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第176号:CMMI V2.0の続報, プロセス改善の仕事を他の職業に例える

2018年11月22日

  • 01CMMI V2.0の続報

    CMMI V2.0関連の続報をお届けします。

    CMMI Services V2.0とCMMI Supplier Management V2.0

    CMMI研究所から、2018年12月にCMMI Services V2.0とCMMI Supplier Management V2.0がリリース予定であるとのアナウンスがありました。

    オンラインビューアを購入した方は、モデルが更新されると最新コンテンツが見られることになっていますので、リリース後からすぐにこの両モデルを利用可能になると思われます。

    Servicesは「サービスのためのCMMI」、Supplier Managementは「取得のためのCMMI」に相当します。
    どちらも日本では利用者はあまり多くありませんが、V2.0ではこの3つのモデルがより統合された形になり、参照しやすくなっていますので、今まで関心を持っていなかった方も、読んでみたら思わぬ気づきを得られるかもしれません。
    期待してリリースを待ちましょう。

    CMMI V1.3のアプレイザル終了期限が延期

    現行のCMMI V1.3のアプレイザル終了期限が、2020年3月31日から2020年9月30日に延期することが発表されました。

    システムの改修が遅れているのと、Services、Supplier Managementの終了期限と合わせる、といったことが延期の理由だそうです。

    いずれにしても、まだCMMI V2.0の公式翻訳版が利用できず、準備を十分に進められていない多くの日本企業にとっては、V1.3が使える期間が長くなったのは、うれしい措置なのではないでしょうか。

  • 02プロセス改善の仕事を他の職業に例える

    ソフトウェアプロセス改善の仕事とは何かを、知らない人に説明するのは実は結構難しいと感じる時があります。

    昔、美容院で「お仕事は何ですか?」と聞かれて、プロセス改善の仕事を説明しても通じない気がしたので「ソフト関係の会社で働いています」と答えたら、「ソフトボールの会社ですか?」と返されたことがあります。
    まあ、この美容師さんはプロセス改善の前にソフトウェアが何かを知らなかったわけですが。

    また、典型的なアンケートの職業選択欄でも、プロセス改善や品質管理に関する選択肢をほとんど見たことがないことから、この仕事に関わる人の絶対数は少ないでしょうし、一般にもあまり認知されていないような気がします。

    プロセス改善の仕事は、組織によって扱う範囲や役割分担は様々ですが、主に次のような仕事が存在しているかと思います。
    ・SEPG:改善計画の策定、活動の推進や管理、各種情報の収集や分析
    ・PAT:標準プロセス文書の作成や維持
    ・トレーニング講師:トレーニングの企画・運営
    ・アプレイザ、アセッサ:評定の準備や実施
    ・プロセス品質保証者:プロセス品質保証の計画、実施

     ※SEPG=Software Engineering Process Group
     ※PAT=Process Action Team(プロセス対応チーム)

    小難しく一言で表現するなら、「現状の状態からさらにあるべき姿に近づくため、仕事のやり方や内容をより良くしていくための活動を計画し、推進する仕事」ということになると思いますが、もうちょっと伝わりやすい表現になるといいなと思います。

    そこで思い出したのが、一般に認知度の高い仕事で例える方法です。
    例えば以下のようなものです。
    ・ソフト開発の仕事は建設業のようなもの。ソフトという目に見えない建物を設計事務所の社員であるSEが設計し、大工であるプログラマが組み立てる。
    ・企業運営というのはサッカーのようなものだ。チームで連携してパスを回し、一つのゴールを目指す。君たち一人ひとりがサッカー選手だ。

    というわけで、プロセス改善の仕事を他の職業で例えたら何になるのか、考えてみました。
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    ○医者
    まず、SEPGはお医者さんのような仕事と言えるでしょう。
    医者は人間の体の悪いところを医療行為によって治しますが、SEPGは組織の問題点を様々な改善手法を使って治していきます。

    時には、かかりつけのお医者さんとして、患者であるプロジェクトや組織の課題の相談に乗り、改善を手助けします。患者のことを詳しく知っているので、親身なアドバイスをしたり、最適な改善案という処方箋を出したりします。
    時には問題点に対して大胆にメスを入れ、外科的手法にて病状が悪化した部分を改善していきます。

    アプレイザルを健康診断に例えることがあります。
    なので、アプレイザやアセッサは、健康診断を担当する医者として、アプレイザルで組織のプロセスの健康状態を、あるべき状態と照らして定期的にチェックする人、と言えるかと思います。

    また、アプレイザやアセッサ、プロセス品質保証者は、症状を示すエビデンスから客観的な診断を行い、今後の治療方針の参考になる所見を臨床医に勧告する病理医や放射線科医的な側面もあるかと思います。

    ○教職
    SEPGは、学校の先生やコーチのような、人を指導する活動も行います。
    組織のメンバに標準プロセスの内容や使い方を理解してもらい、利用できるように指導していったり、コーチングにてプロジェクトや組織のメンバが自立した改善を進められるように指導していったりします。

    ○研究職
    SEPGは、研究者であり、統計学者、データアナリストでもあります。
    組織内での事例やデータを様々な角度から分析して論文にまとめたり、データから新たな知見を見出して改善策を立案したり、世間の新しい技術を調査して組織の標準プロセスに反映したりといったことをします。

    ○文筆業
    SEPGやPATは、組織内の様々な文書を作成、維持していく活動を行いますので、記者、編集者、校閲者といった職業の要素も含んでいると言えるでしょう。
    組織内外から必要な情報を集め、読者である組織の人員が求める標準プロセスを書き上げ、読みやすいように編集し、文書の記述間違いや整合性、裏付けを校正にてチェックします。

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    まだまだありそうですが、今回はここまでにします。中にはあまり認知度が高くない職業もあるとか、実際はこうじゃないかとか、いろいろ異論はあるかとは思いますが、あくまで個人的に感じるイメージですので、ご参考程度にしていただければと思います。

    最後に、実際の会話で使う場合の例を挙げておきます。

    <使い方の例>
    ・私のやっているSEPGという仕事は、かかりつけの医者や学校の先生みたいなもので、プロジェクトメンバが困っていることの相談に乗って改善案を処方箋として出したり、会社のルールを指導したりしてるんだ。

    ・アプレイザルはね、病院で受ける健康診断みたいなもんだよ。定期的に組織の悪いところをチェックするの。あと、ドラマのフラジャイルでやってた病理医みたいな仕事。プロジェクトのドキュメント見て、悪いとこ見つけて所見出すの。「ウチは100%の診断しますよ」なんて言ってみたいね。

    ・標準プロセスを修正してリリースする前は慎重にレビューするんだ。それこそ出版社の校閲者のような気持ちで。そういえば校閲ガールの新刊先月出たね。