CMMIにはプラクティスというものがあります。例えば次のようなものです。
CM SP 3.2 構成ベースラインの一貫性を維持するため、構成監査を実施する。
CMMIを使ってプロセス改善するということは、CMMIモデルに記載されているプラクティスを実施しないといけないものだと思っている人がいます。
しかし、モデルに記載されたプラクティスは、参考情報であり、実施しなくてもいいものなのです。
代替プラクティスというものがあります。
代替プラクティスは、CMMIの評定手法を定義した文書(SCAMPI Method Definition Document。以下、MDD)の用語集に次のように定義されています。
「参照モデルに含まれる一つ以上のプラクティスの代用となるプラクティスのこと。モデルのプラクティスに関連するゴールを満たす同等の効果を収める。代替
プラクティスは、モデルのプラクティスを1対1で置き換える必要はない。」
CM SP 3.2の例で言うと、構成監査を実施するのと同じ効果があるなら、構成監査を実施していなくてもいいのです。
MDDの付録に「代替プラクティスの特定と特性値の決定ガイダンス」があります。
評定の代替プラクティスの分析と使用は、次のように行います。
・どのモデルプラクティスが代替プラクティスを使って実装されるているように見えるか特定し、その代替プラクティスにモデルプラクティスと同等の効果があるのか分析する。
・代替プラクティスの事例レベルの特性値を決める。
・代替プラクティスの事例レベルの特性値をモデルプラクティスに適用する。
・事例レベル特性値をまとめ、組織単位レベルの特性値を決め、所見とゴールレイティングを生成する。
☆許容可能な代替プラクティスの特定
一つ以上のモデルプラクティスと同等の効果が代替プラクティスにあることに評定チームが同意しないと、代替プラクティスは許容されません。
そのためには、最初に、評定チームは、代替プラクティスがどのモデルプラクティスに対応しているのか分析しなければなりません。
それから、評定チームは、ゴールを満たすためにモデルプラクティスの実装によってどんな効果があるのか決めないといけません。
この決定は、ただ単に、モデルプラクティスの実装の結果としてどんな作業成果物が開発されるのかを示すだけではないかもしれません。
代替プラクティスは、モデルプラクティスを1対1で置き換える必要はありません。
ある場合には、代替プラクティスは、一つ以上のモデルプラクティスについて部分的に対応するだけかもしれません。
そのような場合、代替プラクティスは、関連したモデルプラクティスと併せて分析されなければなりません。
また別の場合には、代替プラクティスは複数の要素から成るかもしれません。
☆代替プラクティスの事例レベルの特性値
評定チームによって許容可能な代替プラクティスが承認されたら、その実装は事例レベルで特性値を決定することができます。
ルールは、モデルプラクティスの特性値を決めるときと同じです。
しかし、評定チームはどんなアーティファクトが論理的に代替プラクティスの実装から期待されるべきかについて決定しなければなりません。
期待されるべきアーティファクトについて決定したあと、評定チームはそのプラクティスの実装の特性値を決定するために、証拠を調べることができます。
☆関連するモデルプラクティスの事例レベルの特性値
典型的には、代替プラクティスの特性値は、対応したモデルプラクティスに直接適用されます。
代替プラクティスが一つのモデルプラクティスについて対応する場合、この特性値は同じです。
しかし、代替プラクティスが複数のモデルプラクティスに対応する場合、代替プラクティスの弱みと、提供された証拠が代替プラクティスを完全にカバーするか
どうかによって、モデルプラクティスの特性値は異なるかもしれません。
代替プラクティスと関連した弱みは、対応するモデルプラクティスの一部だけに適用されるかもしれません。
例えば、代替プラクティスが特性値がLIまたはPIの場合、弱みのどれもそのモデルプラクティスにあてはまらず、適切に実装された証拠があるならば、対応するモデルプラクティスのいくつかは、もっと高い特性値になるかもしれません。
☆組織単位レベルの特性値とゴールレイティング
対応するモデルプラクティスの事例レベルの特性値が決まったら、組織単位レベルの特性値、ゴールは通常どおりの手法で進めて行きます。
以上のように、代替プラクティスの特定と特性値の決定は行われます。
モデルに記載されているというだけの理由で役に立たないことをするよりも、代替プラクティスを活用してください。
第145号:オルタナ系
2016年04月25日
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オルタナ系