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第66号:成熟度レベル3への一つのヒント:それだけじゃないPMO

2009年09月25日

  • 成熟度レベル3への一つのヒント:それだけじゃないPMO

    最近私が関わった、プロセス改善を長期的に実施し続けている組織には共通の特徴がありました。それは「PMOが組織化されている」ということです。
    PMOとはプロジェクトマネジメントオフィス(Project Management Office)の略で、定義は色々ありますが、ざっくり言えばプロジェクトの管理を支援する組織です。

    PMOがあることのメリットとして思いつくものには下記があります。

    1.プロジェクトを複数の目で見ることができる。

    そのプロジェクトのプロジェクトマネージャだけが管理をしていると、その人のスキルの低さが破滅的な状況を引き起こすリスクがあります。他の角度から客観的に見られる人がいると、問題を早期に発見できる可能性が高まります。

    2.組織としてのプロジェクト管理のスキルが向上する。

    PMOが扱うプロジェクトは多種多様なものになります。また同時に多くのプロジェクトを見ることになります。そこからどんなプロジェクトが危険なのか、どんな対策を打てばどんな結果が得られるのか、どんなリスクを考慮しておくべきなのか、といったノウハウを得ることができます。

    3.プロジェクト網羅的に見ることで最適化がはかれる。

    多数のプロジェクトを並行的に見ることにより、人的資源の配分や作業成果物の流用などといった最適化が可能になります。

    4.個人のスキル育成に利用できる。

    PMOを一度作ったらメンバはずっとそのままでないといけないわけではありません。参画するメンバをローテーションすることにより、多くの人が様々なプロジェクトを擬似的に体験できるので、その後の活動に役立てることができます。

    CMMIのモデルの観点から見ればどうでしょう?

    多くの組織においては同時に複数のプロジェクトが進行しています。成熟度レベル2ではそれらのプロジェクトが組織方針に従って活動することが必要です。ですから細かいやり方は方針に従ってさえいれば特に問題はありません。その活動については、
    ・プロジェクト計画のレビュー(プロジェクト計画策定)
    ・プロセス遵守状況の評価
    (プロセスと成果物の品質保証や各プロセス領域のGP2.9)
    ・プロジェクトの進捗管理
    (プロジェクトの監視と制御や各プロセス領域のGP2.8)
    ・データの分析(測定と分析)
    といった形でサポートすることができるでしょう。

    成熟度レベル3になると、組織の標準プロセスの存在や遵守が必要となってきます。その効果でプロジェクト間でのやり方のバラつきは成熟度レベル2と比べてぐっと少なくなります。ただしそのためには、みんながそれに慣れるために教育やサポートが必要となります。

    ここでもPMOを上手く機能させることができます。PMOが標準プロセスについて高い見識を持っていれば、日常的にプロジェクトと関わることにより、「何のためにやるのか」、「どのようにやるのか」ということを現場に近いところで伝えることができます。またプロセス資産の利用についての的確なアドバイスもできるでしょう。

    更に現場のプロジェクトからのフィードバックを近いところで受けることができるため、プロセス資産の改善についても強力なサポートができるでしょう。

    ここでは、
    ・プロセス資産の改善(組織プロセス重視と組織プロセス定義)
    ・リスクの評価(リスク管理)
    ・プロセス資産を使ったプロジェクト管理(統合プロジェクト管理)
    ・改善情報の収集(組織トレーニングや各プロセス領域のGP3.2)
    ・標準プロセスの教育(組織トレーニングや各プロセス領域のGP2.5)
    といった点でプロジェクトをサポートできます。

    実際のPMOの人達を見ていると、献身的に活動していて大変そうだなと思うことは多々ありますが、きっと自分自身のスキルアップにもつながっていると思いますし、組織にとっても不可欠な存在になっていることでしょう。

    少なくとも私はあなた達の味方です。
    All farewells should be sudden.