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第244号:生成AIはソフト開発やプロセス改善活動にどう活用できるか

2024年07月25日

  • 生成AIはソフト開発やプロセス改善活動にどう活用できるか

    生成AI(Generative AI)がブームとなっています。

    2023年3月に「AIに教えてもらうCMMI(Chat GPT編)」というメルマガ記事を書きましたが、
    https://www.daiwa-computer.co.jp/column/cmmi_228/
    あれから1年半、生成AIは凄まじい勢いで進化を続けており、新しい技術やサービスがどんどん登場し、生成AI関連のニュースを目にしない日はないくらいです。

    読者の皆さんの中でも、すでに生成AIをビジネスやプライベートで活用している方も多くいらっしゃることでしょう。

    私自身も、最近生成AIの研究会に参加していろいろ学習と調査に関わりまして、何ができて何ができないのか少しずつ見えてきました。

    まだ生成AIのことは全然知らない、またはあまり触ってないよという方もいらっしゃると思いますが、徐々に我々の生活に浸透してきていますし、プロセス改善の現場にも活用の波は広まりつつあります。生成AIとはいったいどのようなものなのか、どう扱っていけばよいかは知っておいたほうがよいと思います。

    今回は、ソフトウェアの開発やプロセス改善にこの生成AIがどう活用できるかということを考えていきたいと思います。

    ●生成AIとは
    生成AIは、新しいコンテンツやデータを作り出す人工知能の技術です。大量のデータを学習しそのパターンを理解することで、文章、画像、音声などの生成に役立てることができます。

    一口に生成AIといっても、テキスト生成系、画像生成系、音声系と様々なものがあります。

    このメルマガでは、ソフト開発やプロセス改善に活用しやすいテキスト系生成AIを主なテーマとして説明していきます。

    テキスト系生成AIとは、主に文章の生成を得意とする生成AIです。現在、様々なサービスが利用可能となっており、各社がまさに競争している最中ではありますが、一般でもよく使われていて、筆者が主に経験してきたサービスとしては以下のものがあります。
    ・OpenAI社のChatGPT
    ・Microsoft社のCopilot
    ・Google社のGemini
    ・Anthropic社のClaud
    それぞれ無料・有料のサービスがあり、性能や利用条件等の違いで複数の種類が存在します。

    例えば、無料で利用可能なChatGPTは大規模言語モデル(LLM)が旧バージョンのものなので速度や正確性がやや劣るが、最新のChatGPT4oはより高速で自然な表現での生成が可能であり、有料だと時間あたりの利用可数が多め、といった違いがあります。

    ●生成AIの利用方法
    様々なことに利用できる生成AIですが、いろいろ試した結果、私の身の回りの業務では主に以下のようなことに活用できています。
    1.不明点の調査(ネット検索や機械翻訳の代替)
    2.文書作成の補助(議事録、トレーニング資料、コラム等の作成時のアイデア出し、素案作成、校正など)
    3.文書やデータの要約・整形(長い文章や長時間の会議録音データの要約、データを表形式に整形)
    4.プログラミングの補助(コードの生成、レビュー)

    1.不明点の調査
    これまでネット上の検索サービスを通して行っていた不明点の調査を生成AIで行うという使い方です。おそらくすでに多くの人が行っている使い方ではないでしょうか。例えば、Excelの関数やマクロのVBAコードを調べる、英文メールの良い言い回しを調べる際、ネット検索では複数のサイトを回って調べる必要があるかもしれませんが、生成AIなら回答をうまくまとめて答えてくれます。

    2.文書作成の補助
    文書作成の補助として、私自身は生成AIを以下のようなことに利用しています。
    ・打合せ議事録の作成
    ・メルマガ原稿の素案作成、校正
    ・トレーニング資料の素案作成、レビュー

    打合せ議事録は、例えばオンライン会議ツールで打合せを実施した場合、会議の音声データを文字起こししたスクリプトを生成AIに読み込ませることで議事録を作成できます。手作業で議事録を作成すると本来1~2時間かかるところを数十秒で作成完了できるのがメリットです。

    メルマガ原稿については、実はこの原稿も素案作成と、原稿の誤字脱字チェックなどを一部生成AIに行わせて作成しております。

    意図した文書を作成させるには、「プロンプトエンジニアリング」と呼ばれる指示文の工夫が必要です。

    例えば「○○○というテーマでメルマガを書いて」と指示するだけでもそれっぽいコラムを生成してくれますが、生成AI自身に演じてほしい役割、含めたい内容やテーマ、制約事項などを伝えることで、意図した文書を作成させられる可能性が高まります。

