5月12日と13日の2日間、ワシントン州シアトルにて行われたCMMI GlobalCongress 2015に参加してきました。
CMMI Global Congressは、CMMI Instituteが主催するプロセス改善のカンファレンスです。
先月の当メルマガでも紹介がありましたが、1988年から開催されてきたSEPGカンファレンスが今年から名称が変更されたもので、いろいろな国からプロセス改善に関わる人達が集まり、研究成果を発表したり、意見交換を行ったり、親交を深めたりします。
CMMI Global Congress 2015
http://cmmiconferences.com/globalcongress2015/global-congress-agenda/
2日間で行われたセッションの総数は昨年度よりも減ってしまい、ボリューム的には若干物足りなさを感じましたが、今年もリードアプレイザやインストラクタ向けのWorkshopが、続く14日と15日に行われたため、日本からも多くの方が参加しており、たくさん情報交換することができました。
現地でお世話になった方々、今年もありがとうございました。
セッションの種類としては、近年増えつつあるCMMI-SVCやアジャイルの適用事例のほか、ソフトウェアメトリクスや統計などの定量的管理を扱ったテーマなどがありましたが、目新しいテーマとして、近年CMMI Instititeが力を入れているデータマネジメントのモデルのDMM(Data Management Maturity)に関するセッションがいくつか見受けられたのが興味深かったです。
DMMは、データマネジメントのベストプラクティスをCMMI Instituteがフレームワークとしてまとめたもので、2014年8月にリリースされました。
CMMIと似た構造を持っており、レベルが5段階、25のプロセス領域、329のプラクティスを含んでいます。
まだ新しいモデルということで、紹介されていた事例も少なめですが、近年はビッグデータの処理やデータの品質およびセキュリティ確保というのはますます重要度合を増してきていますので、DMMはこれから広まりを見せる可能性を感じました。
DMMの詳細については、また改めて当メルマガででもご紹介ができたらなと思います。
さて、個人的に興味深かったセッションを一つご紹介します。
第134号:組織の能力を向上させる12の質問 - CMMI Global Congress 2015レポート
2015年05月25日
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組織の能力を向上させる12の質問 - CMMI Global Congress 2015レポート
12 Questions of Wildly Successful Companies
Broadsword社のJeff Dalton氏によるキーノートスピーチで、成功する企業となるための能力を向上させる12の質問が紹介されました。
1. Who are we?(我々は誰か?) ※ビジョン、価値、期待等
2. How will we behave?(どうふるまうべきか?) ※日々の作業、技法等
3. What will we need?(何が必要か?) ※必要なリソース
4. What parts do we play?(何を演じるか?) ※役割等
5. How will we learn?(どのように学ぶか)
6. How do we manage information?(情報をどのように管理するか?)
7. How will we collaborate?(どのように協力するか?)
8. So what, who cares?(だから何? 誰が気にするのか?)
9. Where do we get feedback?(どこでフィードバックを得るのか?)
10. Who do we share information with?(誰が情報を共有するのか?)
11. How do we adapt?(どのように適用するのか?)
12. How do we improve?(どのように改善するのか?)
Dalton氏はアジャイルとCMMIを融合させることの第一人者で、同カンファレンスでも毎年スピーカーとして登壇されており、いつもユニークかつ分かりやすいプレゼンをされるので今年も楽しみにしていました。
今回も聴講者を飽きさせない魅力的な発表をされてました。
CMMIに詳しい読者の方はピンときたかもしれませんが、上記の質問はCMMIの共通プラクティスGP2.1~3.2の12個を、Dalton氏なりのシンプルな表現で言い換えたものです。
Dalton氏は若い頃から楽器演奏を嗜んでこられたようで、自身がギター演奏している写真などがスライドで紹介されてましたが、プレゼンではそれぞれの質問に対して、Dalton氏の会社の事業に当てはめた事例と、楽器を演奏する能力を向上させることを当てはめた事例を使い、わかりやすく解説をしていました。例えば、「4.What part do we play?」については、事業の方がスクラムマスターやプロダクトオーナー、チームメンバ、楽器演奏の方が楽器パート、指揮者などです。
共通プラクティスは、CMMI上はプロセスを根付かせるために実施することが期待される要素の位置付けですが、この12の質問のような聞き方をすれば、組織の能力向上のためにやるべきことを整理する使い方ができそうで、良い工夫だと思いました。
また、主語が「We」だとチームや組織の能力向上のための質問ですが、主語が「I」だと、個人の能力向上にも読み替える使うことができそうで、なかなかに応用範囲が広そうです。
これらの質問を使って、自分たちの組織や自分自身のやるべきことについて不足点がないかどうか、一度確認されてみてはいかがでしょうか?
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来年のGlobal Congressは、5月10日と11日にメリーランド州のアナポリスという都市で開催予定だそうです。
日本からはちょっと行きにくい場所にあるそうなので少し不安ですが、今後の詳細情報を楽しみに待ちたいと思います。