久々のプロセス改善ストーリー、今回は第6回です。CMMIを使ったプロセス改善活動で悩むポイントなどを、初心者向け解説本でよく見かける会話形式の文章で解説していきます。
<登場人物> ()は会話文中の省略形
野比(野)、骨川(骨):プロセス改善グループメンバ
土良(土):CMMIコンサルタント
※過去のお話の詳細と登場人物紹介はバックナンバーを参照下さい↓
http://www.daiwa-computer.co.jp/jp/consulting/mailmagazine/index.html
今回の改善グループの会議では、プロセス改善の必要性をどう説明するかついて話し合っているようです。
第88号:プロセス改善ストーリー:ある新米SEPGの1日(改善の必要性を語る)
2011年07月25日
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プロセス改善ストーリー:ある新米SEPGの1日(改善の必要性を語る)
プロセス改善の必要性を説明する
骨「土良さん、実は先日新しい部署が出来まして、そこにも新プロセスを適用することになったのですが、そこの煙巻部長と服部課長はプロセス改善活動のことを知らないとのことで、改善の必要性やCMMIのことについて説明して欲しいと言われました。どのようなことに注意して説明したら良いでしょうか」
野「骨川さん、この活動を始める際に部課長向けに説明した資料等があれば、それが今回も使えるんじゃないですか?」
骨「それがなあ、野比くん。この活動を始めるキッカケは『とにかくCMMIをとれ!』という社長の鶴の一声だったもんで、あまり現場への説明がないまま今に至っているのが実情なんだよ。現場の人の中には、我々改善グループが何をやってるのか知らない人たちもいるかもしれない」
土「それはいけませんね。プロセス改善活動は一部の人達、すなわち皆さんのような改善推進者だけががんばれば良い活動ではなくて、経営層、現場、改善推進者が三位一体となって全員参加型の意識を持って活動しないとうまくいきません。特に現場メンバの参加意識を高めるためには、直属の管理層である部課長が活動の意味を理解して、牽引役となってもらう必要があります」
骨「たしかにそうですね。これを機会に、管理層向けの説明資料を作成してプロモーションをしていくことにします」
土「では、プロセス改善がなぜ必要かの説明ですが、まずはプロセスの重要性を説明するといいでしょう。
現場では、品質不良やコスト超過、スケジュール遅延等、とにかく様々な問題が起こります。改善の仕組がない組織では、問題解決は人やツールに依存した方法がとられがちですが、目に見える問題は実は表層的なもので、いわば氷山の一角にすぎません。本当の問題はその氷山の下に隠れた"プロセス"にあるのです。
"良い成果は良いプロセスから生まれる"、"プロセスを良くしなければ結果は良くならない"という前提となる考え方があります。
ですから、問題を解決して良い結果を導くためには、プロセスを改善して良いプロセスを組織に根付かせていかないといけません。
・・・といったことを説明してはいかがでしょうか?」
野「なるほど。でもうちは何も問題起きてないから改善は不要だ! という人も中にはいそうですが・・・その質問にはどう返答したらいいですか?」
土「ビジネスは絶えず環境が変化していますから、その場面に応じて最適なプロセスが必要になります。ですから、常にプロセスは継続的に改善していかなければいけません。
あとは、実は問題は起きているのに気付かないという、いわゆる"ゆでガエル現象"が起こっている場合があります」
野「ゆでガエル? 何ですか、それ?」
土「蛙を熱いお湯にいきなり入れると、気付いて逃げだすのですが、ぬるま湯に入れてゆっくりと温度を上げていくと、蛙は気がつかず茹であがってしまうそうです」
野「はあ、なるほど、それは怖いですね・・・。やはりちゃんと説明して、危機意識をしっかり持ってもらう必要がありますね」なぜCMMIに取り組むのかを説明する
野「あと、なぜCMMIなのかということについてはどうでしょうか?世の中にはISOとかいろいろ別のモデルがあるので、詳しい人からは質問が来そうです」
土「CMMIはソフトウェア開発を管理し成功に導くための指針の集大成となるもので、プロジェクト管理やエンジニアリング、プロセス管理など組織的に改善するための枠組みが網羅的に定められています。組織の目的や現状に合わせて、必要な領域を選択して取り組めるのも特徴ですね。
また、世界的なデファクトスタンダードとなっているモデルであることから、取り組んでいる組織が多く、参考となる事例や情報が入手しやすいということもCMMIに取り組むメリットと言えます」
野「なるほど、あとはレベルの概念があるのもCMMIの特徴ですよね。他社との比較ができますし」
土「そうですね、ただ注意したいのは、レベル達成が目的と言うのを前面に出し過ぎるのはよくありません。
前にもお話しましたが、御社のビジネス目標を達成するためにこの活動に取り組んでいますので、現場に役立つものであるということをアピールしましょう。
そのためには、改善を行った際の導入効果を説明すると良いでしょう。
御社での導入効果が示せれば一番いいのですが、それはもう少し先になりますから、一般的に言われている効果の情報を入手して、それを説明することにしましょう。
例えば、見積もりの正確性向上、品質や生産性の向上、社員のモラル向上などが導入効果として良く挙げられます」
野「なるほど、参考になりました」
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<野比のノビノビ日記 ~今日のまとめ~>
今日も土良さんから良いお話が聞けて良かった。今日の話を資料にまとめて説明すれば、あの気難しくていつも嫌々言ってる煙巻部長もうなずいてくれそうな気がするぞ。服部課長はカエルが嫌いらしいから、ゆでガエルの話は効果的かもし
れない。
さて、今日の話を簡単まとめておこう。
・プロセス改善は、経営層、現場、改善推進者が一体となって、全員参加の意識で進める。
・良い成果は良いプロセスから生まれる。問題解決のためには、プロセス改善を行って良いプロセスを根付かせる。
・ゆでガエルにならないよう危機意識を持ち、変化に順応する。
・CMMIはソフトウェア開発を成功に導くための指針の集大成であり、組織的な改善の枠組みが定められた世界的なデファクトスタンダードなモデル。多くの企業が取り組んでいるので、情報が入手しやすいのがメリット。
・取り組みの目的と導入効果をアピールしよう。