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第224号:CMMI V3.0の新情報:モデル、トレーニング、アプレイザル等の変更点

2022年11月25日

  • CMMI V3.0の新情報:モデル、トレーニング、アプレイザル等の変更点

    10月のISACAのウェビナーにて、CMMIの新バージョンであるV3.0関連の新情報が発表されました。CMMIユーザーの皆様に関係がありそうな以下の変更点の情報を
    ご紹介いたします。
    ・CMMIモデル
    ・トレーニングやアソシエイト試験
    ・アプレイザル

    ※まだ検討中の情報であるため、変更される可能性があります。一部の日本語訳は弊社独自の訳です。

    モデルの変更点

    ●追加・修正されるプラクティス領域(PA)
    ・データ管理のための以下の2つのPAが追加されます。
    Data Quality(DQ) データ品質
    Data Management(DM) データ管理
     
    もともとISACAにはCMMIとは別にDMM(データ成熟度モデル)というデータ管理のためのモデルがあり、それをベースにしているようです。データの管理や改善を行うのに役立つPAになると思われます。

    ・人材管理のための以下のPAが追加されます。
    Workforce Empowerment(WE) 人材の強化
     
    こちらはPeople CMMという人材管理のためのモデルがベースとなっています。
     
    ・V2.2で追加されたEnabling Virtual Solution Delivery(EVSD) 仮想ソリューション提供支援は、名称がEnabling Virtual Work(EVW) 仮想作業支援に変更になり、ドメインも中核からVirtualという新しいドメインに移動になります。

    ・供給者合意管理(SAM)に供給者選定(SSS)が統合されます。世界的に供給者管理(SPM)ビューが採用されることが非常に少なく、SSSを利用する組織がほとんどない状態のため、SSSを廃止してSAMに一部を取り込む形になるようです。V1.3のときにあった供給者選定のプラクティスが復活すると予想されますので、SAMを適用予定の組織は気にしておく必要があるでしょう。

    ●コンテキスト固有の情報の追加
    ・DevSecOpsなどのコンテキスト固有の情報が追加されます。DevSecOpsの環境下で各プラクティスを活用していく際の参考になるでしょう。

    ●ドメインの追加
    ・ドメインが8個に増えます。CMMI V2.0以降、各PAは中核とドメインという領域に割り振られる形式となっておりますが、現在5個あるドメイン(開発、サービス、供給者管理、セキュリティ、安全性)にくわえ、V3.0では新たにData、People、Virtualという3つのドメインが追加され、計8個になります。
     
    ●新モデルのリリース時期
    ・CMMI V3.0は2023年第1四半期後半~第2四半期前半にリリースされる予定とのことです。2月後半~5月前半くらいにリリースされると思われます。

    トレーニングやアソシエイト試験の変更点

    ●コース体系と日数の変更
    ・分割されていたコースが1つに統合され、計4日間のコースになる見込みです。V2.0のコースは、2日間の能力の基礎(FOC)コースと、Building Excellence系の1日コース(開発:BDE、サービス:BSE、供給者:BSME、セキュリティ:BSECE、安全性:BSAFEなど)に分割されて、自身に関連のあるコースを選んで受講する形式でした。例えば、CMMIを開発で利用する場合はFOC+BDEの計3日間、サービスで利用する場合はFOC+BSEの計3日間などです。
     
    これがV3.0ではすべての範囲をまとめて1つの4日間のコース:
    Building Organizational Capablity(BOC)コースとして提供する形になるようです。
     
    世界的には、開発やサービスをまとめてアプレイザル対象とするマルチビューの採用も増えているようなので、このような形式をとる判断となったようです。

    受講者にとっては、いろいろな範囲を1回でまとめて学べるのはメリットかと思いますが、日数が増えることは負担になるかもしれません。

    ●アソシエイト試験の変更、資格の拡張
    ・アソシエイト試験は、V3.0の範囲が含まれて問題が見直され、時間も3時間→4時間に変更になる話がでております。
     
    ・新しいアソシエイト試験は、すべてのドメインを範囲に含むため、開発の資格しか持っていなかったリードアプレイザ(LA)もこの試験に合格することで、他のドメインのアプレイザルが実施できるようになるようです。
     
