メルマガ
バックナンバー

第208号:CMMIを使って誰がうれしいかを考える

2021年07月21日

  • CMMIを使って誰がうれしいかを考える

    6月29日にSPI意見交換会というイベントを2年ぶりに実施しました。
    https://www.daiwa-computer.co.jp/jp/consulting/seminar/evc

    ご参加いただきました皆様、ありがとうございました。初のリモート開催ということで段取りがうまくいくか心配しておりましたが、おおむね皆様に満足いただけたようでしたのでホッとしております。集合研修では集まることが難しい遠方の方にも今回はご参加いただけまして、リモート開催の良さを実感しました。

    さて、このイベントではプロセス改善に関する困っていることや相談したいことなどを挙げてもらって参加者同士で議論をするのですが、今回扱ったテーマのひとつに「CMMIの効果的な使い方」という、このメルマガで取り上げるのに良さそうなテーマがありましたので、少し掘り下げてみようと思います。

    CMMIのアプレイザルでレベル達成はしたものの、うまく使いこなせないプロセス実装を進めてしまい、開発現場ではCMMIをやってよかったという実感までいたっていない状況で、どうやったら効果を実感できるようになるか、というCMMI導入組織で陥りがちなテーマです。

    このテーマに対して参加者から共感する声やいくつか対応事例の意見が出ましたが、その中で「CMMIを使って誰がうれしいかを考えるのがポイント」という話が出ました。

    上位層の「CMMIのレベルを取れ」というニーズから出発すると、それに見合ったプロセスになりがちなので、管理しやすくなった上位層や、外部アピールができるようになった営業職はうれしいかもしれないが、そのために負荷が高くなったプロセスを実施する現場はうれしくないかもしれない。現場がうれしくなるためには、現場のための改善目標を定め、改善推進役のSEPGが現場を見ながら進めるとよいだろう、ということでした。

    誰がうれしいかというのはプロセス改善では結構重要かと思います。近江商人の「売り手よし・買い手よし・世間よし」の三方よしの言葉をもじって、プロセス改善の世界では、「QCD三方よし」とか「顧客・会社・現場三方よし」といった言葉があります。

    顧客、会社、開発現場の一部だけが得をして、他が損したり負荷が高くなったりするのはうれしい状態ではないので、三方がよくなるようにプロセスのバランスを考えていきたいところです。

    CMMIを導入すると、プラクティスに書いてあることをそのまま実施して重たいプロセスになってしまうことはよくあります。自分たちに合うようにプラクティスを解釈し、現場もうれしくなるようなプロセス実装方法を考えるのがポイントでしょう。

    開発現場がうれしくなる改善としては、例えば設計や開発の参考となる事例やサンプルを展開してイチから作業しなくて済むようにしたり、無駄な工数の削減や期間の短縮ができるように現状の仕組みを簡素化したり、といったことなどがあるかと思います。

    これまで弊社へのプロセス改善支援業務のご依頼は、CMMIのレベル達成を確実にするためのプロセスの標準化や品質強化の観点のものが多かったのですが、近年はプロセスの簡素化を一緒に考えて欲しい、というのも出てきています。

    大規模プロジェクトでの実装を想定して重たくなってしまったプロセスを、簡素化可能なところを見極めて、現状の品質は維持しつつ軽いプロセスになるように改善し、文書量や管理工数削減を目指します。予算や導入技術の壁はあるかもしれませんが、最近ですとRPAなどを導入してプロセスの自動化を進め、無駄な手作業を削減させる改善も一つの方法かと思います。

    また、ボトムアップアプローチとして、現場主導でCMMIの理解を深め、使い方の工夫をしていく活動も効果があるかと思います。

    数年前の事例ですが、弊社のある部門でCMMIの勉強会を現場主導で企画して実施したことがありました。参加者は担当のCMMIのプロセス領域が割り振られ、担当分の範囲についてモデルを自習で読み込み、勉強会当日はプラクティスの解釈やメリット、プロジェクトでの実施方法を発表するという形式のものです。

    それだけだとよくある勉強会と同じですが、ここでは「どういう工夫をすれば自分のプロジェクトで楽に実施できるか」の観点で検討がなされていました。CMMIの理解も深まり、楽に実施できる方法も身につけられるので現場もうれしいし、現場が成果を出せれば会社も顧客もうれしいということで、実によい勉強会だったなと当時は思いました。

    CMMIの導入効果がうまく出てないなと感じたら、誰にとってうれしい状態になればよいのかをあらためて考えると、答えが見えてくるかもしれません。