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第48号:SEPG2008レポート

2008年03月25日

  • SEPG2008レポート

    今年で丁度20回目を迎えたSEPGカンファレンスが3月17日から4日間、フロリダ州タンパにて開催されました。

    このカンファレンスはCMMの開発元であるSEIが主催して、世界各国からプロセス改善に関わる人達が集まり、研究成果を発表したり、意見交換を行ったり、親交を深めたりするイベントです。開催地であるタンパはアメリカ大陸の南に位置し温暖な気候です。メジャーリーグのキャンプ地というのが多くの人のイメージでしょう。実際日中外を歩いていると日本の真夏と変わらないぐらいの気候です。

    しかし今私は雪の降り積もるデトロイトのホテルにいます。本当は今回の原稿も日本に帰ってから書くつもりだったのですが、デトロイトでの乗り継ぎ便が大雪のためにキャンセルになってしまいました! このメルマガの発行日を考えるとそろそろ書き始めないとまずいため、手元に資料もないままのスタートです(ノートが入ったスーツケースが預けたままになっているから)。

    全体の傾向としては、High Maturity(高成熟度)に関するセッションが非常に増えていました。これは成熟度レベル3までのテーマはそれこそ業界全体が成熟してきたので次のステップとして定量的/統計的な管理を取り入れたり、取り入れようとしたりしている組織の増加に伴うものだと考えられます。また、先ごろリリースされたCMMI-ACQ(調達)については「 Acquisition(調達)の日」というのを設けてそれらにまつわるセッションを集中させるなど力を入れていた模様です。

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    手元に詳細な資料が全く無いのですが、感銘を受けたトピックを一つご紹介します。

    「SEPGがビジネスの言葉で話せるようになろう」というセッションがありました。
    SEPGとはプロセス改善活動を推進する立場の人達を指します。Software Engineer-ing Process Group の略です。そういう人達がバランススコアカードやGQMを用いることにより、ビジネス的な観点で組織がどのように変わっているのかをトップマネジメントに伝えられるようにしましょうということです。

    バランススコアカードは有名だと思いますが簡単に説明すると、組織の活動を評価する視点を決めて、その視点における重要成功要因や評価指標を定めて活動し評価するものです。例えば財務の視点から利益の増加を重要成功要因とし、評価指標を前年からの利益率とするとか、顧客の視点からクレーム数の削減を重要成功要員とし、評価指標を前年とのクレーム数減少率とするといった感じです。

    GQMは以前にも取上げたことがありますが、Goal Question Metricの略でまずゴール(Goal)を定めて、そのゴールを質問(Question )に言い換えて、その質問に答えるための測定(Metric)を行うという考え方です。例えば下記のような感じです。
    ゴール
     高品質なソフトウェアを提供する。
    質問:
     1.実装後に報告されるエラーの数をどうやって減らすか?
     2.ピアレビューに有効性はどうなのか?
     3.リワーク工数を削減するための計画はあるのか?
     4.どうやってテストの効率を改善するのか?
    測定:
     1.欠陥除去効率
     2.フェーズ毎のレビュー有効性
     3.品質にかかるコストのパーセンテージ
     4.テスト活動の有効性

    これらを合わせて使うことにより、本当に組織が望んでいる方向性を定めてその部分が改善したかどうかをはっきりさせることにより、プロセス改善活動のビジネスに対する貢献を分かりやすく表現したり、活動のベクトルをビジネスゴールとあわせたりすることが可能になるはずです。

    ただしここで考える必要があるのは、誰がそれらを実施すべきかです。思うにSEPGの活動はバランススコアカードのいくつくかの評価指標には関係するでしょうがしないものも多数あります。従ってバランススコアカードの少なくとも上位レベルの要素は組織(会社または部門)として考える必要があります。

    「CMMIを導入することでどんなメリットが得られるのか?」というのは典型的な疑問ですが、その前に「どんなメリットを得たくてCMMIの導入を検討しているのか?」を考える必要があるのではないでしょうか。実際SEPGの役割をしている方との話で、経営層との軋轢や現場からの不満で困っているということをよく聞きます。その理由としてこの観点がぼやけてしまっていて結局「成熟度レベルNを達成する」ことだけが成功の基準として語られていることがあるのではないでしょうか。

    例えば上に挙げたいくつかの指標や測定値が素晴らしく向上するけど成熟度レベルは変わらないのと、反対に指標等は全く変わらないけど成熟度レベルがあがるのとどちらを選びますか?と問われたらどう答えるのかを経営層は考える必要があるのと思います。またそれを考えるきっかけをSEPGが提供することでプロセス改善活動の価値をアピールすることも可能だと思います。

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    実は昨年も帰りの飛行機がキャンセルになってしまったので、ちょっと予感はしていました。そのくせ手荷物に一泊分の荷物を分けておくといったリスク対応策を取らなかったことが悔やまれます。来年はカリフォルニア州サンノゼで開かれるので、来年も行けたら無事帰りたいなー。