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第46号:たまにある質問とその答え(2)

2008年01月25日

  • たまにある質問とその答え(2)

    恋愛、セックス、美容、ダイエット、夫の浮気、低迷する株価、ガソリン価格など抱えきれないほどの悩みがあるなか、その上、CMMIにも悩まされているメルマガの読者の皆さま、こんにちは。

    CMMIについて、たまに寄せられるご質問とその答えをお届けします。苦しみを抱えているたくさんのSEPGに心の癒しをお届けできますように。

    Q.要件管理の SP 1.4 に「要件と作業成果物との間に双方向の追跡可能性を維持する」とありますが、要件と設計の関連が分かるようにすればよいですか?

    A.
    要件の追跡可能性とは、要件と、関連要件、実装、および検証との間にある識別可能な関連のことであります。要件と設計との関連だけが分かるというのでは十分ではないでしょう。設計だけでなく、要件とテスト等との関連も分かるようにするとよいでしょう。

    要件が設計書のどの部分に対応しているのか分からないといけません。すべての要件が設計に反映していないとえらいことになります。また要件変更の際には、設計のどの部分に影響があるのか知る必要があります。設計を修正する場合は、他の要件に悪影響がでないか確認しないといけません。だから、要件から作業成果物、作業成果物から要件への追跡可能性を維持するのです。

    すべての要件とすべての設計を対応させた次のような表を作るとよいでしょう。
    このような表がないと保守にたいへんな時間や費用がかかると思います。
    ちなみにこの表では要件5に対応した設計がありません。これは拙い。ということになります。

        │要│要│要│要│要│要│
        │件│件│件│件│件│件│……
        │1│2│3│4│5│6│
    ────┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─
    設計1 │ │○│ │○│ │ │
    ────┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─
    設計2 │○│ │ │ │ │ │
    ────┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─
    設計3 │ │ │○│○│ │ │
    ────┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─
    設計4 │ │ │ │ │ │○│
    ────┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─
     :  │ │ │ │ │ │ │
     :

    テスト仕様書を作るときには、すべての要件がテストされるようにテスト仕様書を作らないといけません。また、どの要件がテストされているのか分からないといけません。

    すべての要件とすべてのテスト項目を対応させた次のような表を作るとよいでしょう。上の表をコピーしてこの表を作りましたので、要件5に対応したテスト項目がありません。これは拙い。ということになります。


        │要│要│要│要│要│要│
        │件│件│件│件│件│件│……
        │1│2│3│4│5│6│
    ────┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─
    テスト1│ │○│ │○│ │ │
    ────┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─
    テスト2│○│ │ │ │ │ │
    ────┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─
    テスト3│ │ │○│○│ │ │
    ────┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─
    テスト4│ │ │ │ │ │○│
    ────┼─┼─┼─┼─┼─┼─┼─
     :  │ │ │ │ │ │ │
     :


    余談でありますが、要件に優先順位をつけていますと、それと関連づけてテスト項目の優先順位も分かります。

    これも余談でありますが、追跡可能性は、垂直方向の関係ばかりでなく、インタフェース横断的な関係など水平方向の関係を扱うこともあります。

    垂直と水平の追跡可能性について、Pat O’Tooleさんの調査によると、

    垂直の追跡可能性は十分な証拠があるが、水平の追跡可能性の証拠がないとき、最も適切な評価(FI, LI, PI, NI)(*1)は何かという質問に対する、リードアプレイザ(46名)から回答は下記のとおりでした。

    FI: 20%
    LI: 39%
    PI: 36%
    NI:  5%

    また、水平の追跡可能性は十分な証拠があるが、垂直の追跡可能性の証拠がないとき、最も適切な評価(FI, LI, PI, NI)は何かという質問に対してのリードアプレイザの回答は下記のとおりでした。

    FI:  7%
    LI: 11%
    PI: 66%
    NI: 16%

    ばらついています。

    SEIの昔のFrequently Asked Questions (FAQs)には、水平の追跡可能性は重要ですが、双方向の追跡可能性を満たすために必要ではないという記述がありました。
    今のFAQsはこの記述がありません。REQM SP1.4のサブプラクティスから水平の追跡可能性を維持するという記述がなくなったからでしょうか。

    【注釈】
    *1)FI, LI, PI, NI
    CMMIの正式評定である SCAMPI A では、プラクティスを下記の4段階で評価します。
     FI:(Fully Implemented;完全に実施している)
     LI:(Largely Implemented;ほとんど実施している)
     PI:(Partially Implemented;部分的に実施している)
     NI:(Not Implemented;実施していない)