CMMI V2.0のモデルには、各プラクティスはPA解説情報のプラクティス一覧とプラクティス必要情報のプラクティス文の2箇所に記載があります。
みなさんはお気づきでしょうか、この2箇所の記載が一致していないプラクティスがあることを。
これは日本語訳の問題で、原文では一致しています。
PA解説情報のプラクティス一覧のプラクティス(以下、甲)とプラクティス必要情報のプラクティス文(以下、乙)が一致していないのは次のとおりです。
CONT 1.1
甲)運営の著しい混乱を処理するために、不測の事態におけるアプローチを作成する。
乙)運営の著しい混乱を処理するために、不測の事態におけるアプローチを開発する。
「Develop」を、甲は「作成する」、乙は「開発する」と訳しています。
DAR 2.2
甲)選択肢を評価するための基準を作成する。
乙)選択肢を評価するための基準を策定する。
「Develop」を、甲は「作成する」、乙は「策定する」と訳しています。
MPM 5.1
甲)統計的技法およびその他の定量的技法を使用して、事業目標が事業戦略と事業実績に整合するようにする。
乙)統計的技法およびその他の定量的技法を使用して、事業目標が事業戦略と実績に整合するようにする。
「business strategy and performance」を、甲は「事業戦略と事業実績」、乙は「事業戦略と実績」と訳しています。
MC 1.2
甲)課題を特定し、解決する。
乙)課題を特定して解決する。
読点を入れるか、入れないか。
MC 3.3
甲)課題を特定するために作業環境を監視する。.
乙)課題を特定するために作業環境を監視する。
同じに見えますが、甲には文末に不要な「.」があります。
OT 3.4
甲)組織のトレーニングニーズを取り上げるトレーニング能力を開発し、最新に保ち、使用する。
乙)組織的なトレーニングニーズを取り上げるトレーニング能力を開発し、最新に保ち、使用する。
「organizational」を、甲は「組織の」、乙は「組織的な」と訳しています。
PLAN 2.1
甲)作業の完遂に向けたアプローチを作成し、最新に保つ。
乙)作業達成に向けたアプローチを作成し、最新に保つ。
「accomplishing」を、甲は「完遂」、乙は「達成」と訳しています。
PLAN 2.6
甲)利用可能な資源と見積もられた資源の隔たりを解消することで、計画が実現可能であることを確保する。
乙)利用可能な資源と見積もられた資源を調整することで、計画が実現可能であることを確保する。
原文は「reconciling」です。「隔たりを解消する」はV1.3の訳と同じです。
V2.0では、甲以外は「調整する」と訳されています。
PQA 2.1
甲)品質の履歴データに基づき、品質保証のアプローチおよび計画を策定し、最新に保ち、それに従う。
乙)品質の履歴データに基づき、品質保証のアプローチを策定し、最新に保ち、それに従う。
原文には「plan」がありますので、甲が正しいです。
PQA 3.1
甲)品質保証の活動中に,改善の機会を特定し、記録する。
乙)品質保証の活動中に、改善の機会を特定し、記録する。
同じに見えますが、甲は「、」が「,」になっています。
RDM 2.4
甲)プロジェクト参加者から要件を実装できるというコミットメントを獲得する。
乙)プロジェクトの参加者から要件を実装できるというコミットメントを獲得する。
原文は「project participants」。間に「の」を入れるか、入れないか。
RDM 2.6
甲)計画と活動、または計画と作業成果物が要件と首尾一貫した状態が保たれているようにする。
乙)計画と活動、または作業成果物が、要件と首尾一貫した状態に保たれているようにする。
「plans and activities or work products」を、甲は「計画と活動、または計画と作業成果物」、乙は「計画と活動、または作業成果物」と訳しています。
あと、乙のほうが読点が多いです。
STSM 2.3
甲)戦略的ニーズと能力から導出された、新たなまたは変更されたサービス群を提供するためのアプローチを作成し、最新に保ち、それに従う。
乙)戦略的ニーズと能力から導出された、新たなまたは変更されたサービスを提供するためのアプローチを作成し、最新に保ち、それに従う。
「services」を、甲は「サービス群」、乙は「サービス」と訳しています。
SAM 3.1
甲)分析のために術的な供給者納入物を選定し、技術レビューを行う。
乙)分析のために技術的な供給者納入物を選定し、技術レビューを行う。
甲は脱字ですね。
以上です。
MC 3.3、PQA 2.1、SAM 3.1は、明らかに片方が間違っていますが、他は訳語の違いなので好きなほうで理解すればよいと思います。
第217号:日本語訳に一貫性のないプラクティス
2022年04月25日
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日本語訳に一貫性のないプラクティス