D-column

#8 : 病害虫と闘う ~光の波長パワー編~

2024年07月01日

  • 日中は暑く、夜間はややすごしやすい時期になりました。梅雨明けをまだ感じさせない天気が続き、雨が降れば蒸し暑く夏の到来を予感します。カメムシやキノコバエといった不快害虫の発生が多くなり、寝るときの蚊対策も手放せなくなってきました。

    動植物の活動が活発になり農作物もぐんぐん育つ夏ですが、元気になるのは農作物だけではありません。農作物を狙う害虫や、植物表面・土壌で繁殖する細菌などもまた活発的になっては農家の頭を悩ませています。メロン栽培の観点から見ても"ウドンコ病"や"つる枯れ病"といった細菌に起因する病気が発生しやすくなったり、高温湿潤を好む様々な害虫の活動が活発になったりと油断できない季節です。

    今回のコラムではこれから旺盛になる病害虫の勢いに負けないよう、ルーツ圃場で実施中のIPM(総合的病害虫管理)に基づいた病害虫対策を紹介します。

  • ルーツ圃場で主に発生する害虫にはコナジラミがいます。体長1mmほどの白いセミのような姿かたちをしており、筒状の口を植物体に刺すことで吸汁し加害します。

    またコナジラミの排泄物は"すす病"とよばれる黒いカビを発生させるために葉を汚して光合成を阻害したり、果実を汚して商品価値を下げてしまうことからコナジラミの防除は大きな課題となっています。

    コナジラミは黄色の光や物体に引き寄せられる性質があるため、それを利用した対策商品として黄色の両面粘着テープを利用する方法があります。コナジラミだけでなく小さなハエなどの病原菌のキャリアー(運び手)となる虫も良く捕殺できるためルーツ圃場では植物体の傍に常設しています。

  • 他にもメロンに発生する害虫にはアザミウマがいます。体長1mmほどで蜂と蚊が混ざったような姿かたちをしており、コナジラミ同様に筒状の口を植物体に刺すことで吸汁し加害します。コナジラミと異なる点として植物体組織を破壊しながら吸汁をするため植物内部へのダメージが大きく、生育に影響を与えるためこちらの防除も大きな課題となっています。

    アザミウマ類は630~660nmの光の波長を視認できないため赤色LEDを栽培施設内に吊り下げるという対策方法があります。これによりアザミウマからはまるで暗闇のように周りを認識できなくなるため繁殖・移動を防ぐ効果があります。植物体が大きく成長すると赤色光が届かない陰の部分が増えるため効果が落ちますが、特に大きな被害につながりやすい栽培初期でアザミウマを抑制できるため重宝しています。

  • 他にも病害虫に負けない強い作物を育てるための試験を実施しており、補光用のLEDを一部設置しています。夕方から夜間にかけて数時間照射することで生育促進するとともに、紫外線B波を含むために殺菌作用による防病効果があり、農薬や肥料以外でも植物を強く健康に保つ方法として今後の成果に期待が高まります。

    ルーツでは今後も新たな病害虫対策を検証・導入していく予定です。効果的な方法などは検証次第こちらで発信していきます。

    [M.T]