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第75号:プロセス改善ストーリー:ある新米SEPGの1日(改善策策定編その3)

2010年06月25日

  • プロセス改善ストーリー:ある新米SEPGの1日(改善策策定編その3)

    プロセス改善ストーリーの第3回です。一部の読者の方から好評を頂いておりますので、しつこく続けます(笑)

    <お話の登場人物>  ()は会話文中の省略形
    野比(野):プロセス改善グループのメンバ。先日グループに配属されたばかり
    源 (源):プロセス改善グループのメンバ。野比の同期の女性。
    骨川(骨):プロセス改善グループのリーダー。
    土良(土):リードアプレイザ資格を持つ外部のコンサルタント。

    今日は構成管理について話し合っているようです。
    ※野比が入門コースを受講する前のお話です。

    構成管理について

    野「あのう、構成管理なんですが、当社では構成管理ツールを使って開発を行っていますが、構成管理ツールを使えば構成管理プロセスとしては十分ではないのですか?」

    土「それだけだと十分ではありません。構成品目を制御するシステムとして構成管理ツールを使用するのは有効ですが、どのような作業成果物を構成管理対象とするかの構成品目の特定や、ベースラインの作成、変更を追跡するしくみ、作業成果物の一貫性が保たれているかを確認する構成監査の活動などが必要です」

    野「うーん、何から手をつけるべきでしょう?」

    土「まずは構成管理計画を各プロジェクトが作成するような仕組みにしてはいかがでしょうか?」

    野「構成管理計画にはどんなことを記述すべきですか? 今まで書いたことがないので、いまいちピンときません。何かいい秘密道具・・・じゃなくてサンプルはないですか?」

    土「そうですねえ、野比さん。では・・」

    と言って土良は、自分のノートPC内のあるファイルをプロジェクタに写した。

    土「構成管理計画のサンプルです。例えばこんな感じです」

    そこには、構成管理を担当する役割、構成管理対象の一覧、ベースライン作成ル
    ール、変更管理ルール、ネーミングルール、構成監査手順などの項目が記載され
    ていた。

    野「なるほど、なんとなくわかりました。でも構成管理の用語は難しいのが多いですね。特に、ベースラインが何かいまいちよくわかりません」
      
    土「ベースラインとは『正式にレビューされ合意された一連の仕様または作業成果物』のことです。プロジェクトのある特定のタイミングで、関係者の合意をとって構成品目を凍結したものですね。
    野比さんの関わっていたプロジェクトでは、どんなタイミングで作業成果物を凍結していましたか?」
      
    野「えーと、たとえば要件定義書の承認をお客様から受けた時とか、ソース類は単体テストが終わって結合テストに入る前とか・・・あ、あとリリースする時にも当然凍結してますね!」
      
    土「その時に凍結された作業成果物はどのように管理してましたか?」
      
    野「承認された文書用のフォルダに置いたり、構成管理ツールに入れてブランチを切ったり・・・あ、実は今まで意識していなかったけど、これってベースラインを作ってたんですかね!?」
      
    土「そうですね、後はちゃんと意識して管理できるように、計画時点でベースラインを定義するようにしましょう。また、ベースラインが作成された以降は、ちゃんと変更管理ルールに則って変更を実施して下さい。先ほど話のあった構成管理ツールを使って変更を行うとかですね」
      
    野「なるほど、ちょっとイメージが湧いてきました」

    改善策の検討方法

    骨「ところで土良さん、今、ギャップ分析での弱みに対する改善策を我々改善グループだけで検討していますが、現場の声を反映した改善策にしないと、後々現場で役立たないものにならないか心配しています」

    土「その通りですね。検討した案が理想を追い求めすぎたものになっていないか、実際に使えるものになっているかに気をつけないといけません。そのためにも現場や管理層の声を聞いて改善策を決めていくべきでしょう。現場の一部で行っている良いやり方を集めて、改善策として取り入れて展開していくのも役に立たないものを作ってしまうリスクを低減できると思います」
      
    骨「やはりそうですか。では関係者の声を聞いていく方法を考えないとな。源くん、案はあるかい?」

    源「そうですね、管理層へは週1回の報告とレビューの場がありますので、そこで意見をもらうようにしたらどうでしょうか。現場には、リーダークラスのメンバに一度ヒアリングしに行きましょうか」

    骨「そうだな。ギャップ分析にも関わってもらった出木杉君のところに聞くのがいいだろう。野比くん、連絡をとっておいてくれ」

    野「はい、わかりました」

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    <野比のノビノビ日記 ~今日のまとめ~>
    今日は僕の担当の構成管理のところだったからうまくまとめられるか心配だったけど、なんとかなったぞ。土良さんからもいいサンプルもらえたし。
    ほんと、土良さんのPCはまるで四次元につながってるみたいに何でも出てくるな―。それはさておき、今日わかったのはこんな感じかな。
    ・構成管理は作業成果物一式の承認された版(ベースラインというらしい)をかためて、その後の変更をちゃんと管理していくこと。構成管理ツールを使うだけでダメで、構成管理計画で構成管理対象やルールなどを決めてやっていこう。
    ・現場に役立つ改善策にするために、現場からも改善案を聞いたり、実際に
    使っているものを集めていこう。