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第158号:CMMIの新バージョンの情報

2017年05月25日

  • CMMIの新バージョンの情報

    CMMIモデルの次のバージョンであるCMMI V2.0の情報をお知らせします。

    これまでCMMIの新バージョンはThe Next Generation(TNG)と呼称されておりましたが、先月からCMMI V2.0という名称に正式に決まりました。

    5/17~18にバージニア州アレキサンドリアで行われたCMMI Partner Workshopにて、現時点でのモデルの変更点や開発状況などの様々な説明がありましたので、CMMIユーザーの皆さんにとって役立ちそうな情報をかいつまんでご紹介します。

    1.モデルの統合

    CMM/Iは、開発(DEV)、サービス(SVC)、取得(ACQ)、ピープル(P-CMM)、セキュリティ(CMMI for Security)などの種類がありますが、CMMI V2.0ではこれらがすべて統合されて一つのモデルになります。
     
    もちろんこの全てを行う必要はなく、CMMIを使う組織は自分たちに必要なものをモデルから選択して利用していくことになります。

    2.プロセス領域→プラクティス領域へ

    CMMIは実装すべき一連のプロセスではなくベストプラクティスの集まりであることを強調するため、V2.0ではプロセス領域(Process Area)のことをプラクティス領域(Practice Area)と呼称することになりました。
     
    プラクティス領域の一覧は後述します。オプションも含めると、プラクティス領域は全部で40個あります。
     
    プラクティス領域内の各プラクティスは、固有ゴールの代わりにプラクティスグループ(レベル1~5)で整理されます。
     
    Practice Area ┬ Level 1 ─ Practice 1.1、1.2、・・・1.x
           :
           └ Level n - Practice n.1、n.2、・・・n.y
     
    例えば、Estimation(EST)プラクティス領域は、以下のような構成になります。

    Level 1
     1.1 Develop a rough order of magnitude estimate.
    Level 2
     2.1 Develop and keep updated the scope of what is being estimated.
     2.2 Develop and keep updated estimates for the size and complexity of the solution.
     2.3 Based on size, derive estimates for the effort and cost for the solution.
     2.4 Record rationale for the estimates.
    Level 3
     3.1 Develop, keep updated, and use a recorded estimation method.
     3.2 Use the organizational measurement repository and process assets for estimating work.
     
    現行のCMMI V1.3までは、ゴールが「必要とされる」構成要素(いわゆる要求事項)、プラクティスが「期待される」構成要素、サブプラティスや作業成果物の例などが「参考」の構成要素に割り当てられていましたが、V2.0では、プラクティスが「必要とされる」構成要素となり、「期待される」構成要素は削除されました。
     
    プラクティスが「必要とされる」構成要素なので、アプレイザルでは対象とするレベルのプラクティスはすべて満たす必要があります。たとえば上記のEstimationの場合、成熟度レベル2では1.1~2.4が、成熟度レベル3では3.2までが評価対象になります。

    3.共通プラクティスの置き換え

    モデルの複雑さを減らし、理解と実装のしやすさを向上させるため、共通プラクティスは、Governance(GOV)とImplementation Infrastructure(II)の2つのプラクティス領域に置き換えられました。
     
    その結果、モデル全体のプラクティス数は3分の1ほどに削減されました。
    (1252個→404個。オプションは除く)

    4.パフォーマンス重視

    CMMI V2.0では、パフォーマンスを重視するコンセプトが加わりました。
     
    初期のモデルベース改善活動では、標準化してアプレイザルを行ってレベル達成したかどうかを判定するところまではやったけど、その結果何が良くなったかは不明、ということがよくあります。そうではなく、改善活動を通してどのような成果があったかもちゃんと見るようにしましょう、ということがCMMI V2.0では重視されるようになります。
     
