プロポーザルマネジメントという提案手法があるのをご存知でしょうか。
10月11日~13日に江戸川区船堀で行われたSPI Japanに参加してきたのですが、そのチュートリアルにてプロポーザルマネジメントを学んできました。
プロポーザルマネジメントは、名前の通り提案活動の管理に役立つことはもとより、当メルマガの読者が関わっているであろうプロセス改善業務における改善策の提案などにも役立ちそうだと思いましたので、一部をご紹介します。
第164号:顧客が望むホットボタンは?:プロポーザルマネジメントで改善提案
2017年11月24日
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顧客が望むホットボタンは?:プロポーザルマネジメントで改善提案
プロポーザルマネジメントとは
プロポーザルマネジメントとは、組織全体の提案力を高め、受注を勝ち取るためのアプローチをまとめたものであり、提案期間におけるプロジェクトマネジメントと言えるものだそうです。
プロポーザル・マネジメント・プロフェッショナル協会(APMP)にて策定されました。
※APMP = Association of Proposal Management Professionals
AMPM日本支部 オフィシャルサイト
https://www.apmp.jp/
日本プロポーザルマネジメント協会の代表理事であり、今回のチュートリアルの講師だった式町久美子氏の以下の書籍に詳しくまとめられていますので、ちゃんと知りたい方はそちらを参照してください。
受注を勝ち取るための 外資系「提案」の技術
- 日本人の知らない世界標準メソッド
https://tinyurl.com/yc33gxod
開発のためのCMMI(CMMI-DEV)を、開発プロジェクトの開始から終了までのプロセス定義や改善に利用し、その後の保守・運用についてはITILやサービスのためのCMMI(CMMI-SVC)などを参考にしている、という組織は結構多いのではないかと思います。
しかし、受注前の営業段階については、まだプロセスが十分整備されておらず、過去のやり方を真似ているだけだったり、営業担当者の属人的なやり方に依存している組織も多いかと思います。
フェーズ :参照モデル・手法等
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受注前 :ない? →プロポーザルマネジメントを適用
受注後~開発中:CMMI-DEVなど
保守・運用中 :ITIL、ISO20000、CMMI-SVCなど
個人スキルだけに頼るのではなく、チームや組織で提案活動のプロセスを整備して改善サイクルを回し、受注の成功率を高めていきたい組織にとっては、プロポーザルマネジメントは参考になると思います。顧客分析とホットボタン
プロポーザルマネジメントは、マーケティング活動から受注にいたるまでのプロ
セスを以下の7つのステップに分けて、望ましい進め方を定義しているとのこと。
1.参入市場・業界の絞り込み
2.ターゲット顧客の絞り込み
3.案件の評価
4.案件獲得活動(顧客との関係づくり)
5.提案書作成計画(プロポーザルマネジメントプラン)
6.提案書の作成
7.提案書提出後の活動
チュートリアルでは幅広いプロポーザルマネジメントの要素の一部として、
4.案件獲得活動のあたりを体験しただけですが、参考になった要素が盛りだくさんでした。
その中でも特に私が感銘を受けたキーワードは、「ホットボタン」です。
ホットボタンとは、その人にとって最も重要な関心事や動機のことで、購買衝動を呼び起こすきっかけとなるキーワードのことだそうです。押されたら思わず買ってしまう心のスイッチに相当するので、このホットボタンに関連付けた解決策の提案をすることで、顧客に話を聞いてもらえるようになり、案件獲得の成功確率も高まるとのこと。
案件獲得活動においては、顧客を深く理解するための活動として顧客分析を行い、購買活動に関わるキーパーソンを洗い出し、特に承認などに関わる意思決定者であるDMU(Decision Making Unit)と特定するのが重要とのこと。そして、それらのキーパーソンごとにホットボタンを見出します。
例えば、業務システムをリプレイスする案件のケースでは、
・既存の業務システムが入力しずらい、外出先から入力できない、と思っているシステム利用者のホットボタン→「使いやすさ、利便性」
・システムの入力ミスや手戻りを少なくしたい、利用者のクレームを減らしたいと思っているシステム管理者のホットボタン→「効率化、ユーザー満足」
・システム移行の不安、を感じている事業本部長(DMU)のホットボタン→「導入実績、完遂力」
などになるはずです。
これらのホットボタンを満たす解決策、ベネフィット、特徴・機能などをまとめていくことで、顧客の真のニーズに近い提案とすることができます。プロセス改善活動に活用するには
プロポーザルマネジメントは、特定の顧客から受領したRFPからの提案活動に適用されることが多そうですが、パッケージビジネスのように市場を相手にする場合や、社内のプロセス改善活動において現場に改善提案するケースにも適用可能だそうです。
例えば、
・多くの人が影響を受ける標準プロセスの修正
・新しいプロセスモデルや手法の適用
・新しい管理ツールの導入
などの比較的大規模な改善を行う時は、いろいろな人が好き勝手に意見を言った挙句、炎上して話が進まないといったこともありえます。
そんな時に、プロポーザルマネジメントを活用して、
・社内のプロセスの作成、レビュー、承認等に関わるキーパーソンを洗い出し、
・その人たちの課題・悩み・関心事を聞き出し、
・そこからホットボタンを見出し、
・適切な解決策を特定する
という段取りを踏めば、関係者が納得しやすい改善提案につなげることが期待出来そうです。
こりゃ一度試してみないとなと思って、社内改善テーマの改善案をプロポーザルマネジメントで導き出す流れについてのメルマガを書いてみたのですが、長くなりましたので今日はここまでにします。
練習問題としてテーマだけ下記に挙げておきますので、興味のある方はチャレンジしてみてください。
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【練習問題】プロポーザルマネジメントを使って改善提案を導き出す
あなたは、とあるソフトウェア開発会社の改善グループに所属するSEPGです。
ある日、所属長から以下のようなお題を出されました。
「CMMIを元にした改善活動を通して、品質に関する改善は一定の効果を得た。次のテーマを考えなければならない。そうだ、働き方改革に取り組む世間一般の時流に乗って、次は生産性向上をテーマに施策を進めよう。ウチはまだ生産性の測定も評価の仕組みも十分なものがない。現場に無理のない形で適用できる生産性向上の仕組みを考えて提案してくれないか?」
このお題について、プロポーザルマネジメントの手法を使って改善提案を導いてください。
1.顧客分析:
・テーマに関わる顧客(キーパーソン)は誰か
・各顧客の
- 課題・悩み・関心事は何か
- それぞれの意思決定における役割は何か
(利用者、レビュー者、承認者など)
- ホットボタンは何か
2.解決策:ホットボタンを満たす改善案は何か
3.ベネフィット:この解決策で顧客が得られるメリットは何か
4.フィーチャー:改善案の特徴や必要な機能は何か
5.証明:この改善案の実現可能性を示せ(過去事例、評価結果など)
6.差別化:他の案と比べて、この改善案を採用した方が良い理由を示せ
※まさかの投げっぱなしかよ、答え教えろよ、という熱心な方は、個別に私までお問合わせください。