今年で17回目を数えるSEPGカンファレンスが3月7日から4日間、シアトルにて行われました。今年も参加することができましたので、その雰囲気を皆様にお伝えしようとがんばってみます。
シアトルと言えば、今はイチローがいるシアトルマリナーズがあることで日本でも有名ですが、ボーイングやマイクロソフト等のプロセス改善の話に色々な意味で良く出てくる企業もあります。実際行ってみると日系人が多く、食事もアメリカの他の地域と比べて日本人の口に合うものが多く、気候も良かったためとても過ごしやすかったです。
SEPG2005はCMMの開発元であるSEIが主催して、世界各国からプロセス改善に関わる人達が集まり、研究成果を発表したり、意見交換を行ったり、親交を深めたりするイベントです。今年も例年通り2,000人近くの方が参加されていました。一つの時間帯で7つの発表が同時に行われる為、聞きたいものが重なってしまうこともしばしばありました。そんなうれしい苦労をしながら聞いてみて面白かった発表をいくつかピックアップしてご紹介していきましょう。
第12号:SEPG2005レポート
2005年03月25日
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SEPG2005レポート
Avoiding a Documentation Glut When Achieving CMM or CMMI.
Neil Potter/The Process Group.これはタイトルに惹かれました。
--CMMやCMMIを達成する時に、うんざりするような文書化を回避する--
なんと素晴らしいタイトルでしょう!プロセス改善を現場が嫌がる理由ベスト3には必ず入るであろう問題を何とかしようというのですから。
肝心の内容の方は、「プロセスやサブプロセスの記述は1枚の紙に収まるように」、「テンプレートの書き方説明をプロセス記述と考える」、「レビューのアジェンダはプロセス記述になりえる」、「繰り返しを減らす」、「同じようなドキュメントはマージする」等々の話題でした。組織の文化にもよるとは思いますが、分厚いドキュメントが受け入れられにくい場合は、これらを考慮して作業する価値はあると思います。特に複数のプラクティスを一つのドキュメントに集約させるのは、プロセス改善をする人の腕の見せ所でもありますね。CMMI-Version 1.2 and Beyond!
Mike Phillips/SEI.現在のCMMIのバージョンは1.1ですが、2006年の夏に向けてバージョン1.2の開発が行われているそうです。
変更される点には
・1冊の本に2つの表現形式を統合する。
※現在は段階表現と連続表現で2つの本がありますが、これを1冊にしようということです。2つの表現形式が無くなるわけではありません。
・連続表現の「先進プラクティス」の考え方を削除する。
・段階表現の「共通特徴」の考え方を削除する。
・1,000点以上の変更要求を元に、モデルを明確にする。
等があがっていました。気に入らない点をつっこむいいチャンスですね。
プレゼンテーションの中で興味深い数字があがっていたので紹介しておきます。
(2004年12月31日時点)
各コースの受講者数
Introduction to CMMI 27,585名
Intermmediate CMMI 1,306名
Introduction to CMMI Instructor 308名
SCAMPI Lead Appraiser 492名
SEIに認められた人数
Introduction to CMMIインストラクター 232名
SCAMPI リードアプレイザー 355名
Introduction to CMMIは弊社でも提供していますので、受講して頂きこの数字の中の一人になってみませんか?Debating the Tough Change Requests for the SCAMPI Method.
Jack Ferguson, Will Hayes/SEI.
Pat O'Toole/PACT.今回一番興味深かったのが、このセッションです。CMMIの審査手法であるSCAMPIには色々と決まりがあります。このセッションはその決まりについて自分達がヘンだと思うことを発表、議論するパネルディスカッションでした。
パネリストの一人のPatさんは、去年のプレゼンテーションがとても面白かったので楽しみにしていたのですが、期待通り面白くしかも共感できる内容でした。
特に「プラクティスを適用除外可能にする」という主張は私も感じるところでした。議論の流れとしては「それは、代替プラクティスでカバーすべきだ」という形になったのですが時間が足りなくて、突っ込んだ議論には至りませんでした。
終了後に一人でシックスシグマの本を読んでいるPatさんを見かけたので、物足り無かった部分について少しお話しました。その際、彼が毎月発行しているCMMに関するエッセイを送ってくれるとのことでしたので、「訳して自分達のメールマガジンにのっけてもいいですか?」と尋ねると、快くOKしてくれました。もし面白い話が届けば、皆様にもご紹介しますね。Thanks Pat!!Keynote Presentaion
Watts S. Humphrey.ソフトウェアプロセス改善の大御所のプレゼンテーションは、基調講演という形で、全員の前で行われました。この度彼はアメリカ政府から賞をもらったということで、ホワイトハウスに行ってくると言ってました。これはソフトウェア関連では初めてのことだそうなので、彼の功績がいかに大きいかが分かるでしょう。
その際の写真はSEIのウェブサイトにのっています。
さて、お話の中ではこんなエピソードが紹介されました。
彼が企業で働いている頃、大きなプロジェクトがあり、ハードウェアは納入されましたが、4,000人を抱えて開発中のソフトウェアは全然できず、マネージャは首になりました。その後釜として参加した彼はこう言いました。
「全ての作業を止めろ!そして計画を作れ!計画が出来るまでは何もするな!」
すると現場からは
「そんな時間は無い!」
という反発が帰って来ましたが、次に彼はこう言いました。
「じゃあ適当にやれば早くできるのか?」
これも現場ではよくある話で、ドタバタすればするほど、作業に没頭してしまうのですが、それでは周りから(どころか自分達も)今どんな状態なのか分からないし、あとどれくらいの作業があるのかも分かりません。シンプルですがとても説得力のある話だと思います。Engineering Your Process Improvement Initiative.
David Quinn/TeraQuest Metrics, Inc.ちなみに4日間で行われるセッションには、時間が長めで実習等も含まれるチュートリアルと、発表を聞くというスタイルのプレゼンテーションの2種類があり、これはチュートリアルのセッションでした。
このテーマはプロセス改善活動にもエンジニアリングプロセス領域やその他のプロセス領域を当てはめようというものでした。プロセス改善のためのプロセス領域は組織プロセス重視や組織プロセス定義ですが、その活動もプロジェクトと同じように、要件管理、要件開発、検証などのプロセス領域のプラクティスを当てはめてやっていくということです。
この考え方は特に目新しいものでは無いのですが、プロセス改善チームがプロセスを定義したり、テンプレートを作ったりしたら、自らそれを使うというのは有効なやり方であると再認識しました。自分が使うとなると色々と改善したくなるし、少なくとも使えないようなものはリリースしないですよね。色々と楽しめたSEPGですが、今回はこれぐらいで。
既に来年の予定が決まっています。
2006年3月6日~9日、場所はテネシー州ナッシュビルで行われます。
今から来年の参加に向けて根回しや予算獲得等の準備をしておきましょう。