    今回はこんな感じでメルマガの素案作成を依頼しました。
    「あなたはソフト開発企業のプロセス改善のコンサルタントです。
     生成AIをテーマにメルマガの原稿を書こうとしています。
     以下の内容を含めて、構成案やプロットを作成してください。
     #制約事項
     ・生成AIがトレンドになっている
     ・最近主流のテキスト系生成AI
     ・主な活用方法
     ・プロセス改善活動で活用するには
     ・生成AI利用時の注意事項」

    SEPGの皆さんは、組織の標準プロセスやトレーニング資料、社内向け報告書などの文書を作成する機会も多いと思います。プロンプトを工夫しながら生成AIを使って文書作成を進めると、作業の効率化を進められるでしょう。

    3.文書やデータの要約・整形
    生成AIは文書やデータの要約が非常に得意です。長文のコラムやブログ、ビジネス文書などを短い文章に要約してくれますので、短時間で確認したい場合に役立ちます。

    また、通常のテキスト文書を表形式に見やすく整形する等の作業も得意ですので、例えば私はISACAのPARSサイトに公開されているアプレイザルデータを表形式にしてもらってデータ分析に活用しています。

    4.プログラミングの補助
    ソフト開発の現場では、ソースコードの生成やSQL文のチェック、テスト仕様書作成などの活用が進んでいると聞いています。

    ●プロセス改善への活用
    プロセス改善への活用という点では、5月に米国で行われたCMMIカンファレンスでは、AI-Augmented Software Developmentというセッションで、ソフト開発プロジェクトに生成AIやAI関連ツールを使用して、品質・生産性を高めた事例紹介などがありました。

    他の改善系カンファレンスでも生成AIを利用した論文や事例をちらほら見かけるようになりました。

    私の身の回りでも生成AIをプロセス改善や品質管理へ活用できるようにならないか調査を進めています。まだ研究段階なのでうまくいっているものとそうでないものがありますが、一例をご紹介します。ご参考まで。
    ・なぜなぜ分析、特性要因図の作成
     インシデント事象から、その原因の抽出、箇条書きでの整理、要素間の関係のツリー表示などを生成AIがしてくれます。
     しかし、きれいな特性要因図の作成や、与えた情報以上の根本原因の深堀り分析などはできないので、まだ生成AIに任せきりにすることは難しそうです。人間の思考の補助という使い方なら良さそうな印象です。

    ・障害管理データの原因区分割り当て
     ソフト開発のテスト時に検出された障害や欠陥に原因区分を割り当てる際、人間が行うとどの原因区分が適切か悩むことがあり、人によって割り当てがばらつくことがあります。
     これを生成AIでやらせてみようというものです。試してみたところ、プロンプトで入出力例などをうまく指示してあげることで、人間が原因区分を割り当てるよりばらつきが減らせそうな結果となりました。わりと使い道がありそうな事例です。
     難をいえば、有料サービス利用時、処理件数が多い場合に利用料金が高騰するかもしれないことでしょうか。

    ●生成AI利用上の注意点
    このように便利な生成AIですが、一般的によく言われる利用時の注意点を最後にまとめておきます。
    ・結果の品質のばらつき
     生成AIが思ったとおりの結果を安定して生成してくれるとは限りません。与えた情報に対して抜けや漏れが生じることもあります。
     また、ハルシネーションと呼ばれる事実に基づかない嘘の情報を生成してしまうことがあります。
     生成AIにすべて任せることはせず、最終的に人間がチェックして判断する必要があります。

    ・機密情報の流出、著作権やプライバシーの侵害
     社員が生成AIに機密情報をインプットしてしまい、学習データとして利用されてしまうことがあります。
     また、AIが生成したコンテンツを利用した結果、その元となった学習データに起因して意図せず著作権やプライバシーの侵害を指摘されることがあるかもしれません。
     生成AIの社内利用時には、何らかの適切な利用ガイド等が必要でしょう。
     
    ・人間側の能力の低下
     生成AIに頼り切った仕事を続けていると、学習能力の低下につながる恐れがあります。
     人間側のスキルは維持しつつ、作業の効率化やビジネスの成果の向上につながるように生成AIとうまくつき合ってくことが重要です。

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    以上です。プロセス改善に生成AIをどう活用していくかはまだまだ発展途上な部分も多いかと思いますので、読者であるSEPGの皆さんも生成AIを創意工夫しながらうまく活用して、よい成果を出せるようにしていきましょう。