最近、「CMMIのレベル達成は目的にしないが、業界標準のモノサシであるCMMIで現状の組織のプロセスを評価し、改善に結びつけたい」といったお問合せをいただくことが増えております。
世界的にはCMMIは広がりを見せており、中国を中心に年々アプレイザル数は増加傾向にありますが、日本国内ではアプレイザルでのレベル達成より、CMMIを自社の改善や人材育成のためにツールとして利用したい、というニーズが増えているのでしょう。それもCMMIの一つの使い方なのだと思います。
しかし、レベル達成を目的にする場合と比べ、CMMIのどの範囲を対象に取り組むのかわかりにくいのか、どういったアプローチで取り組むべきかとか、どのPAを対象に実施していったらよいか、といったご相談をいただくことがあります。
※PA=V2.0の場合はプラクティス領域、V1.3の場合はプロセス領域
今回は、レベル達成ではなく純粋に改善を目的にCMMIを利用する場合、対象のPAをどのように選んでいくのかについて、いくつかの方法をご紹介いたします。
第194号:どのプラクティス領域を対象に改善を進めるか
2020年05月25日
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どのプラクティス領域を対象に改善を進めるか
表現形式を選択する
このメルマガ読者にはご存知の方も多いと思いますが、CMMIには段階表現と連続表現という2つのプロセス改善のアプローチがありますので、あらためてご紹介します。
段階表現は、成熟度レベルごとに対象とするPAが決まります。どこから手をつけて良いかわからない場合や、順番に改善を進めたい場合は、段階表現のアプローチで進めるのがよいです。
連続表現は、組織の課題や目標に応じて、柔軟にPAや取り組むレベルを選択することができます。改善すべきプロセスや、CMMIのPAの関連性を把握できている場合は、連続表現アプローチで進めるのがよいでしょう。
詳しく知りたい方は、弊社のHPにて2つの表現形式を解説しておりますので、よろしければご参照ください。
https://www.daiwa-computer.co.jp/jp/consulting/cmmi-representation
実はこの段階表現、連続表現といった表現形式はCMMI V1.3までのもので、V2.0では用語自体が削除されております。とはいえ、V2.0では成熟度レベルは事前定義されたモデルビューにて対象となるPAが決まりますし、能力度レベルは組織の課題や目標に応じて柔軟にPAや取り組むレベルを選択しますので、表現形式の考え方は形を変えて残っております。適用と移行ガイドを参考にする
自分たちに合うPAを選択して活動を進めたいけど、どれを選ぶかピンと来ない方は、CMMI Instituteが無料で公開しているCMMI V2.0 適用と移行ガイドの中で、PA選択のポイントが紹介されていますので、そちらが参考になると思います。
CMMI Adoption and Transition Guidance
https://tinyurl.com/yahta4od
※ダウンロードするにはCMMI Instituteサイトのユーザー登録が必要です。
このガイドのステップ2 ESTABLISH OBJECTIVES(目標の確立)では、目標からPAを選択する流れが紹介されています。
1.事業の成功に最も重要な目標を特定する
2.その目標を元に実績を改善する目標を設定し、優先づけする
3.その改善目標に関連するCMMIのPAに狙いを定める
さらに、適用と移行ガイドのAppendix Cでは、一般的なビジネス上の問題、その原因、およびそれらを改善するのに役立つと思われるPAの例がまとめられていますので、その一部をご紹介します。こういった例が20ケースほど挙げられていますので、皆さんの組織が抱える問題と照らし合わせると、取り組むべきPAの参考にできるでしょう。
さらに、適用と移行ガイドのAppendix Cでは、一般的なビジネス上の問題、その原因、およびそれらを改善するのに役立つと思われるPAの例が20ケースほどまとめられていますので、その一部をご紹介します。皆さんの組織が抱える問題と照らし合わせると、取り組むべきPAが見つかるかもしれません。
【問題】ソリューション(成果物やサービス)にコストがかかっている
【原因】見積や計画が不十分
金メッキされている(過剰である)
多すぎるリワーク
影響を理解せずに多くの変更や作業を受け入れてしまっている
顧客ニーズの把握不足
【役立つと思われるPA】
見積もり(EST)、計画(PLAN)、監視と制御(MC)、
要件の開発と管理(RDM)、リスクと機会の管理(RSK)、
構成管理(CM)、決定分析と解決(DAR)
【問題】低い生産性
【原因】明確で反復可能なプロセスの欠如
トレーニング不足
説明責任が弱い
不十分なインフラ
【役立つと思われるPA】
見積もり(EST)、計画(PLAN)、組織トレーニング(OT)、
統治(GOV)、実装のインフラ(II)専門家に相談する
上記のような方法で自分自身で対象PAを選ぶことが難しい場合は、やはりCMMIの専門家に相談してみるのが早道でしょう。
適用と移行ガイド Appendix Dでは、CMMI Instituteのパートナー企業や個人がCMMIサービスを提供していることや、そのアクセス方法が紹介されていますので、幅広く専門家を探す場合はこちらを見てみるとよいでしょう。
もちろん、弊社でもCMMIのご相談はいつでも受け付けておりますので、どこからプロセス改善を進めたらよいか不安な場合はいつでもご連絡ください。