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第54号:強い組織を作る:「参加することに意義がある?」

2008年09月25日

  • 強い組織を作る:「参加することに意義がある?」

    北京オリンピックが終わってもう一ヶ月程経ちました。開催にあたって色々な問題も予期されていましたが、少なくともアスリートの方々はとても素晴らしいパフォーマンスを発揮していたと思います。個人的には100メートル男子のボルト選手の走りには、人間の更なる可能性を感じさせられました。

    オリンピックでは個人種目や団体種目など、様々な競技が行なわれます。中には5大会連続で同じ国が金メダルをとっていたりする競技があるわけですが、それって不思議だなと思いませんか?

    5大会ということは約20年にわたって世界一の力を発揮しているということになります。20年となるといくら才能がある人であってもその力を維持していくことは難しいでしょう。さらにコーチや監督など選手を取り巻く人達も入れ替わっているでしょう。競技の戦略のトレンドも変われば、国内でのその競技の人気も変わるかもしれません。それでも勝ち続ける国はあるのです。

    これは何故なんでしょうか? いくつか考えられるポイントがあると思います。

    選手育成のための仕組み

    国レベルでの強化育成の活動ももちろんですが、小さいうちからその競技になじむことができるようにするために、身近に教室等があり気軽に参加できることが必要でしょう。優秀なトレーナーがいることも重要なポイントかもしれません。

    施設、設備、予算等の充実

    チーム強化のために、合宿しようとか海外遠征しようとか思ったとしても、それを実施するための資源面が充実していなければ、絵に描いた餅になってしまいます。

    戦略性をもったチーム編成

    チームを構成する際にその時点でピークを迎えている選手だけで構成する方が強いチームが出来上がるでしょう。しかし実力が劣るとしても次世代を担うであろう選手をあえて選定することで、その場の経験を先に伝えていくことが期待できます。これはスタッフにも同じことが言えるでしょう。

    ステータスの向上

    その競技で活躍できることが「かっこいい」ことであるという風に思われなければ、才能ある人が他の競技に行ってしまいます。スターの存在もこの流れに大きな影響を与えるでしょう。

    オリンピックには「参加することに意義がある」というスローガンもあります。
    では私達が日夜戦っているビジネスの世界ではいったいどうでしょうか? 参加することではなく、いつでもメダルを取ることが求められているのではないかと思います。安定してメダルを取るためにはスポーツと同様に会社、部門、グループなど様々なレベルの組織の力が必要であることに異論を唱える人はいないでしょう。

    上に挙げたいくつかのポイントは、ビジネス組織にも適用できる部分があります。
    ビジネス目標を実現するためのトレーニングを提供する仕組みが必要でしょうし、戦略性をもった活動をしたくても資源が無ければ実施できません。いつまでも同じ人がプロジェクトを管理するのではなく、勇気を持ってその下の世代を抜擢することも必要でしょう。力を発揮して活躍した人を褒め称えたり、良かった結果を他の人に伝えたりすることで、若い世代がそこを目指すことができるでしょう。

    CMMIはプロセス改善のためのモデルであり、成熟度レベル3はまさにこの組織的な力を持つことがテーマの一つとなっています。組織トレーニングやプロジェクト計画策定といったプロセス領域、GP2.3資源の提供、GP2.2プロセスの計画といった共通プラクティスを通じて、このような力を組織が持つことをサポートしてくれます。

    オリンピックは4年に1回と決まっていますが、皆さんの見せ場となるプロジェクトはいつ出てくるか分かりません。その晴れ舞台で組織内のメンバーが活躍できるように、組織として様々な施策を講じておくことが必要でしょう。