あなたの所属する組織でプロセス改善に関わる人たちの年齢層は高めですか?それとも若手が多いですか?
日経コンピュータ2018/8/16号と日経SYSTEMS2018/9号の両誌に「シニアSE」に関する特集が組まれていました。
IT業界は人手不足が深刻化し、エンジニア35歳定年説は今や昔、45歳以上のシニアSEが主流になりつつあり、さらに60歳以上の雇用方法も見直しが進み、生涯現役をつらぬく人も増えつつあるとのこと。
記事では、シニアSEが抱える不安や働き方、年齢差別の乗り越え方などが紹介されておりました。
組織のプロセス改善の推進役であるSEPGには、ソフトウェア開発業務の第一線を退いた年齢層が高めの「シニアSEPG」の方も多い印象がありますが、そんな方にも参考になりそうな記事だと思いました。
私が特に興味を持ったのは、人間が持つという以下の2種類の能力についてです。
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◆結晶性能力
・過去の経験・知識が土台になる専門的または個人的な能力。
・判断力、説明力、長年従事してきた業務を手順通りに作業する力など。
・60歳頃まで徐々に高まり、その後なだらかに低下。80歳まで高まる人もいる。
◆流動性能力
・新しい場面への適応に必要な能力。
・推論する力、思考力、暗記力、計算力等。
・30代でピークに達する。60歳頃までは維持され、その後急速に低下する。
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シニア世代が「新しい技術についていけない」と感じるのは、年齢による流動性能力の低下によるものなので、シニアが活躍するには、今までの知識や経験をもとにした結晶性能力を活かしていくのが良いとのこと。
この点、シニアSEPGはまさに結晶性能力が活かしやすい仕事だと言えるでしょう。
実際、60歳を超えてもエネルギッシュに活躍されているSEPGの方を見かけますが、結晶性能力がしっかり活かされているのだと思います。
自己の豊富な知識や経験をもとに、語彙力や文章力を駆使して組織の標準プロセスを分かりやすく記述したり、判断力や指導力を発揮して、所属する改善グループのメンバや現場の開発メンバを適切に導いたりしてます。
反面、新しい知識を仕入れることに消極的だったり、若手と比べるとPCやスマホ、タブレットの操作に難儀するシーンも見かけますので、これは流動性能力が落ちてきているのが原因なのかなと感じます。
しかし、SEPGが学習すべき範囲は広く、深いので、流動性能力も必要になります。
なので例え年齢を重ねても、常に積極的に新しい知識や技術は身につけていく姿勢が重要になるのですが、その一方で、すべてを自分でやるのではなく、不得意なところは若手に任せるという姿勢も大切になってくると思います。
うまくプロセス改善を回している組織では、若手は流動性能力を活かして新しい分野の技術やトレンドを取り入れて改善を推進し、シニアは結晶性能力を活かして従来の知識や経験を若手に伝承していく動きが出来ていると思います。
それぞれの得意・不得意を考慮してうまく役割分担することで、シナジー効果が発揮され、改善活動が活性化することが期待できます。
ところで、「10年前くらいまでは自社でCMMIを使って改善を進めてたけど、最近は使ってない。
しかし品質改善は進めたいので、再度CMMIを使用していきたい」という声を聞くことがあります。
そういった組織では、シニア世代にはCMMIの知識や経験はあるが、若手世代は持っていないことになります。
組織の標準プロセスもCMMIベースで作成されている場合、その背景を知らない若手から「なぜ標準でこのように表現されているか意図が分からない」という声が出てきます。
そのようなケースでは、シニア世代と若手がその背景を共有するため、再びCMMIを組織の共通の知識として活用することが考えられます。例えば、CMMIのセミナーを社内で開催するなりして、シニアの結晶化された知識や経験を、若手に伝承していってみてはいかがでしょうか。
私も「あの人の話、何言ってるか分からないよね。老害だよね」と言われないように、CMMIをより多くの人に正しく伝えていけるようがんばっていきたいと思います。
第174号:シニアSEPGと結晶性能力:CMMIの伝承について考える
2018年09月25日
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01シニアSEPGと結晶性能力:CMMIの伝承について考える
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02CMMI V2.0の続報
クイックリファレンスガイド、採用と移行ガイド、V1.3→V2.0マッピングが、
8月より無料でダウンロードできるようになりました。
今まで有料だったのでCMMI V2.0の入手を躊躇していたとか、V2.0のプラクティ
スをまだ見たことがないという人は、是非ダウンロードしてみてみましょう。
ダウンロードするには、先にCMMI研究所のサイトに登録が必要です。
https://cmmiinstitute.com/
登録後、CMMI研究所サイトにログインし、Resource→Browse All Resources と
選択すると、リソースセンターにアクセスできます。
Resource Type欄で Model PDF にチェックをつけると、モデル関連に情報が絞り
込まれますので、目的のものが見つかるはずです。
今回ご紹介した資料のリンク先はこちらです。
CMMI V2.0 Quick Reference Guide
https://tinyurl.com/y8baulgb
CMMI V2.0 Adoption and Transition Guidance
https://tinyurl.com/yahta4od
CMMI V2.0 to V1.3 Practice Mapping
https://tinyurl.com/yd2e6mlt
また、英語版のほかに、中国語版もダウンロードできるようになりました。
以下は中国語版のクイックリファレンスガイド(快速参考指南)です。
https://tinyurl.com/yart3jsn
中国語は分からないけどCMMIのプラクティスなら多少分かるぞという方は、この
ガイドを中国語の勉強のきっかけにできるかもしれません。私もちょっと興味が
湧いてきました。
今月のメルマガは以上です。再見!