夏の暑さが和らぎ、すごしやすくなってきた今日この頃。
温室栽培においては地獄のような暑さからちょうど良い温かさに移り変わる時期でもあります。
しかし、そんな時期にこそ害虫が増えやすく、対策が必要となります。
日本全国で発生しているであろうコナジラミへの対策として、
前回の「病害虫と闘う」記事ではコナジラミ誘引駆除機について紹介しました。(商品名決定「ピカとる」)
今回は同じくコナジラミ対策として近年注目されている生物農薬のタバコカスミカメについて、
「ピカとる」との併用の可能性の面から考察していきます。
23 : 病害虫と闘う ~タバコカスミカメとコナジラミ誘引駆除機「ピカとる」の併用について考察する~
2025年10月07日

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最初にタバコカスミカメについて簡単に説明しますと、
コナジラミやアザミウマといった極小の害虫を捕食することで知られているカメムシの仲間です。
コナジラミやアザミウマは化学農薬が効きづらい難防除害虫であるため、
それらを捕食するタバコカスミカメは生物農薬としてトマトやキュウリの栽培で利用されています。
特にタバコカスミカメが他の生物農薬より優位な点として挙げられるのは雑食性であることです。
捕食のターゲットとなる害虫が減少しても植物を餌として繁殖することができるため、
施設栽培においてはタバコカスミカメが施設内に定着しやすくなっています。
注意点として、タバコカスミカメが増えすぎると栽培作物への吸汁被害が顕著になることがあります。
基本的にタバコカスミカメを導入する際はクレオメなどのバンカー植物を同時に植えて、
害虫とのバランス次第ではタバコカスミカメを減らすために農薬を撒く必要があるようです。 -
次に本題へと移ります。
「ピカとる」とタバコカスミカメを併用した際の問題点として予想されるものは2つあります。
まず1つはタバコカスミカメが「ピカとる」に誘引されて個体数を維持できないこと、
もう1つはそれぞれが大きな成果を挙げて害虫がほぼ駆逐されることで栽培作物への食害が発生することです。
タバコカスミカメが「ピカとる」に誘引されるかどうかは実際に試験をしなければ判断できませんが、
一つの知見としてタバコカスミカメは紫色LEDに誘引される一方で緑色LEDには誘引されないとされています。
「ピカとる」の黄色LEDは光の波長が緑色よりもさらに離れているため(紫→青→緑→黄→赤の順番)、
「ピカとる」に誘引・捕殺される可能性は低いのではないかと考えられます。
後者に関してはタバコカスミカメを農薬で駆除することで対策が可能であり、
その対策の難易度というのもサイクルが早く薬剤抵抗性が発達しやすいコナジラミと比較しても容易であると推察されます。
タバコカスミカメが生物農薬として登録されているのはキュウリとトマトですが、
そのどちらもコナジラミが大量に発生した場合の被害は大きく、
タバコカスミカメによる食害のリスクよりもコナジラミによる被害を抑制できるというリターンの方が大きいと考えられます。
結論としてはタバコカスミカメと「ピカとる」の併用は効果的である可能性が高く、
タバコカスミカメの増えすぎないように注意する必要があるものの、
持続可能かつIPMに大きく配慮した方法であるので我々も試験を実施して実証したい所存です。
[M.T]
(本コンテンツの一部(虫のイラスト)は生成 AI ツールを使用して作成されました)