    LAがアプレイザルで対象にできる範囲が増えるのは、ユーザーにとっても選択肢が増えるので良いことかもしれません。
     
    ●新コースの開始時期、V2.0コース終了時期や資格の有効期限
    ・V3.0のコースや試験の提供開始がいつになるかはまだ未定です。V3.0モデルのリリースの後になるはずですので、おそらく2023年4月以降でしょう。
     
    ・V3.0のコースとアソシエイト試験が開始されると、V2.0コースは約1か月程度の猶予期間をもって終了とする、という話がでております。
     
    ・その一方、V2.0のアソシエイト資格は2023年12月末までは更新の猶予期間とする話もでており、2023年中にV2.0のアプレイザルにチームメンバとして参加予定の方は、そのアプレイザルがV3.0の新ドメインを適用しないのであれば、資格の更新は不要でそのままチームメンバとして参加可能になるようです。
     
    ・弊社の次回のV2.0公式コース(FOC+BDE)は12月開催予定ですが、1月以降の開催予定はまだ未確定です。上記を踏まえ、2023年以降は3月頃の開催を検討中です。また詳細はHPやメルマガにてご案内いたします。
    https://www.daiwa-computer.co.jp/jp/consulting/seminar/introv2_0
     
    V3.0コースリリース後も、日本語で提供できるようになるまでしばらく時間がかかると思われるため、2023年のアプレイザルを検討中でチームメンバ資格が必要な方は、3月までにV2.0コースを受講することを検討いただいたほうがよいかもしれません。

    アプレイザルの変更点

    ●成熟度レベルの対象PAのコンセプトが変更
    ・CMMI V2.0~V2.2の開発ビューにて組織が成熟度レベルに取り組む際は、成熟度レベル2の主要コンセプトである「プロジェクトレベルで管理されている」ことを確認するのに相応しい特定の9PA(SAMやセキュリティ等のPAもターゲットに含める場合は最大14PA)が対象PAとなり、その他のPAが対象となるのは成熟度レベル3以降からでした。
    ※参考:開発ビューの場合の対象PA:
    https://www.daiwa-computer.co.jp/jp/consulting/cmmi-v2-dev
     
    ところが、CMMI V3.0ではどの成熟度レベルでも、基本となる中核に含まれる17PAすべて+1つ以上のドメインを選択して実施する形式に変わるという話がでておりまして、そうなると成熟度レベル2選択時はこれまでより対象PAが増えることになります。
     
    例えば開発を対象とする場合、成熟度レベル2でも対象PAはこうなります。
    中核の17PA
     RDM、PQA、EST、PLAN、MC、CM、MPM、GOV、II
     VV、PR、RSK、CAR、DAR、OT、PCM、PAD …★
    開発ドメイン2PA
     TS、PI …★
     =計19PA   ★の行がV3.0では成熟度レベル2でも新たに対象となるPA
     
    ISACAによると、現在の対象PAの選択の仕組みは複雑なので、それを単純化させることで運用の効率化と拡張性を高め、進化の道筋を見つけやすくするのがこの変更の狙いとのことなのですが、初めて成熟度レベル2に取り組む組織にとってはこれまでより負担が大きくなることが予想され、有識者の間でも反対意見がでております。実際、この変更がV3.0で導入されるかはまだ未確定です
     ので、動向を見守りたいと思います。

    ●V2.0アプレイザルの終了時期
    ・2023年12月末までは移行猶予期間となるようですので、新しいドメインの採用予定でなければ、2023年中は特に追加のアクションは不要でこれまでどおりのアプレイザルが実施できるという話がでております。モデルはV2.0のままで良いのか、V3.0を適用して実施する必要があるのかは明確にはアナウンスされていないため、詳しい話が分かり次第またメルマガ等でお伝えしていきます。