プロセス改善ストーリーの第5回です。今回もいつものように、改善活動で悩むポイントなどを、初心者向け解説本でよく見かける会話形式の文章で解説していきます。
<前回までのあらすじ>
CMMIを使ったプロセス改善を進めることになった株式会社フジコソフト。改善グループに配属された野比は、リーダーの骨川、同期の源、そしてリードアプレイザの資格を持つ外部のコンサルタントである土良とともに、ギャップ分析後の改善策の策定を進めてきた。
<登場人物> ()は会話文中の省略形
野比(野)、骨川(骨)、土良(土)
今回の改善グループの会議では、現場の担当者にヒアリングしていくことについて話し合っているようです。
第81号:プロセス改善ストーリー:ある新米SEPGの1日(現場ヒアリング)
2010年12月24日
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プロセス改善ストーリー:ある新米SEPGの1日(現場ヒアリング)
現場ヒアリングのポイント
野「土良さん、今度ソフト開発を行っている現場のリーダークラスのメンバに、検討中の改善策について意見を伺いに行こうと思ってますが、どのようなことに注意したらよろしいですか?
この改善活動の取り組みについて理解を得られなくて、もしかしたら反発をうけるのではないかと、ちょっと心配しています」
土「そうですね、2つポイントを挙げておきましょうか。
1つ目のポイントとしては『何のために行うのか』という目的をしっかり伝えることですね。現場の理解を得るには、今行っている改善活動の目的や目標、そしてどういう効果があるかということを説明して、活動の必要性を認識してもらうことが重要です」
野「改善の目標はたしか前回検討して、プロセス改善計画に明記しましたね。
えーと、『社内のプロセスをより良いものにして、失敗プロジェクトを減らし、顧客の信頼回復と受注増を狙う」、と。なるほど、こういったことを伝えるわけですね。
たしかに、皆昨年のような失敗は繰り返したくないと思ってますから、共感してもらえそうです」
土「全体的な改善活動の目的以外に、実際にヒアリングする対象となる個別の改善策についても、それぞれの目的や効果を説明した方が、より現場の人たちに身近に感じてもらえると思います。具体的には何をヒアリングする予定ですか?」
野「新しく標準化しようとしているコスト見積手法や、プロジェクト計画のテンプレートについてヒアリングしようと思っています。
それぞれの目的や効果は・・・見積手法は、人によってブレの少ない根拠のしっかりした見積をできるようにすること、プロジェクト計画テンプレートは、計画すべき要素の漏れをなくすこととレビューをしやすくすること、などでしょうか」
土「そうですね、そのあたりを説明できると納得してもらいやすいでしょう。
それから、2つ目のポイントとして『現場の目線で』使えるものになっているかどうかを見てもらうということですね。
プロセス改善は現場の人達が自ら主体となって活動していくものであって、改善グループの皆さんはあくまで支援する立場です。
皆さんが検討した結果が押しつけにならないように、現場の人達にとって意味のない項目がないか、使いにくい部分がないか、などの意見をうかがって、誠実な対応ができるように心掛けましょう」
野「なるほど、よく分かりました。教えて頂いたことに気をつけてヒアリングしてきます」支援の度合いも臨機応変に
翌週、野比が骨川に報告をしています。
ヒアリングの結果を伝えているようです。
野「骨川さん、先週、出来杉さんと郷田さんの2名のプロジェクトリーダへヒアリングしてきました。
出来杉さんとは初顔合わせなのですが、改善活動の目的について比較的すぐ理解を示して頂けまして、各改善策についても概ね了承頂き、いくつかご意見を伺いましたが、どれも改善策をより良くするための有意義なご意見でした」
骨「それはよかった」
野「でも郷田さんの方は、『時間がないし、必要性を感じないからできない、野比のくせに生意気だ』と、最初はとりあってくれませんでした。
理由を聞くと、プロジェクト計画の作成は別のやり方でずっとやってきたからいまさら変えたくないとのことでした。
郷田さんは開発部の時の先輩でして、あまり強く出られなかったのですが、土良さんの言っていたことを思い出して、より積極的に支援していこうと考えました。郷田さんのプロジェクト計画をお預かりして、新しい計画テンプレートと比べて不足する要素を追加する提案をしました。また、必要に応じて改善グループで作成も支援する旨を伝えて、なんとか了承頂けました」
骨「うん、ご苦労さん。相手によっても支援の度合いは変わるだろうし、何より納得して進めてもらう事が大事だしな。しっかり支援していこう」
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<野比のノビノビ日記 ~今日のまとめ~>
今回は、初めて会う人や先輩にヒアリングしに行ったりと、ちょと緊張したなー。作ったテンプレートはまだ改善グループの持ち物みたいになってるけど、ゆくゆくは現場の持ち物として使ってもらわないとね。
郷田さんから、「オマエのものはオレのもの」と言われたら合格かな?
さて、今日の話をまとめておこう。
・何のために改善活動を行うのか、各テンプレートの目的や効果が何なのかを現場にも理解してもらい、必要性を認識してもらう
・改善活動の主体は現場。改善グループは改善策が押しつけにならないよう真摯な対応を行い、現場が納得して進められるよう支援する。