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第97号:聞き手を引き込むSEPGのプレゼン術

2012年04月25日

  • 聞き手を引き込むSEPGのプレゼン術

    このメルマガの読者は組織のプロセス改善推進者、いわゆるSEPGの人も多いと思いますが、SEPGをしていると、様々な場面でプレゼンテーションを行う必要にせまられることがあります。例えば、新しい標準プロセスを組織の人員に説明したり、組織の上位層にアプレイザルの結果や改善策について報告したり、改善事例を自社内やシンポジウム等で発表したり、などです。

    SEPGにとって、良いプレゼンとはどんなものでしょうか?

    良いプレゼンの方法を学ぶ方法としては、今は書籍やネットなどで数多くのノウハウが公開されていたり、動画サイトでも多くのプレゼンを視聴することが出来たりします。詳しくはそれらを研究頂くとして、今回のメルマガでは、私が3月に参加してきましたSEPG 2012 NORTH AMERICAで、とにかくうまいプレゼンだなと非常に感心したセッションがありましたので、事例としてそれをご紹介したいと思います。

    「What Doesn't Kill You Makes You Stronger:
     My Process Improvement Lessons Learned」

    これは、Leading Edge Process Consultants社のBill Smith氏によるプロセス改善の教訓トップ10を紹介するセッションです。

    内容は、氏が行ってきたコンサルティング活動から得られたプロセス改善の教訓をランキング形式で発表していくものです。内容もさることながら、氏のプレゼン資料の作り方や演出の仕方が抜群にうまくて、私を含めて聴衆は皆引きこまれていました。

    どんな点が良いプレゼンと感じたのか、主な点を3つあげてみます。

    1.キャッチーな絵とシンプルなメッセージ

    1枚のスライドには、1つの写真とメッセージが数個だけしかありません。
     
    写真は非常にキャッチーで、かつユーモアがあります。
    例えば、
    ・"measure(尺度)"の説明→"メジャー(巻尺)"の写真
    ・"どのくらい金が無駄になったのか"の説明→"ドル紙幣が排水口に流れていってしまっている写真"
     
    といった感じで、中にはどうやって調達したんだろう、と思うような写真や絵が使われていました。
     
    また、メッセージは非常に簡潔で、聞き手が理解しやすいものになっています。
    つい、スライドには多くの情報を盛りこみがちですが、「1スライド1アイディア」の構成となっている良い事例でした。

    2.身近に感じるストーリー

    良いプレゼンは、ストーリーがあり、ドラマ性を感じさせるものになっていると言われます。
     
    このプレゼンでは、聞き手にとって身近なプロセス改善の事例が、ランクごとにストーリー形式で説明され、共感を得やすい構成となっていました。
     
    例えば、第10位の教訓の内容は以下のようなストーリーです。
    非常に分かりやすく、かつストーリーを楽しめる流れになっていました。
     
    ・あるレベル1の組織が、新たな測定の仕組みを整えることになった。
    ・彼らの新しいコンサルタントが、最初のSEPGミーティングに参加した。
    ・SEPGメンバは、8つの新しい尺度を決めた・・・要件管理(REQM)のためだけに! (と、ここで会場から笑いが起こる)
    ・皆は怒っている・・・ただし、1人の男(PM)を除いて!(またここで笑いが起こる)
    ・投票が行われたが、PMの意見が通り、結局すべての尺度を適用することになった。
    ・6ヶ月間、それらの尺度を収集した。
    ・しかしその後、8つのうちの6つの尺度の測定をあきらめた。
    ・メンバにはフラストレーションがたまり、時間とコストが無駄になった。
    ・第10位の教訓:"NO"と言う人を無視するな。彼らは正しいかもしれない。

    3.会場を巻き込む

    プレゼンの失敗とは、聴衆が途中で飽きてしまって時間が長く感じてしまったり、最終目的であるプレゼンターが届けたいメッセージが聞き手に伝わらなかったりことでしょう。
     
    聴衆を飽きさせずにメッセージを届ける工夫として、上記の1、2以外にこのプレゼンで行われていたのは、一見地味になりがちなプロセス改善の世界においては、かなり派手でエンターテイメント性に富んだものでした。
     
    ランキング番号を表示するスライドで、会場の参加者が「ナンバー○!」とコールし、一番声の大きかった人に向けて、アシスタントが猿の人形をスリングショットで投げ込んでプレゼントする、という非常にわくわくする演出を行なっていました。ランキングが進むごとに、会場の反応が良くなっていきます。プレゼンターと聴衆の間に見事な一体感が生まれていました。
     
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    上記3のような演出は、すべてのプレゼンで真似出来るものではないですし、聴衆がセッションに積極的に参加するアメリカならではのものかもしれません。

    しかし、こういった派手な方法でなくとも、例えばスライドばかりでなく聴衆に目線を向けて話したり、一方的に話し続けるのではなくて、時々は聴衆に質問を投げかけたりするなどの方法で会場を巻き込んでいき、聴衆との関係を築く工夫をしていくことが、メッセージを伝える上で重要なことなんだと思います。

    SEPG 2012 NORTH AMERICAサイト
    http://www.sei.cmu.edu/sepg/na/2012/index.cfm