CMMIモデルはオンラインビュアー版とPDF版の2種類の形式で提供されてきましたが、PDF版は2025年8月下旬よりe-reader(電子書籍)の形式に移行されました。
今回の移行により、特に影響が大きいと思われるのは以下の3点です。
・モデルライセンスの有効期限が1年間に統一された
・検索や操作性など、日本語利用者にとって制限が増えた
・アプレイザルでの利用条件が変更され、PDF版は有効ライセンスと認められなくなった
実際に何がどう変更され、皆様にどう影響があるのかをQ&A形式で整理してみましたのでご参考まで。
●Q1.どのようにe-reader版を入手・利用するのか
従来はCMMI InstituteサイトのダッシュボードからPDFをダウンロードする仕組みでしたが、RedShelfという電子書籍リーダーを通じてブラウザで閲覧する形式に変更されました。
特別なアプリのインストールやライセンス登録などは不要です。
2024年8月21日以降にCMMIモデルを購入した方やFOCコースを受講した方には、ダッシュボードにe-reader版のリンクが表示されるようにCMMI Instituteが対応済みとのことです。まだ期限がきていない方はご確認ください。
従来のPDF版の販売ページから$150でe-reader版を新規購入可能です。オンラインビュアーライセンス($250/1名)やエンタープライズライセンス($1600/10名~)にもe-reader利用権が含まれます。
また、エンタープライズライセンスには、Hosted PDFという組織内で共通で利用できるPDF付きの購入形態がありますが、こちらのPDF版の扱いについてCMMI Instituteに問合せたところ、当記事執筆時点ではまだ仕組みを検討中との返事でした。今後、詳しい案内が出てくると思われます。
●Q2.利用できる期間に制限はあるのか
e-reader版もオンラインビュアーの年間ライセンスと同様に、利用期限は1年間に統一されました。
ただし、現時点での案内によると、後述のダウンロードを行った端末では、利用期間終了後もオフラインでその内容を参照可能とのことです。
●Q3.オフラインでもアクセスできるのか
画面右上のDownload for Offlineメニューからダウンロードすると、その端末でオフライン利用が可能になります。
ただし、ダウンロードは1ユーザーにつき1台の端末のみという制約があるとのこと。
実際試してみたのですが、ダウンロードに非常に時間がかかり、私はまだオフラインアクセスを確認できておりません。また、英語版はダウンロードできそうなものの、日本語版は現在ダウンロードができないようで、CMMI Instituteに問合せ中です。
●Q4.操作面はどう変わったか
PDF版と比べた場合の操作面に違いを以下に列挙します。
・ページ移動は画面下部の左右ボタン、スクロールバー、ページジャンプ欄で可能
ただし、PDFのようにページを連続して上下スクロールさせるのは不可
・キーボードショートカットを有効化すると、SHIFT+N(次ページ)、SHIFT+ALT+N(前ページ)が利用可能(割当変更は不可のもよう)
・検索機能は英数字での部分一致検索のみ対応しており、完全一致検索や日本語検索は現時点では非対応
例:「PLAN」は検索可だが「計画」の検索は不可
「task list」で検索すると「task」または「list」を含む箇所が全てヒット
・印刷やコピー&ペーストは不可
このように、PDF版より使いづらくなっている部分はありますが、ブックマーク、ハイライト、メモ機能などの電子書籍らしい機能はありますので、それらを活用すれば、自分専用の書籍として使い勝手や愛着が向上するかもしれません。
●Q5.CMMIトレーニングやアプレイザルへの影響はあるか
今回のe-readerへの変更に伴い、CMMI Instituteは関連のポリシーを変更したため、今後CMMIのトレーニング受講やアプレイザル実施を検討している組織にとっては以下のような影響があります。
1.CMMI公式コース参加者にはモデルはPDF版ではなくe-reader版が配布される
2.アプレイザルチームメンバは、アプレイザル参加期間に有効なCMMIモデルライセンス(オンラインビュアーまたはe-reader)を保持している必要がある
1は、PDF版ではなくe-reader版を参照しながらの受講になりますので、e-readerでの操作に慣れる必要がありそうです。
2は、これまでは永続利用可能なPDF版でアプレイザルに参加可能でしたが、PDF版は有効なモデルライセンスと認められなくなってしまいました。e-readerは有効期間が1年間となりますので、アプレイザル実施時点でライセンスが切れている場合、いずれかのモデルライセンスの再購入が必要になります。コストや準備スケジュールに影響がでる可能性がありますので、該当する組織の方は注意する必要がありそうです。
●Q6.なぜCMMI InstituteはモデルPDFをe-reader形式に変更したのか
ここまでのご説明で、e-readerへの移行は残念な面が多いと感じた方もいらっしゃると思いますが、最後になぜCMMI InstituteはPDFをe-readerに変更したのかの主な理由をご紹介します。
・CMMIモデルへの一貫したアクセス確保、組織全体での強固な導入支援
・不正利用防止、品質維持、CMMIブランド保護
・ユーザーフレンドリーでアクセスしやすい環境提供、より良いエクスペリエンスの提供
・製品の拡張性とライセンス管理の効率化
・サービス拡大への備え
電子書籍形式になったことで、CMMI Instituteにとってはライセンスの保護や管理はしやすくなるのでしょう。
今後しばらく使い勝手に戸惑う場面もあると思われますが、ユーザー側からの要望次第で改善される余地もあるかと思われますので、慣れながら活用方法を工夫していきましょう。
第258号:CMMIモデルPDFがe-reader形式に移行して何が変わったか
2025年09月25日

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CMMIモデルPDFがe-reader形式に移行して何が変わったか
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