    具体的には、
    ・Managing Performance and Measurement(MPM)という、測定と分析(MA)を拡張したプラクティス領域でパフォーマンスを評価および管理していくこと
    ・レベル判定を行うBenchmarkアプレイザルにおいて、組織はスポンサーにパフォーマンス報告書を提出するといったことを行っていく必要があるようです。

    5.実装のガイド

    CMMI V2.0の実装をうまく進めるために、以下の2つのガイドが発行されるようです。
    ・継続的改善のためのCMMI実装
    ・移行のためのガイド
     
    現行のCMMIユーザーにとっては、移行のガイドは役立ちそうですね。

    6.アプレイザル手法の変更

    今回のWorkshopでV2.0のアプレイザル手法の変更点の説明がありましたが、まだ概要レベルで不明点も多いので、分かったことだけご紹介します。
     
    アプレイザルの信頼性とトータルコスト削減のため、アプレイザルの体系が以下の3種類に変更になるようです。
    1.Benchmark :レベル判定を行うSCAMPI Aを置き換え
    2.Non-Benchmark :レベル判定を行わないSCAMPI B、C手法を統合
    3.Sustainment :レベル達成済み組織向けの維持のためのアプレイザル
     
    Benchmarkアプレイザルで、影響が大きそうな変更点を挙げておきます。
    ・有効期間が3年から2年に短縮
    ・評定を実施する際は、開始の60日前にCMMI研究所に知らせる(今は30日)
    ・プロジェクト最少サンプリング数は、組織単位内のプロジェクト数より決定
     1-10件→1件、11-40→2件、40件超→3件選出
    ・サンプリングやデータカバレッジのルールが変更。V1.3では、サブグループ内の1プロジェクトはすべてのプロセス領域を評価する必要があったが、一部のプラクティス領域を複数のプロジェクトで評価する形式に変更になる。ただし、評価対象のプラクティス領域やカテゴリはランダムに割り当てられる。

    7.今後のリリース予定

    2017年7月
     リリース3(DEV) コミュニティレビュー
    2017年8月
     実装と移行のガイド コミュニティレビュー
    2017年10月
     リリース4(SVC/SM/People) コミュニティレビュー
     EXCLUSIVE INSTRUCTOR CMMI V2.0 Upgrade Offer
    2017年11-12月
     CMMI V2.0 Upgrade Training(リードアプレイザやインストラクタ向け)
     CMMI V2.0 Instructor Workshop
    2017年12月
     モデルと手法の完成
    2018年1月
     CMMI V2.0 リリース
     各種新トレーニングコース開始
     アップグレード、入門コース、新インストラクタトレーニング
    2018年2月
     新リードアプレイザトレーニング開始
    2018年7月
     CMMI V2.0 アプレイザル受付開始
      ※ここからすべてのアプレイザルの有効期限は2年になる
    2019年12月31日
     CMMI V1.3のアプレイザル受付終了 ※日本の場合はどうなるか未定

    2018年1月には、CMMI V2.0モデルが使えるようになるようです。既存のV1.3も2年間(~2019年12月)は使えますので、この期間にV2.0にじっくり備えていくと良いでしょう。

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    最後に、現時点でのプラクティス領域の一覧と、変更点概要を以下にまとめておきます。

    <CMMI V2.0 プラクティス領域一覧>
    ※数字は最大Level、日本語訳は仮訳です

    ■コア プラクティス領域
    ・Estimating (EST) 3 : 見積り
    ・Planning (PLAN) 4 : 計画策定
    ・Monitor and Control (MC) 3 : 監視と制御
    ・Risk Management (RSKM) 3 :リスク管理
    ・Causal Analysis and Resolution (CAR) 5 :原因分析と解決
    ・Decision Analysis and Resolution (DAR) 3 :決定分析と解決
    ・Configuration Management (CM) 2 : 構成管理
    ・Managing Performance and Measurement (MPM) 5 : 実績と測定の管理
    ・Process Management (PM) 3 : プロセス管理
    ・Process Asset Development (PAD) 3 :プロセス資産開発
    ・Requirements Development and Maintenance (RDM) 3 : 要件開発と保守
    ・Process Quality Assurance (PQA) 3 : プロセス品質保証
    ・Verification and Validation (VV) 3 : 検証と妥当性確認
    ・Peer Reviews (PR) 3 : ピアレビュー
    ・Organizational Training (OT) 3 : 組織トレーニング
    ・Governance (GOV) 4 : ガバナンス
    ・Implementation Infrastructure (II) 3 : 実装のインフラストラクチャ

