。インタビューでの口頭の証言等。
どのくらいのデータを収集しないといけないかは、プロセス領域、ベーシックユニット、サポート機能ごとにカバレッジルールが定められました。
V1.3のアプレイザルでは、それらのカバレッジルールを踏まえつつ、データをどのように集めるかの「データ収集戦略」を定めて、データ収集を行っていく考え方になりました。
では、それぞれのカバレッジルールを紹介していきましょう。
第86号:アプレイザル手法V1.3の変更点 データカバレッジルールについて
2011年05月25日
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アプレイザル手法V1.3の変更点 データカバレッジルールについて
【PAルール】プロセス領域のカバレッジルール
1.プロセス領域はすべてのプラクティスを対象にする
※V1.2の時と同様、プラクティスの除外は出来ません。
2.プロセス領域には、データ提供元として以下のいずれかを割り当てる
(a) 組織内で多くのプロセス領域をカバーするベーシックユニット
例:システム開発プロジェクト
(b) 他の組織での作業をカバーするサポート機能
1.組織全体に提供されるサポート機能
例:コーポレートレベルのトレーニング機能
2.サブグループ固有のサポート機能
例:部門レベルの構成管理や品質保証機能
3.ハイブリッドなサポート機能
例:コーポレートおよびローカルレベルのEPG(改善グループ)
(c) いくつかのベーシックユニットを束ねてプロセス領域を実装する
例外的な機能
例:特定プロジェクトにおけるPMO機能
同一のシステム開発で共有される検証や妥当性確認の機能
※プロセス領域の実装方法は組織によって様々ですので、それらを考慮してデータ提供元のベーシックユニットやサポート機能を割り当てます。通常のシステム開発プロジェクトであれば、プロセス管理以外のプロセス領域を実装していることが多いでしょう。この場合は、(a)が該当します。(b)-2のように、部門内で統一した構成管理チームや品質保証グループがいれば、構成管理(CM)や品質保証(PPQA)はここに割り当てられます。(b)-1や(b)-3は、プロセス管理系の組織トレーニング(OT)や組織プロセス重視(OPF)等が該当しそうです。【BUルール】ベーシックユニットのカバレッジルール
1.各サブグループ内の1つ以上のベーシックユニットについては、実装されるすべてのプロセス領域のアーティファクトとアファメーションの"両方"を集めること
2.各サブグループ内でサンプリングされたベーシックユニットのうち少なくとも50%は、実装される1つ以上のプロセス領域のアーティファクトとアファメーションの"両方"を集めること
3.各サブグループ内でサンプリングされたすべてのベーシックユニットについて、実装される1つ以上のプロセス領域のアーティファクトかアファメーションの"どちらか"を集めること
※BUルール1では、最低1つのベーシックユニットは広く深く見る事を、BUルール2ではサブグループの半分のベーシックユニットが参加する条件を、BUルール3ではサブグループ全体の最少参加条件を定めています。
※BUルール1の注意点として、仮に"Not Yet"(まだその段階に来ていない)と評価されるプラクティスがある場合、サブグループ内の別のベーシックユニットを選ばないといけないことになりました。もちろん、他に該当するベーシックユニットがない場合は不要ですが。【SFルール】サポート機能のカバレッジルール
1.サポート機能により実施される作業に関連するすべてのプロセス領域について、アーティファクトとアファメーションの両方を集めること
2.サポート機能により提供されるアーティファクトとアファメーションは、各サブグループのサンプリングされた1つ以上のベーシックユニットについて作業を実施したことを示さなければならない
3.組織単位内に複数のサポート機能が存在する場合、サポート機能のすべてのインスタンス(実例)が評定スコープに含まれなければならない
※SFルール2は、サンプリング対象のベーシックユニットと無関係のデータだけではダメということです。
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より詳しく知りたい方は、アプレイザル手法V1.3のpdfが以下のURLで公開されていますので参考にして下さい。
http://www.sei.cmu.edu/library/abstracts/reports/11hb001.cfm