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第100号:プロセス改善のリーダーとフォロワー

2012年07月25日

  • プロセス改善のリーダーとフォロワー

    皆様はTEDカンファレンスをご存知でしょうか?
    アメリカのカリフォルニア州で毎年開催される講演会のことで、テクノロジー、エンターテイメント、デザインなどの分野について、様々なアイデアが発表され、今や世界一のプレゼンテーション大会として有名です。

    その講演内容がインターネット上で無料で公開されており、パソコンやスマホで気軽に鑑賞できるほか、今年の4月からはNHKの教育番組でも紹介されるようになり、多くの人の目に触れられるようになってきました。

    私も英語リスニングの訓練のつもりでよく見るのですが、プレゼンされるアイデアも素晴らしいものが多いので、いろいろと刺激を受けます。

    その中でも私のお気に入りの1つに、「How to start a movement」というプレゼンがあります。
    http://blog.ted.com/2010/04/01/how_to_start_a/

    3分という短いものですが、プロセス改善活動に役立つようなアイデアもあり、今回はそれを紹介してみようと思います。

    プレゼンは、ある動画をスクリーンに映しながら説明する形で進みます。

    動画は、河原の近くの公園で、大勢が座ってリラックスしている中、ある裸の男が突然1人で変な踊りをし始めるところから映像が始まります。

    最初はしばらく1人で踊りを続けており、周りの人は遠目に見ているのですが、興味を示した別の人(=フォロワー)が一緒に踊り出します。

    次第にフォロワーは2人、3人と人が増えていき、数名が踊り出したことでムーブメントが起こります。

    最初は遠目に見ていた人も、人が増えると敷居が低くなって、今度は流れに乗り損なう訳にはいかないとばかりに、一気に参加者が増えていきます。
    最終的には公園にいた大多数の人が一斉に踊り出す、という映像的には大変面白ものです。

    プレゼンターのDerek Sivers氏の説明によると、このムーブメントのポイントとなるのは、最初に1人で踊りを始めた裸の男ではなく、続いて踊り出した最初ののフォロワーだそうです。

    最初のフォロワーの行動がお手本になり、仲間を増やすことにつながっている。
    集団で行う運動においては、リーダーが活動を始めた後の最初のフォロワーが大事になるので、もし自分がリーダーなら、初期のフォロワーを対等に扱う大切さを覚えておくこと、とプレゼンでは説明されていました。

    CMMIを用いたプロセス改善も、組織全体で改善を推進する一種の運動ですので、この法則があてはまりそうに思います。

    例えば改善活動の推進者であるSEPGが頑張って新しいプロセスを作っても、周りを巻き込まずにいると、誰もそのプロセスを使ってくれないかもしれません。組織のライブラリに公開したり、社内研修会で使い方を説明しても、半信半疑で新しいプロセスを使わない人もいるでしょう。

    新しいプロセスのムーブメントを起こすためには、最初に新しいプロセスを使用してくれる利用者(=フォロワー)を探すことが重要になるのではないでしょうか。

    最初のフォロワーが新しいプロセスを使った結果、小さくてもいいので何らかの効果を出し、成功体験を積みましょう。そのために、SEPGは積極的にフォロワーのプロジェクトを支援していくことが必要でしょう。

    これがお手本となり、じゃあ自分も使ってみようかなとフォロワーが増えていくことが期待できます。利用者が増えてくれば、流れに乗り損なう訳にはいかないと、静観していた人たちも使い始めます。

    このプレゼンと改善活動を対比するとこんな感じです。
     ・裸の男(リーダー)  = SEPG
     ・1人めのフォロワー = 最初の利用者
     ・集団で踊りを始める = 組織全体で新しいプロセスを利用する
     ・初期のフォロワーを対等に扱う = SEPGが積極的に支援する

    この最初のフォロワーは、組織から偶然出てくる可能性もありますが、より確実な活動推進のために、積極的にフォロワーを探して、使用を促すことが必要でしょう。

    例えば、以下のような人が最初のフォロワーになる可能性があります。

     ・プロセスに興味のある人
     ・元SEPG
     ・SEPGの人が元いた部署の上司や後輩

    新しいプロセスがうまく浸透しない、多くの人がSEPGに理解を示してくれない、という時には、SEPGの後についてきてくれるフォロワーを見つけることが、活動を前に進める一手になりえるかもしれません。