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第150号:これからはPDCAじゃなくてOODA?

2016年09月23日

  • これからはPDCAじゃなくてOODA?

    皆さんの会社では、PDCAの改善サイクルをうまく回せていますか?

    当メルマガ読者にとってPDCAはお馴染みの用語かとは思いますが、一応説明しますと、PDCAとはPlan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Act(改善)の4段階を繰り返すことによって業務を継続的に改善する手法のことですね。
    組織や個人の目標管理、プロジェクト運営、改善施策の遂行、人材育成等、様々な業務にPDCAサイクルが活用されていることかと思います。

    そんなPDCAサイクルですが、うまく回せていないケースも時々見かけます。
    たとえば以下のようなケースです。

    ・トップダウン指示による現実的でない計画策定
    ・目標達成のプレッシャーによる不正や手抜き、帳尻合わせ
    ・担当者意識の欠如による計画不履行
    ・状況の変化に応じて臨機応変な計画変更ができていない
    ・検証・是正の不十分さに起因する同じ失敗の繰り返し

    このような問題が発生するのは、まず第一にPDCAの使い方自体に問題があるのだと思いますが、著しく環境が変化するこの時代では、前提や情報の不足によって妥当な計画が立てづらい、想定外の予期せぬことが常に発生するので対応が困難であるなど、最初に計画(Plan)を立てることが前提のPDCAは、そのコンセプトからして適用が難しくなってきている、という声があります。

    問題を解決する良い方法がないかいろいろ調べてみたところ、近年ではPDCAに変わる考え方として、OODAというものが出てきているようですので、今回はそれをご紹介します。

    OODAとは

    OODAは、米軍の機動戦において採用されている意思決定プロセスのことです。
    「ウーダ」、または「オーオーディーエー」と発音します。

    米国空軍パイロットのジョン・ボイド氏が、空中戦で優れたパイロットが行っている思考法や、孫子の兵法、トヨタ経営方式などを参考に開発しました。

    昔の米軍では、十分な兵力や装備を用意し、事前の計画を重視して敵を倒す「消耗戦」という戦い方が用いられていましたが、近年の米軍では、現場の兵士による臨機応変さを重視して敵の弱みをついて戦う「機動戦」という戦い方が採用されているとのこと。

    その機動戦で重要な考え方がOODAであり、観察、方向付け、決心、実行の4つのステップを繰り返していくのがOODAループになります。

     Observe :観察、監視
     Orient :方向付け、情勢判断
     Decide :決心、意思決定
     Act :実行、行動

    PDCAは自らの計画(Plan)から始まりますが、OODAはまずは相手をよく観察(Observe)してその出方をうかがうところから始まります。

    次に、観察して得られた情報や過去の経験、知識などを元に直観で判断し、どう行動すべきかの方向付け(Orient)をします。

    その判断結果を元に行動を起こすと決心(Decide)し、実行(Act)に移していきます。
    途中でに新たな情報が見出されれば、また観察に戻り、OODAのループを回していきます。

    OODAをどう使っていくか

    OODAループをドッグファイト中のパイロットの例で説明すると、飛行中に現れた敵機の種類や位置を観察(Observe)し、観察で得られた情報からどう動くか判断(Orient)・決心(Decide)し、操縦桿を動かして相手よりも優位な位置に移動する(Act)、といった感じです。

    ソフトウェア開発やプロセス改善の環境下では、たとえばいつも無理難題を言ってきたり、要望がコロコロ変わったりする相手との打合せの場で、相手の言うことに耳を傾け、要望の背景や意図を聞き出し(Observe)、現状のQCDの制約の中で可能な打ち手をその場で自ら考えて、あるいは日をあらためて有識者に確認して方向性を見定め(Orient)、要望に応えられる代案を提示するなどやることを決定(Decide)し、実行に移していく、といった活動が近いでしょうか。

    このように、OODAでは活動の現場にいる人たちが自主的かつ臨機応変に動いていくことが基本の考え方になりますが、戦場での機動戦においては、上官が「ミッションコマンド」、「クリティカルインテリジェンス」というサポートをすることで、さらに効果を発揮させるようです。

    「ミッションコマンド」とは、上官から示される作戦の大枠のことで、作戦の意図や目的(Why)、どんな勝利を目指すか(What)を明確にします。
    あくまで大枠を示すのみで、具体的にどのように達成するかは現場での判断に任せます。

    「クリティカルインテリジェンス」とは、兵士の判断や行動に活かすための情報のことです。
    これを作戦開始前や作戦行動中に通信で伝達することで、現場が動きやすくなります。
    「情報」を英訳するとInformationですが、単なる情報ではなく、判断・行動に役立つように加工や統合、分析した情報がIntelligenceと呼ばれるようです。
    CMMIでいうと、測定と分析(MA)のSP2.1測定データの収集にて集めた情報がInformation、SP2.2で分析し解釈した結果がIntelligenceとに該当するのではないかと思います。

    OODAはPDCAを置き換えることができるのか

    OODAは、組織のメンバが自ら考えて臨機応変に動いていき、業務を効果的に遂行して成功を収めていくためにはとても有効な考え方だと思います。

    先が予測しづらい世の中になってきているので、これからはPDCAからOODAへ考え方をシフトしていくべきだろうという声も今回調べた中ではちらほらあったのですが、個人的には今すぐPDCAサイクルをやめてOODAへ置き換えていくのは難しいだろうと感じています。

    PDCAは日本国内の企業で広く採用され、改善の文化として根付いてきていますので、やめることはないでしょう。
    特に多くの人が関与する大企業や、目標達成の約束を株主に強く求められる上場企業などでは、PDCAの考え方は必須でしょう。

    PDCAとOODAは状況に応じて使い分ける、またはうまく組み合わせて使っていくのが最善の策のように思います。

    たとえば、トップダウンで必達の数値目標や期限が設定されている施策、想定外が起こりにくい施策については、使い方に注意しつつ、PDCAで実施することになるでしょう。

    大枠のミッションだけが存在していて、詳細は現場の担当者にて都度決めていくやり方をする場合や、ニーズが変化しやすく想定外のことが起こりやすい場合などは、OODAの進め方が合うのではないでしょうか。

    また、PDCAのDo(実行)で、現場の担当者がOODAの考え方で実行していく、というのが、両方のいいところを活かす良いやり方なのではと思いました。

    これから自分が担当している業務でDoするときには、OODAの観点で動いていこうかなと思います。

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    参考文献
    【書名】米軍式 人を動かすマネジメント
        「先の見えない戦い」を勝ち抜くD-OODA経営
    【著者】田中 靖浩
    【出版社】日本経済新聞出版社
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