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第126号:プロセス改善活動を楽しむには

2014年09月25日

  • プロセス改善活動を楽しむには

    皆さん、今年のテニスの全米オープンは見ましたか?

    錦織圭選手が見事準優勝を果たしましたね!

    普段テニスを見ない方でも、日本中でフィーバーとなりましたので、中継やニュースで結果をご覧になった方は大勢いることでしょう。

    日本人でテニスのグランドスラム大会男子シングルスでの決勝進出は初の快挙です(※)。
    高校生の頃から25年テニスを続けている私は、グランドスラムの決勝の舞台に日本人が立つのをずっと夢見ておりましたので、今回の錦織選手の大活躍はとても胸が踊りました。
    ※女子ダブルス、混合ダブルス、車いす部門ではすでに優勝者もいます。

    錦織選手の試合の様子を通勤中にツイッターの実況で見ては一人で興奮し、ベスト4進出をかけたワウリンカ戦に接戦の末に勝利した瞬間、電車の中で叫びそうになったり、準決勝のジョコビッチ戦の前には思わずWOWOWに登録してしまったり、といった具合です。

    そんな私を含めて、日本人初の優勝の期待を背負って決勝に望んだ錦織選手ですが、同じく初の決勝進出のマリン・チリッチ選手に惜しくも敗れてしまいました。

    チリッチ選手と勝敗を分けた原因は何だったのでしょうか?

    それは、決勝という緊張感のある舞台を「楽しんでプレイできたか」どうかが要因の一つにあったのではないかと思っています。

    ある記事によると、チリッチ選手のコーチであるイバニセビッチ氏は決勝前に、「行って来い。そして楽しめ。君は優勝者に値している。思いっきり楽しんでこい」とアドバイスしたそうです。

    そして、コートに入る直前のインタビューでチリッチ選手も「決勝を楽しんでくる」とTV放送でコメントしていました。

    決勝を楽しむという、よい精神状態でプレイできたのが大きかったのでしょう。
    実際、チリッチ選手は得意のサーブも絶好調で、錦織選手のお株を奪うストロークでのエースや粘りを見せていました。
    逆に錦織選手の方は、過去の対戦成績で優位に立つ相手に対し、チャレンジャーの気持ちが薄れ、初の決勝という舞台から来る緊張からか、普段の力を出しきれなかったように見えました。

    どんなに過去の結果から優位性が見出されて、勝つための実力があったとしても、それを行う人が良い精神状態で望めないとうまくいかないのでしょう。

    オリンピックなどで選手が「楽しむ」なんて言うと、代表として参加しているのに不謹慎だなんてことを言われることもありますが、実力を引き出すためには楽しむ精神状態になるのも良い方法なんだなと思います。

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    さて、プロセス改善の世界でも、やはり実施する人たちがプロセス改善活動そのものを楽しんでやれているかが、活動を効果的に行い、継続していくための一つの鍵になるのではないかと思います。

    プロセス改善活動にて、SEPGが作った標準プロセスを現場に押し付けをしたり、評定の準備や実施で現場に無理を強いたりしてしんどい状態になり、誰も楽しめない状態になって、活動自体が止まってしまった、という話もよく聞きます。

    そうならないように、活動を楽しくする工夫を随所に取り入れていくことが必要かと思います。
    例えば、楽しむための要素を含む手法を取り入れるのが一つの方法でしょう。

    アジャイルのプラクティスの中には、活動を楽しむ要素を持った手法がいろいろと取り揃えられています。
    振り返りのKPT、ニコニコカレンダー、プランニングポーカーなどです。

    KPT(=けぷと)はアジャイル開発でなくても、取り入れている組織は結構あるのではないでしょうか。
    活動の節目などで、Keep(続けること)、Problem(問題点)、Try(改善すること)の3つの切り口から振り返りを行う手法です。

    私が関与している組織の改善活動においても、年度末や評定の最終日などの節目のタイミングで、参加者同士でKPTを使用して振り返りを行うことを最近よくやります。

    本来、KPTではKeepを最初に行い、その後P→Tの順に出していくのですが、自由記入方式でKPTのシートを用意して各自に書いてもらうと、問題点や改善点の方が出しやすいのか、Keepを書かずにProblemやTryばかり書かれることがありました。
    この状態だと、参加者の意識が後ろ向きになり、少し暗い雰囲気になる気がします。

    そこで、「Keepを出して下さい。慣れてない人はGood Pointでもいいですよ」と言ってディスカッションをすると、どんどん良い点が出てきて、発言が前向きになり、参加者同士で褒め合う、楽しい雰囲気が出てきます。

    また、活動に「競争」の要素を取り入れたり、頑張った人への「ご褒美」に相当するするものを設けたりすると、ゲーム性が向上し、楽しさが出てきます。

    例えば、QCサークルに代表される小集団活動にて改善活動を行った成果を発表しあい、優勝したチームには報奨金を出すといったことや、組織に役立つデータを提供したプロジェクトメンバには、ボーナスで一時金を出す、などです。

    「ウチの組織ではお金を出すのはちょっと・・・」という場合は、成果を出したメンバを朝礼で表彰する、活動の成果が得られた後に皆で打ち上げに行く、というのもいいでしょう。

    もちろん、組織のプロセス改善の場合、推進者であるSEPGの人たちだけが楽しい状態はダメで、現場も経営層も、その先のお客様もハッピーになって、関係者が皆楽しめる状態を目指すことが理想だと思います。

    そのためには、プロセス改善の目標を達成する苦しみやプレッシャーも当然あろうかと思います。
    しかし、それを乗り越えた先には、「達成感」という格別の楽しみが待っており、その達成感が自信につながっていくと思います。

    錦織選手もベスト8進出決定後のインタビューで「勝てない相手はもういない」と非常に前向きな言葉を述べてますが、これはプレッシャーを感じつつも、苦難を乗り越えてきた自信から出た言葉なのではないかと思います。

    組織に合う手法を取り入れて、「達成できない改善目標などない」と前向きな考え方を持って、プロセス改善を楽しみながら進めていきましょう!