CMMIの標準アプレイザル手法であるSMDD(SCAMPI Method Definition Document)の最新版が10月末にリリースされました。バージョンはv1.3aです。
正式名称は以下になります。
Standard CMMI Appraisal Method for Process Improvement (SCAMPI)
Version 1.3a: Method Definition Document for SCAMPI A, B, and C
以下のサイトからダウンロード出来ます。
http://tinyurl.com/k39ojbe
今回のメインの改定ポイントは、SCAMPI A、B、Cの手法が1つのガイドに統合されたことです。
今まで、SMDDにはレベル判定を行うSCAMPI Class Aの手法だけが記述されており、改善活動の初期や途中の段階で実施するClass CやClass B手法は、Handbookという別のガイドにまとめられていました。
今回の統合で、SCAMPI A、B、Cのアクティビティや用語が統一されました。
また、あまり大きな変更ではありませんが、一部の内容が改定されています。
例えば、SCAMPI Bで予備所見の妥当性確認が必須ではなくなった、等です。
SMDD v1.3aは、2014年1月から実施するアプレイザルから適用になるそうですので、来年以降でSCAMPIを実施予定の方は気にしておく必要がありそうです。
取り急ぎ今回は最新情報としてのお知らせとなりますが、読者の皆さんに影響がありそうな改定内容が分かりましたら、今後もメルマガや弊社イベント等を通じてお知らせして参りますので、ご期待ください。
第116号:SMDD v1.3a情報, KANBANをアプレイザルに使う
2013年11月25日
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01SMDD v1.3a情報
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02KANBANをアプレイザルに使う
10月1日と2日の2日間に渡って行われたSEPG North America(SEPG NA)に参加してきました。
SEPGとは、CMMIを運営しているCMMI Instituteが主催するプロセス改善のカンファレンスです。
いろいろな国からプロセス改善に関わる人達が集まり、研究成果を発表したり、意見交換を行ったり、親交を深めたりします。
SEPG North America 2013
http://sepgconference.org/
SEPGは毎年3月に行われていましたが、今年はCMMIの運営がSEIからCMMI Instituteに移管された影響により、10月に時期を変更して行われました。
場所はSEIとCMMI Instituteのお膝元であるペンシルバニア州のピッツバーグです。
いつもは4日間ある日程が2日間に短縮されてしまったのは残念でしたが、その代わり、毎年10月に行われているCMMI Workshopを翌日の10月3日に連続して開催するスケジュールとなっており、今回のSEPGには、日本から多くのリードアプレイザやインストラクタの方が参加されていました。
おかげで今回は例年以上に多くの方と情報交換をする出来ました。
現地でお世話になった方々、ありがとうございました。
さて、SEPGではCMMIを使用した改善事例や研究発表以外にも、様々なテーマのセッションがあります。
最近増えつつあるアジャイルに関するセッションの他、今回は"KANBAN"手法がテーマのセッションが目立っていましたので、少しご紹介したいと思います。SCAMPI Appraisals in a Continuous Flow Kanban System
KANBANを使ってSCAMPIアプレイザルを実施しよう、というテーマのセッションです。
ところで、KANBANはご存知でしょうか?
アジャイルに詳しい方、もしくはトヨタ生産方式に詳しい方ならピンときたかもしれません。
ちなみに、ISOの認証取得やCMMIのレベルを達成することを"看板"と表現されることもありますが、それとは全く関係ありません。
KANBANは、アジャイルの見える化ツールの1つです。
トヨタ生産方式の「かんばん方式」からヒントを得て、欧米のソフトウェア開発現場で使われだし、日本語がそのまま英語になってKANBANという用語で定着しました。
ソフトウェアかんばん、かんばんボード、ストーリーボードという名前でも呼ばれているようです。
KANBANは、ストーリーやタスクを付箋紙などでカードにし、壁やホワイトボードに貼り出して、プロジェクトの進捗状況を一望できるようにしたものを指します。
ボードは、Todo(未着手)、In Progress(作業中)、Done(完了)と3つの領域に分け、状況の変化に応じてカードを左から右へ移動させます。
全てのカードがDoneになれば作業完了です。
カードがどの位置にあるかで状況を可視化するので、大変分かりやすいです。
下記はそのイメージです。
┌───┬───┬──────┬───┐
│ │ Todo │In Progress │ Done │
├───┼───┼──────┼───┤
│担当A│■ │■ │ │
│ │ ■ │■ ■ │ │
├───┼───┼──────┼───┤
│担当B│■ │ ■ │■ │
│ │ │■ │ │ ※■は1枚のカード
└───┴───┴──────┴───┘
アジャイルを用いたソフトウェア開発プロジェクトにおいては、これを1回のイテレーション(タイムボックス)の中で行い、状況を管理します。
今回のセッションでは、これをアプレイザルのオンサイト作業の進捗管理に応用する事例を紹介し、参加者が体験するワークショップスタイルで行われました。
ボードは以下のように使います。
KANBANの横軸は、Examine EvidenceやVerifyEvidenceといったアプレイザルのプロセスで分け、縦軸は担当するミニチームで領域を分けます。
┌────┬────┬─────┬─────┬─────┬────┐
│ │Ready │Examine │Verify │Validate │Generate│
│ │ │Evidence │Evidence │Evidence │Results │
│ │ ├──┬──┼──┬──┼──┬──┤ │
│ │ │ IP │Done│ IP │Done│ IP │Done│ │
├────┼────┼──┼──┼──┼──┼──┼──┼────┤
│ミニ │■ │■■│ │ │ │ │ │ │
│チームA│ │ │■ │ │ │ │ │ │
├────┼────┼──┼──┼──┼──┼──┼──┼────┤
│ミニ │■■ │ │ │ │ │ │ │ │
│チームB│ ■ │■ │ │ │ │ │ │ │
└────┴────┴──┴──┴──┴──┴──┴──┴────┘
※IP=In Progress
1枚のカードには1つのプロセス領域を書き、カードの中に各作業の開始、終了時間などを記入していきます。
また、作業中に何らかの課題(例えば、追加で収集する必要のあるエビデンスが見つかった等)が特定された場合、課題の内容を赤い色の付箋に書いて、一部重ねて貼りつけます。
こうすることで、進捗状況の他に、どんな課題があるのかを見える化しながら進めるそうです。 -
以上、KANBANをアプレイザルの進め方に適用する事例を簡単にご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?
セッションを受講した感想としては、KANBAN手法は非常に簡単で分かりやすいので、アプレイザルの時に使うかどうかはともかく、どこかのタイミングで使ってみたいなと思いました。
しかし、いくら簡単で分かりやすいと言っても、現在行っているデジタルのツールを使うやり方で特に問題ないとか、アジャイルはそもそもウチはやってないとか、壁一面に状況を貼りだすのはセキュリティ的にNGだとか、適用できないケースは多々あることでしょう。
手法やツールは何でもそうですが、プロセスを考慮しつつ、目的にあった使い方をしないとうまく使いこなせません。
KANBANの場合、状況を関係者全員で共有し、タスクがたまりつつある人がいればお互い助け合うなど、ゴールに向けて全員で協力して推進する風土を醸成できるところが、良い点だと思います。
現状使っているツールによる管理がうまくいっていない時や、混乱した状態のプロジェクトの立て直しの時など、やり方の見直しが必要になった時に、適用を考えてみるのが良いのではないかと思います。