    ■CMMI-DEV(開発)のプラクティス領域
    ・Technical Solution (TS) 3 : 技術解
    ・Product Integration (PI) 3 : 成果物統合

    ■CMMI-SVC(サービス)のプラクティス領域
    ・Service Delivery (SD) 2 : サービス提供
    ・Service System Transition (SST) 3 : サービスシステム移行
    ・Strategic Service Management (STSM) 3 : 戦略的サービス管理
    ・Incident Resolution and Prevention (IRP) 3 : インシデントの解決と予防
    ・Capacity and Availability Management (CAM) 3 : キャパシティと可用性の管理
    ・Continuity (CONT) 3 : 継続

    ■CMMI-SM(供給者管理)のプラクティス領域
    ・Agreement Management (AGRM) 3 : 合意管理
    ・Acquisition Technical Management (ATM) 3 : 取得技術管理
    ・Solicitation and Supplier Agreement Development(SSAD) 3 : 勧誘と供給者合意開発

    ■CMM-P/WFM(ピープル/ワークフォース管理)のプラクティス領域
    ・Compensation and Rewards (COMP) 3 : 保証と褒章
    ・Staffing and Workforce Management (SWM) 3 : 人員配置とワークフォースの管理
    ・Career and Competency Development (CCD) 5 : キャリアとコンピテンシーの開発
    ・Empowered Work Groups (EWG) 3 : 権限付与作業グループ
    ・Communication and Coordination (COCO) 3 :意思疎通と調整

    ■その他のオプションのプラクティス領域
    ・Safety (2 optional practice areas) : 安全性
    ・Security (5 optional practice areas) : セキュリティ

    <V1.3からの主な変更点>
    ・要件開発(RD)と要件管理(REQM)は、要件開発と保守(RDM)に統合
    ・検証(VER)と妥当性確認(VAL)は、検証と妥当性確認(VV)に統合
    ・検証(VER)からピアレビューのゴールが分割され、ピアレビュー(PR)が新設
    ・プロジェクト計画策定(PP)が、見積り(EST)と計画策定(PLN)に分割
    ・プロジェクトの監視と制御(PMC)は、監視と制御(MC)に変更
    ・統合プロジェクト管理(IPM)のプラクティスは、EST、PLN、MCに分配
    ・測定と分析(MA)は、パフォーマンス管理を重視してレベル5までのプラクティスを含む実績と測定の管理(MPM)に変更
    ・成熟度レベル5のプロセス領域だった原因分析と解決(CAR)は、レベル3、4でも評価対象のプロセス領域になる
    ・プロセス品質保証(PQA)に、レベル3のプラクティスが追加
    ・組織プロセス重視(OPF)はプロセス管理(PM)に変更
    ・組織プロセス定義(OPD)はプロセス資産開発(PAD)に変更
    ・供給者合意管理(SAM)はCMMI-SMのプラクティス領域に統合された形だが、CMMI-DEVの場合の取り扱い方はまだ調整中
    ・共通プラクティス(GP)は、ガバナンス(GOV)と実装のインフラストラクチャ(II)に置き換え
    ・オプションで安全性(Safty)、セキュリティ(Security)のプラクティス領域が選択可能

    以上です。なお、CMMI V2.0はまだ開発途中のため、今回ご紹介した内容は変更になる可能性がありますので、ご注意ください。