D-column

#13 : 病害虫と闘う ~敵の敵は味方編~

2024年12月02日

  • すっかり上着が手放せない季節になりました。長袖に手を通せば昼間は暖かく、夜は少し寒い。これからの冬の到来を予感させます。夏前からすっかり数を増やしたカメムシが今度は越冬場所を探すように家の周りに集まっているのもそろそろ見納めになるでしょう。

    さて前回の “ 病害虫と闘う ” シリーズ記事ではルーツ圃場で実施中のIPM(総合的病害虫管理)に基づいた病害虫対策を紹介しました。虫の活動がおとなしくなる冬季でも温室栽培では施設内で害虫が保持されるほど暖かいため、今回も引き続きルーツ圃場で実施している病害虫対策について前回とは別の角度から紹介します。

  • メロン栽培において特にやっかいな害虫としてアザミウマとコナジラミが挙げられます。これらの害虫はとても小さく、個体数が増えやすいのが特徴で人力での駆除はほぼ不可能になっています。対策としては農薬を散布したり、前回紹介したLEDライトや粘着テープを使用することで被害を抑えられます。

    しかしながら上記の対策は実施する手間や維持する費用、農薬に至っては回数制限が設けられているという無視できないデメリットもあります。実はそれらすべてを解消する害虫対策というものが存在しており、それが今回のタイトルにもある “ 敵の敵 ” に当たります。

    アザミウマもコナジラミも自然界に存在しているため食物連鎖における " 天敵 " が存在します。したがって以下の条件を満たしていれば農薬の代わりに勝手に害虫を減らしてくれる生きた農薬として利用が可能となります。
    条件①…アザミウマとコナジラミを積極的に捕食し、メロンを加害しない
    条件②…入手が簡単であり、圃場まわりの生態系を破壊しない

    上記の条件を満たすものとしてスワルスキーカブリダニなどのダニ類やボーベリアバシアーナなどの昆虫病原性糸状菌があります。これらは生物農薬としてネットでも購入が可能で、ルーツ圃場でも試験的に導入してその効果を確認しています。

    注意点としてダニも菌も乾燥に弱いため冬季の使用は工夫が必要なこと、対象となる害虫が多すぎる場合は効果が薄れるため他の対策との併用が必要になること、使用できる農薬が天敵に影響が少ないものに制限されることなどがあります。それでも実際の導入試験では農薬散布回数を半分に減らせたりと作業コスト軽減や減農薬のメリットが大きいため総合的には有効な対策であり、ルーツ圃場での常設化を検討しています。

    ルーツでは今後も新たな病害虫対策を検証・導入していく予定です。
    もし効果的な方法をご存じの方は情報交換等させていただければ幸いです。

    [M.T]
    (本コンテンツの一部(ダニのイラスト)は生成 AI ツールを使用して作成されました)