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第105号:改善活動の進捗遅れに手を打つ, CMMI Instituteの運営が開始

2012年12月25日

  • 改善活動の進捗遅れに手を打つ

    CMMIを用いたプロセス改善活動では、評定を実施した後、見つかった弱みに対する改善策を特定し、アクションプランを立てて改善を実施していく・・・という流れをとることが多いと思います。

    ところが、アクションプランまでは予定通り出来たものの、その後の改善実施がスムーズに進まずに予定していたスケジュールを遅延してしまい、計画変更が必要になったり、途中で頓挫してしまったりすることがあります。

    なぜ進捗遅れが発生するのでしょうか?

    今回は、どうしたら進捗遅れを発生させず、予定通り改善活動を進めることができるかについて少し考えてみたいと思います。

    遅れの原因によって、対策がいろいろ考えられそうです。

    担当者のスキル不足  ⇒対策:トレーニングとテンプレート化

    エンジニア向けの文章作成術の書籍は、いつ本屋に行っても見かけます。
    それだけ文章を記述することに苦手意識を持っているエンジニアが多いということでしょう。

    そんな人が標準プロセスや書式の作成担当にアサインされた場合、何をどう書いていいか分からなくて作業が進まない、ということがあります。

    対策としては、以下のようなことをすると良いでしょう。
     ・事前にプロセス記述作成の経験のある人がトレーニングを実施する
     ・標準プロセスや書式のフォーマットやガイドライン、サンプルを作成し、それをお手本にして作業を進めてもらう
     ・こまめに経験者のレビューやアドバイスを受けながら進める

    アクションプランが大雑把  ⇒対策:タスクを分解し、締め切り効果を活かした管理をする

    アクションプランが大雑把だと、どこから手をつけていいか分からない場合があります。

    例えば、「リスク管理が行われてない」という課題に対して、「リスク管理の仕組みを導入する」という改善策を考えたとします。
    アクションプランとして、担当者Aさんが12月1日~31日の1ヶ月間でとにかく改善策を実施するということを、エイヤッと決めたとします。

    Aさんがリスク管理に詳しい人なら、こんなアバウトな計画でも作業は進められるかもしれませんが、どんな作業成果物を作成するのか、具体的に標準プロセスにはどんな要素を記述すべきか、書式としてどんな種類が必要か、作成やレビューはどのように進めるかの目処をつけておかないと、予定通り進めることは難しいです。

    対策としては、まずはタスクを細かく分解することが必要でしょう。
    作成物の規模が大きい場合や、時間がかかる作業の場合は、1タスク40時間(5人日)以内くらいに分割するのが目安かと思います。

    また、上記の例のように作成期間が1ヶ月もあると、「最後に一気に作ればいいや」と思って作業を後回しにしてしまいがちです。
    そのうち想定外の仕事が入って時間を割けなくなり、結局完成しなかった、ということがあります。

    人間は、時間があればあるだけ使ってしまう生き物です。別の言い方をすると、本当はもっと短時間で作成できるはずの作業も、作業に使える時間に余裕があると、それを目一杯使ってしまう習性があります。

    なので、「締め切り効果」を活かした対策を導入しましょう。

    期間が長いタスクを分解する際は、段階的に作成とレビューを行うタスクを入れます。
    レビューを行う日程を決めることで、「そこまでには何らかの形あるものを作ろう」という締め切り効果が発生し、作業のパフォーマンスが向上することが期待できます。

    上記の例でのタスクとスケジュールは、以下の様な感じでしょうか。
     ・リスク管理標準作成 12月3-7日
     ・リスク管理表作成  12月10-13日
     ・ドラフトレビュー  12月14日
     ・修正        12月17-20日
     ・修正版レビュー   12月21日
     ・最終修正      12月25-28日

    いかがでしたでしょうか?
    他にも進捗遅れに手を打つならば、担当者を増員する、専門家に遅れの部分の支援を依頼する、作業範囲を縮小するといった対策も考えられます。
    しかし、実際の活動では、現有リソースで何とかしないといけないケースも多いと思いますし、目標達成の上で作業範囲を縮小できないこともあるでしょう。

    つい、「やばい時は残業や休日出勤でカバーする」という根性論で何とかしがちですが、その前に、活動の進め方を変えることでスムーズに活動が行われる余地がないか検討してみましょう。